短編小説「京のおんな」静御前物語<5> | 京こね☆ニュース

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静御前物語<5>

 

 あのタイムスリップが、現実か夢か分からないまま、私は日常生活に戻った。 一つ変わったことといえば、舞妓が最後に舞う「黒髪」のお稽古が始まったことだ。

 

 「あかん! そこはもっと妖艶に!」

 

 「黒髪」は恋しい人を諦めた女の寂しさを舞う。 といっても、私には恋人がいたわけでも、女としての寂しさを味わったこともない。 恋愛初心者。 

 

 もし、あの時、私が静御前のままなら。 この舞の意味が分かったんだろうか。

 

 あれから、私は歴史の本を開いた。 神泉苑での出来事は1182年。 その際に、義経に見初められて妾(めかけ)になると書いてある。 そう、あくまで妾。 今でいう愛人? 妻ではない人のこと。 そして、その2年後に、義経は妻を迎えている。 お兄さんである頼朝の命で嫁ぐことが決まったらしい。

 

 妾と妻・・・。 今の私には全く現実的ではない言葉。 でも、この胸のチクッとした痛みは何だろう。 歴史上の人物に妻や妾がいたって、今の私には何の関係もないはずなのに。 もし、私が静御前なら好きな人が妻を迎えることに耐えられるのだろうか。

 

「黒髪」は、私にはまだまだ難しい舞だけど、これを舞わなければ芸妓になれないのだから頑張らないと、と自分に言い聞かせ、一人で練習を始めた。

 

 

それから、何事もなく秋を迎え、時代祭の本番。 沿道からいろいろな声がかかる。 私は憧れの静御前になれたことが嬉しくて、ゴールである平安神宮まで、疲れることもなく歩き続けた。

 

そして、全てが終わったのを見計らったように、雨がポツポツと降り出し、すぐに雷を伴う嵐となった。 私は着替えるのが勿体なくて、そのままで写真撮影などをしていたが、ピカーッと稲光がした瞬間・・・。

 

私は、またあの時代へきてしまったようだった・・・。

 

つづく

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