『必殺仕事人』『水戸黄門』『大岡越前』『江戸を斬る(遠山金四郎編)』『暴れん坊将軍』の相互パロディ
 
【壱】『必殺仕事人』で『水戸黄門』のパロディ(葵の紋所の権威主義への批判)
○『必殺仕事人』第6話「主水は葵の紋を斬れるか?」(1979年6月22日)
中村主水(~もんど):藤田まこと、松平聖二郎…将軍の弟(演:目黒祐樹)
『必殺仕事人V』第26話「主水、下町の玉三郎と出会う」(1985年7月26日)
中村主水:藤田まこと、徳川宗孝:遠藤憲一
必殺シリーズで水戸黄門のように葵の紋をひけらかす武士が登場。
必殺では「この紋所が目に入らぬか」と言って人々を平伏させる権力者は悪人である。『仕事人』は1979年、『仕事人V』は1985年、いずれも『水戸黄門』の人気全盛期に作られた。85年当時、伊吹吾郎が格さんになっていたのは皮肉。
 
なお、仕事人は犯罪者なので、他の時代劇では当然、悪の存在である。北大路欣也主演の『銭形平次』でも奉行所の人間が悪人狩りをしていた。必殺シリーズでは奉行の座を追われた矢部駿河守(『仕事人vs江戸警察』)や大奥の人間(『必殺!主水死す』)が闇の会に仕事を依頼したケースがあるが、『仕掛人』を除くと、奉行より上の権力者が裏組織を使った場合、それは仕事人グループを捕えるための罠か、あるいは仕事が済んだら口封じに粛清するのが常だった。『仕事人IV』の最終回でも南町奉行・山岡銀二郎(演:戸浦六宏)が主水たちを配下にしようとした時、主水は断っている(もっとも『IV』の特番『仕事人アヘン戦争へ行く』から考えて、最終話の南町奉行は鳥居耀蔵でないとおかしいが、主水が鳥居を「暗殺」したのは必殺シリーズでも別の作品『江戸警察』でのことあり、史実で鳥居が明治まで生きたのは幕府による隠蔽工作という説明)。
 
【弐】『遠山の金さん』(に近い時代劇)で『暴れん坊将軍』と『水戸黄門』のパロディ
○西郷輝彦主演『江戸を斬るII』(1975年11月10日から1976年5月17日まで
西郷輝彦主演『江戸を斬るVI』(1981年2月16日から1981年8月24日まで
里見浩太朗主演『江戸を斬るVII』(1987年1月26日から8月17日まで)
里見浩太朗主演『江戸を斬るVIII』(1994年1月31日から7月25日まで)
遠山金四郎:里見浩太朗、徳川家慶:竹脇無我、水戸徳川斉昭:森繁久彌(『VIII』)
 
遠山の金さんの時代に、将軍・家慶と水戸黄門・斉昭が登場。
森繁久彌扮する斉昭は「天保の水戸黄門」のようなキャラクターで、家慶がお忍びで城下に出て危ないところを金四郎に救われた。「史実」では斉昭は景元より年下だったはず。
 
【参】『暴れん坊将軍』と『水戸黄門』の相互パロディ
徳川吉宗:松平健、水戸徳川綱條(~つなえだ):神山繁(こうやましげる) 
『暴れん坊将軍』に水戸黄門・綱條が登場した話。
放送当時、『水戸黄門』は佐野黄門時代。
暴れん坊将軍VIII』では神山繁が綱條を演じ、養父・光圀を真似て「スケさん、カクさん」を連れて世直し旅をしようとした。捕らわれて危ないところを吉宗に救われる。綱條没年は1718年なのでその前だろう。
 
水戸徳川光圀:佐野浅夫、紀伊徳川(松平?)新之助頼方…のちの吉宗:(演:茂山逸平
『水戸黄門』に吉宗が登場した話は2回作られている。佐野黄門と里見黄門の2回。
佐野浅夫主演『水戸黄門』第28部第17話では、紀州の若様は新之助頼方。印籠を使って世直しをしていたが、悪人に印籠を盗まれてしまった。光圀一行が奪還し飛猿が返却。一行が去る時、新之助は印籠を光圀に預かるよう頼んだが持っていてもよかった気がする。若い新之助は、徳川の権威を切り札にするのはまだ早かった。これが作品のテーマだったかも知れない。新之助が「頼方」を名乗ったのは1696年以降らしい。
20世紀末、『水戸黄門』の主演が佐野浅夫だった時、『暴れん坊将軍』が『水戸黄門』をパロディにして、本家『水戸黄門』が『暴れん坊将軍』をパロディ化した格好となった。なお、ナショナル劇場は『大岡越前』で吉宗の市中徘徊が騒動を巻き起こす話で『暴れん坊将軍』を批判していた。しかし『暴れん坊将軍』自体が『水戸黄門』と『大岡越前』の發展形である。
 
