前回までのお話は↓から。
※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。
ご了承下さい。
ガラシャ物語<2>
「義父上が、信長様を討った・・・」
忠興は、飛脚から届けられた文を見て、ただ呆然とするばかりであった。 妻の父親は、言うまでもなく大事だ。 しかし、同じぐらい信長にも恩義がある。 しかし、このまま何もしないでいるわけにはいかない。 今は、戦国の世なのだから。 動かないと自分たちの命が危うくなる。
「どうすればよいのだ・・・」
忠興はどうすることもできないまま、数日が経った。
光秀からは、こちらにつくようにと再三、知らせはきていた。
一方で、珠は思い悩んでいた。 自分の存在が忠興を苦しめている。 大好きだった父が、理由もなく信長を討つことはない。 しかし、世間がそれを謀反というならば、それに荷担する細川家も謀反の家となってしまう。
「それだけは避けなくては。 私は明智の娘ではあるけれど、今は細川の人間。 私の存在で迷惑がかかってはいけない」
珠は、独り言のようにつぶやくと、忠興のいる部屋へと行きこう行った。
「忠興様。 私を離縁して下さいませ。 もしくは私の命を絶って下さいませ」
憔悴しきった顔の珠を見て、忠興は決意した。
「あい分かった。 珠を殺すまねなどはせぬ。 しかし、義父上を裏切ることになる。 許せよ」
忠興はそう言い残すと部屋を去って行った。
この後、忠興は丹波の明智氏の支城二ヶ所を攻め落とし、秀吉(ひでよし)に使いを送った。
夫婦にとって、身を裂かれるような決断であった。
つづく
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