※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。
ご了承下さい。
君尾物語<5>
「私は芸妓稼業をしておりますが、かかるお調べに嘘偽りを申しませぬ。 また、嘘だと言われるのであれば、最初からお尋ねにならねばよろしいものを」
こう啖呵(たんか)をきってはみたものの、今にも体は震えそうでございました。 しかし、近藤様も認める意気地の強い女。 こんな時はその意地っ張りが幸いして、肝が据わるものです。
「ではなにか、桂の話はらちもない色恋の話であったというのか」
相手もこれ以上聞いても無駄だと観念したのでしょう。
「はい。 高杉さんが浮気されただの、桂さんが誰それを口説かれただの。 そのようなお話でございましたよ」
「では、高杉が何とかと言って笑っておったのは何じゃ」
ここまできて、私はようやく事の成り行きが分かりました。 どうしてお座敷から出てきた私を連れてきたのか。 それは、あのお座敷の近くで新撰組が聞き耳をたてていたからなのです。 桂様や久坂様のお話の中に、高杉様のことが出ていたのを不審に思って、でもその内容までは分からない。 何か重要な密談でもしているに違いない。 きっとそう誤解されて私は連れてこられたのでしょう。 しかし、ご存じの通り、決して密談ではございません。 私はそう訴えたのですが・・・
「偽りを申すな!!」
また雷を落とされて、今度は私の両腕を柱にくくりつけ、目の前には研ぎ澄まされた刀が光っておりました。 これには、いくら度胸の据わった私でも青ざめます。 私の命もここまでか。
そう思った矢先。
「何事ぞ」
私の目の前には、一人の侍の姿がありました。
「近藤様・・・・・」
それは、恋すれど恋叶わぬ相手。 近藤勇の姿でした。
↓クリックお願いします。