前回までのお話は↓からお読み下さい。
※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。
ご了承下さい。
藤原道綱母<2>
恋文を見つけて1ヶ月ほどたった頃、夫は三晩続けて姿を見せなかった。
こんなに長く家を訪れないのは初めてのことだ。
今までは、嫉妬なんてはしたないと思い、何も言わなかったが、もう我慢できない!
4日目の夕暮れ、家に来た夫に私は問いただした。
「この3日間、どちらへいらしたのですか?」
「いや、わざとつれないマネをして、お前の心を試したんだよ」
夫は平気な顔でとぼけている。
私が何も知らないとでも思っているのかしら・・・? もう、だんだん腹が立ってきた。
すると、怒っていることが分かってしまったのか、夫は身支度を調え、こう言った。
「あっ・・・急用があったんだった・・・」
夫は振り返ることなく、そわそわと出かけて行った。
急用って、どれだけ怪しい言い訳なんだか。
私は唖然としながらも、家の者に後をつけるように頼んだのだった。
第三の女の家は、夫の通勤途中にあった。
夫の後をつけさせたら、やはり女の家。 きっと、あの恋文の女だろう。
嫉妬の渦は、またメラメラと私の中に燃え広がったのである。
それから3日ほどたった夜中、門をたたく音がした。
きっと夫が来たのだろう。 しかし、私は腹立たしさのあまり、夫を中に入れることはしなかった。 しばらく待っていたようだったか、しばらくして夫は我が家を離れた。
離れた瞬間、私は言い知れない寂しさに襲われ、また眠れない夜を過ごしたのだった。
つづく
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