短編小説「京のおんな」醍醐の花見・まつ編<1> | 京こね☆ニュース

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4月だビックリマーク 桜だビックリマーク お花見だビックリマーク

 

残念ながら、今年はお花見はもう少し先のようですが、

 

今日からの新しい小説は 「醍醐の花見」 をPick Upアップ

 

前田利家の正室・まつと、豊臣秀吉の側室・松の丸の2人の

 

目線からそれぞれお楽しみください音符

 

4話までです。(つまり、4週続きます)

 

前回までのお話は↓から。
 
 

※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。

 ご了承下さい。

 

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醍醐の花見・まつ遍<1>

 

昨日までの嵐のような気候が嘘のように、いいお天気になった。今日は、京都の醍醐寺三宝院(だいごじさんぽういん)の裏山で桜の花見が催され、私と夫が招かれている。

 

 夫である前田利家(まえだとしいえ)からその話を聞いたのは、年が明ける前であっただろうか。天下統一を成し遂げた太閤殿下こと豊臣秀吉(とよとみひでよし)様が、自ら何度も醍醐寺に通い、桜を植えられたそうだ。

 

 なんでも、今回は秀吉様のプライベートのお花見だそうで、招待されているのも正室であるおね様を始め、側室、諸大名の奥様方、そのお付きの方々で、ほとんどが女性なんだとか。それなのに、夫も招かれたのは、秀吉様夫婦と私たち夫婦の古くからの付き合いに他ならないだろう。

 

 「まつ、そろそろ出掛ける時刻ではないか」

 

 夫から声がかかる。

 

 「はい、ただいま」

 

 私は醍醐へと向かうため、輿に乗ったのであった。

 

 

 自己紹介が遅れたが、私の名前はまつ。 12歳で前田利家に嫁ぎ、もうすぐ40年近くになる。

 現在、夫は秀吉様の家臣となっているが、秀吉様とおね様が結婚されるときの仲人は私たち夫婦で、若い頃から家族ぐるみでお付き合いしている。昔は秀吉様のお母様である大政所(おおまんどころ)様とも仲が良く、よく畑で栽培された野菜を頂いたりもした。また、おね様のところは、お子様に恵まれなかったので、私たちの四女を養女にしたり、三女を秀吉様の側室にしたりして、親戚付き合い以上に懇意にさせてもらっているのだ。

 

 

 話はお花見に戻して、醍醐寺へ向かう行列は、それはそれは長いものであった。もちろん、行列にも順番がある。一番は正室のおね様、二番目に跡継ぎである秀頼様のご生母・淀(よど)殿、その後は側室の方々で、松の丸殿、三の丸殿、加賀殿の順。この加賀殿というのが私の三女で、これ以降は、ずらーっと諸大名の奥様方、そしてお付きの方々が列をなし、その数は1300ほどもあったというのだから、まさに一大イベントだ。また、お花見に来ているほとんどが女性。なんでも、女性たちには2回の衣装替えが命じられており、秀吉様は約1300人の女性一人一人に3着ずつ着物を新調されたというのだから、開いた口がふさがらない。本当に、どれだけの労力とお金を使って、この盛大なお花見をしているのか・・・。

 

 私は、山に埋め尽くされた桜と人を眺めながら、しばし呆然としていた。

 
                        つづく

 

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