短編小説「京のおんな」千姫物語<5> | 京こね☆ニュース

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千姫物語最終話です照れ
 
前回までのお話は↓からお読み下さい。
 
 
 
※フィクションの部分もあります。あと、現代の言葉を使っています。

 ご了承下さい。

 

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千姫物語<5>

 

年が明け、1月。

 

まだ正式な婚儀は発表されていない中、大御所様が倒れられたとの一報が!!各大名らが駿府城へ駆けつける中、一人の女性の姿があったそうだ。その方は、忠刻様のお母様の熊姫様。なんと、大御所様に何かある前に、婚儀を成立させようと急いで来られたとか。

 

熊姫様は、大御所様のご長男の娘さん。つまり、大御所様にとっては千姫様と同じく孫に当たられる方で、姫様同士従姉妹という間柄になる。

 

実は、大御所様のご長男であった松平信康(まつだいらのぶやす)様は、織田信長様の命令で、大御所様自ら自分の息子に切腹を申し渡したという経緯がある。

 

熊姫様からしてみれば、本来なら自分の父親が将軍を継いでいるはずなのに、その弟である秀忠様が将軍になっている。それならば、せめて将軍家の娘を自分の息子の嫁にすることで、本多家を安泰にしたいと思い、早く婚儀が正式に決まるようにはせ参じたというわけである。

 

大御所様にしてみても、ご長男を死に追いやった責任も感じているし、相手の家のたっての希望ともあれば、何も反対する理由もない。むしろ、千姫様のことを考えると、望まれて嫁ぐことは何よりの幸せのはず。

 

大御所様は床に伏しながらも、この婚儀を喜び、後は秀忠様に一切を任せるとして、その年の4月この世を去られた。

 

 

*****

 

「おちょぼ、あの時はありがとう」

 

花嫁支度にせわしなく動き回った夏もそろそろ終わりを迎えようとしている頃、突然千姫様から言葉をかけられた。

 

「あの時とはいつのことでしょう?」

 

私が問いかけてみると

「心に決めた方がいるでしょうと私に説教をした時よ」

 

と冗談半分に言われた。

 

姫様に向かって説教なんてとんでもないと思ったが、私が言うより先に

 

「いいのよ。私はあれで今回の再婚を決めることができたのだもの。おちょぼには感謝しているの。ありがとう」

 

姫様からの突然の言葉に、感動で泣きそうになるのをグッとこらえていると

 

「これから先もよろしくね、おちょぼ」

 

― ああ、あの時の笑顔と同じだ。

 

千姫様と初めてお会いした6歳の頃。あの時も「私、千っていうの。これからよろしくね」と無邪気な笑顔で見つめて下さった。

 

そんなことを思い出していると、いつの間にか私は肩を震わせて泣いてしまったのだった。

 

新しい嫁ぎ先に行かれるまであと10日。

 

もちろん、一生あなたのおそばでお仕えしますよ。

 

千姫様がいらっしゃる場所こそ、私の居場所ですから。

 
                         了
 

 

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感想などをお寄せいただくと、うれしいです。

 

さて、来週からの主人公は・・・・

 

かなり、マイナーな人物・・・誰か知ってる人いるかなぁと心配して

 

おりますが、私的にはすごく書きたかった人です。

 

 

 

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