こんにちは、経堂どうぶつ病院です。
久しぶりに腫瘍ブログを更新しようと思います
今回は犬の肺腫瘍についてお話ししていきます。
肺腫瘍には原発性肺腫瘍と肺以外の腫瘍が転移してきた転移性肺腫瘍に大きく分けられ
犬および猫では原発性よりも転移性の方が多く認められます。
犬の原発性肺腫瘍は全腫瘍中の約1%と少なく、発症年齢は5~12歳齢と報告されています。
発生する肺腫瘍の多くは上皮性悪性腫瘍で、最も一般的なのは肺腺癌と呼ばれる腫瘍です。
残念なことに悪性肺腫瘍は遠隔転移がよく認められ、
胸腔内だけでなく腹腔内臓器や骨にも転移することがあります。
肺腫瘍に罹患した犬の最も多い症状は数週間から数カ月にわたる痰を伴わない咳!
それ以外に気胸などに伴う呼吸困難や疲れやすいなどの運動不耐性が認められます。
ただし犬の場合は特に症状がなく健康診断のレントゲン検査で偶然発見されることもあるので、
「症状がないから大丈夫!」ではないので注意が必要です。
各種検査で肺腫瘍が疑われた場合は転移の可能性を評価した上で手術による切除が第一選択になります。
しかし、原発性肺腫瘍は孤立性腫瘤のほかに多発性腫瘤、肺葉硬化性、粟粒性の4タイプがあり
孤立性や一部の肺葉硬化性以外のタイプでは手術による根治が難しいので他の選択肢を選択することになります。
外科手術以外の選択肢として放射線治療や化学療法がありますが、現在のところ治療効果がはっきりわかっていないことが実情であり治療根拠が弱いことをふまえて治療を適用することになります。
外科治療のみの総生存期間中央値は犬では12ヵ月との報告があり、術後の生存期間を決定する最も重要な予後判定因子はリンパ節への転移の有無と言われています。
他の予後判定因子として以下のものが報告されています。
- 腫瘍の大きさ
- 咳などの症状の有無
- 腫瘍の種類
- 腫瘍の発生部位
- 組織学的グレード
化学療法に関しては先にも述べたように外科手術が難しい場合に使用することがありますが治療効果の根拠が乏しいため腫瘍を積極的に縮小させることを目的とはせずに腫瘍の増大速度を抑えるもしくは腫瘍による症状を改善することを目的に使用することになります。
次回は猫の肺腫瘍についてお話しする予定です。
当院では腫瘍に関するセカンドオピニオンも行っています。
腫瘍に関してのご相談があればお問い合わせください。
記事担当 院長