短編小説「京のおんな」和宮物語<4> | 京こね☆ニュース

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前回までのお話は↓から。
 
 

※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。

 ご了承下さい。

 

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和宮物語<4>

 

私たちが夫婦となり、3度目の紅葉を迎えた。 しかし、私の隣には上様の姿はない。 半年前に上洛されて以来、まだお戻りにならない。

 

この夏に弱っていた母がこの世を去った。 生まれた時から常に傍らにいてくれた母が亡くなり、誰よりも今、隣にいて力づけてくれる人もいない。 その寂しさが大きな不安となり、飲み込まれていく。 それを紛らわせるために、私はいつも湿板を抱き続けるのだった。

 

上様のお戻りのないまま次の春を迎え、その知らせは届いた。 上様が胸の痛みを訴え、床にふせっているという。 私はその知らせを聞いて胸を締め付けられる思いだった。 まるで、上様の胸の痛みを感じるかのように。

 

どうかご無事でいてください・・・

 

私は、上様の湿板を抱きながら、祈り続けることしかできなかった。 帝に文を送り、宮中の医師を向かわせてほしいと頼み、それでも気が休まることは全くなく、私はただ一心不乱に祈り続けた。

 

しかし、その祈りもむなしく、夏を迎えたあの日。 一番聞きたくなかった知らせが届いた。

 

上様が亡くなられた・・・・・?

 

その知らせはにわかに信じられないものだった。 しかし、体は勝手に動いている。

 

「宮様! どちらへ? どちらへ行かれるのです?」

 

周りの者がそう叫んだような気はするが、私はただ一刻も早く上様に会いに大阪に行くために、ふらふらと足を進める。

 

「上様のもとへ」

 

そう声に出したつもりが、涙がどんどん溢れてきて、声にならない。

 

「いやー」

 

私は声にならない悲鳴を上げ、お付きの者に抱きかかえられるようにして、泣き崩れた。

 
つづく

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