水戸徳川:光圀:里見浩太朗、紀伊徳川源六…のちの吉宗:柳沢太介
『暴れん坊将軍VIII』第10話で吉宗が綱條を救ったのは、『水戸黄門』第38部第5話で、源六が同じような目に遭って光圀に救われたことへの「恩返し」ともとれる。しかし、その前の第37部最終話で光貞が吉孚誘拐事件の黒幕となっており、これは吉孚が14歳の時で、1698年。第38部は第9話「敦賀」の勅命から元禄丁丑年、1697年と推定できるので、光圀が源六を救った後、その翌年に吉孚誘拐事件が起きたことになる。光貞は光圀が源六を作った恩より、危険な目に遭わせた恨みの方を強く感じていたのか。 
 
水戸徳川光圀:里見浩太朗、徳川綱吉(演:風間トオル)
綱吉が身分を隠して江戸市中を視察したという話。
 
なお、『暴れん坊将軍』の吉宗と『大岡越前』の忠相は同時代の人物なので、初めから「共演」している。
加藤剛が忠相を演じた『大岡越前』では山口崇が吉宗役だった。『水戸黄門』に登場した新之助の「その後」はこの吉宗か。
松平健が吉宗を演じた『暴れん坊将軍』では横内正、田村亮が忠相を演じており、シリーズ末期のスペシャル版では大和田伸也も忠相を演じたらしい。横内→大和田は『水戸黄門』の格さんの初代と2代目でもある。
北大路欣也主演の『名奉行!大岡越前』では大岡政談をもとにした話がメインで吉宗は登場していなかったようだ。
東山紀之主演の『大岡越前』では平岳大が吉宗を演じた。
 
『暴れん坊将軍』は『水戸黄門』と『大岡越前』を合わせたような時代劇だった。
 
『暴れん坊将軍』が始まったのは『水戸黄門』の格之進役が横内正から大和田伸也に交代した時期で、既に述べたように横内正は『暴れん坊将軍』で大岡忠相を演じた。本家のナショナル劇場の『大岡越前』では吉宗が街に出て騒動を起こし、忠相が吉宗に文句を言う場面があり、明らかに『暴れん坊将軍』への批判だった。
その後、『暴れん坊将軍』では綱條が水戸黄門になるパロディが作られ、『水戸黄門』の方では紀州の部屋住み時代の新之助を登場させる「暴れん坊若様」の話が2回作られた。
 
どちらにしろ、主人公のお忍びは有効だが、それ以外の人物(徳川家)のお忍びは危なくなるなって主人公に救われている。若き日の新之助、源六はお忍びをやって的に捕らわれたりして、光圀一行に救われ、綱條はやはり忍び旅を試みたが悪人に捕まり、危ないところを吉宗に救われた。もちろんどれもフィクションである。
 
暴れん坊将軍・吉宗と大岡越前守忠相は同時代だからいいとして、吉宗が将軍になった時の水戸黄門は光圀でなく綱條でしたし、仕事人は犯罪者なので将軍家とは敵同士。あと遠山金四郎が北町または南町奉行だった時の将軍は家慶で、水戸黄門は斉昭。吉宗とは時代が1世紀程違います。こちらをご参照下さい。「水戸黄門」で紀州の“暴れん坊若様”だった頃の新之助が登場したことがありますし、「暴れん坊将軍」では光圀の甥・綱條が水戸黄門になってました。「江戸を斬る」天保編では森繁久彌が水戸斉昭を演じてました。
posted at 02:49:4908:18:21
 
よくわかりませんが「無双」って「大集合」のことですか?鬼平と三匹は吉宗・忠相と金さんの間の時代に入ります。
 
@pokopokopokoji @N_pomme 暴れん坊将軍は8代将軍・徳川吉宗(1684~1751、在職:1716~1751)、遠山の金さんは江戸後期の江戸町奉行・遠山景元(1793~1855)、水戸黄門は普通、2代目水戸藩主・徳川光圀(1628~1700)のことでしょう。松平健は暴れん坊将軍・吉宗と遠山の金さんの両方を演じてましたし、里見浩太朗は遠山の金さんと水戸黄門を演じてました。@feno_tantan 松平健は遠山の金さんも演じてましたし、北大路欣也は大岡越前も演じてました。松平健と松方弘樹は大石内蔵助を演じたことがありますし、北大路欣也と松方弘樹は徳川家康も演じました。
posted at 14:50:3314:49:2814:54:01
 
 岡っ引きの銭形平次(架空の人物)が一番下なのは当然として、江戸町奉行だった忠相は寺社奉行に、景元は大目付になっていたので少し複雑。吉宗は一番上だが、光圀存命中の新之助の身分は光圀より下だったはず。
 
「水戸黄門」で茂山逸平および柳沢太介が演じた新之助頼方こと源六は、ナショナル劇場の中の歴史で考えると「大岡越前」で山口崇が演じた徳川吉宗の青少年時代の姿ということになる。
 
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