特別展「みんな大好き!近鉄電車のデザイン」訪問記〜その21 | 「EXPO2025 大阪・関西万博訪問記」ありのまま生きてこう 自分を磨きながら

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「EXPO2025 大阪・関西万博訪問記」公開中!趣味の鉄道の話題を中心に、旅行記や生まれ育った東大阪、敬愛するロックシンガーソングライター・松阪晶子さんについてなど綴りたいと思います。

みなさんこんにちは。前回からの続きです。


おらが街「東大阪市民美術センター」で今夏に開催された、特別展「みんな大好き!近鉄電車のデザイン展」を訪問した際の様子をお送りしています。



京都と奈良を結ぶ「近鉄京都線」について取り上げています。


その前身は昭和初期に開業した「奈良電気鉄道(奈良電)」という近鉄と京阪による合弁会社でした。近鉄の路線になったのは1963(昭和38)年10月と、比較的最近のこと。近鉄京都にて。




近鉄の路線となったことで、近鉄は京都への拠点をあらたに得ることになります。

「近鉄京都線」となった「奈良電」を近代化させるということが近鉄にとっては、合併当初の事業となりました。「東海道新幹線 京都駅」と一体化した高架駅に生まれ変わった「近鉄京都駅」。出典①。


開業当初より、両都市を結ぶ近代的な電車が登場した奈良電。沿線開発も戦後になって徐々に進むものの、並行する「国鉄(→JR)奈良線」からの乗降客がなかなか転移しませんでした。

そんな中、1954(昭和29)年10月に「奈良〜京都間」を30分で結ぶ、特別料金不要の特急が登場。スピードや列車本数で国鉄を凌駕し、今日の京奈間輸送での優位を獲得した、というところまで述べて参りました。出典②。


デビュー直後から好評を博したこの「奈良電特急」。デハボ1200形と呼ばれた新車の他にも、従来からの車両を改装して運用に回すほどの人気ぶりだったといいます。出典①。

しかしながら、奈良電が近鉄に合併された直後の1964(昭和39)年10月、近鉄特急の存在価値を揺るがす、大きな出来事が起こります。「東海道新幹線開業」です。


大阪・名古屋間を人気の「2階建て特急ビスタカー」で2時間半あまりで結び、国鉄より運賃の安かった近鉄にとっては、運賃が上がっても所要時間が半分の1時間で名阪間を結ぶ新幹線には大きく水を空けられることになりました。



名阪直通の利用客が激減することが予想される中、近鉄が取り組んだのは「新幹線停車駅で近鉄特急との接続を図る」ということでした。



つまりは、新幹線と接続する名古屋や京都からの近鉄特急網を拡充させることで、自社沿線の奈良大和路・伊勢志摩方面に観光客の利用を喚起しようとするもの

それまで、別料金の有料特急は大阪・名古屋から伊勢方面への列車しか存在していませんでした。これまでにない路線にまで、近鉄特急網を拡大しようとしたものです。出典③。


京都を起点にしては、奈良・橿原神宮・吉野方面への特急網の整備拡充が急がれました。

現在、頻発している専用車両による「京奈(京都〜奈良間)特急」、乗り換えで吉野方面へ連絡する「京橿(京都〜橿原神宮前間)特急」の新設がその目玉でした。近鉄京都にて。


奈良電の近鉄合併(1963年10月)から、東海道新幹線の開業(1964年10月)までわずか1年。

新幹線開業と同日に行われたダイヤ改正で新設された「京橿特急」、2ヶ月遅れて運行を開始した「京奈特急」にももちろん別料金の、有料特急が充当されることになりました。


そこで白羽の矢が立ったのが、前身の奈良電で看板列車の特急「デハボ1200形」として活躍し、近鉄に合併してから形式名が変更されたこの「680系」。

塗装は近鉄特急のオレンジと紺色へ、さらに冷房化を含めた、車両内外装の大規模な整備が行われての登場でした。


ここまで触れて参りましたが、この「680系」は1954(昭和29)年にデビューした、別料金不要の特急列車として奈良電が製造した車両。

特急料金を要する車両が、料金不要の車両に格下げされる例はあまたありますが、これはまったく逆の例。他には聞いたことがない、大変珍しい例だというのです。出典②。



しかし、せっかくあたらしく設定した区間に走らせる、それも有料特急。

時代的には新型形式だった「10400系(1961年デビュー)」などを導入したいところだったのでしょうが、このような「格上げ」の珍しい例を採らざるを得なかった、切実な理由がありました。出典③。

次回に続きます。
今日はこんなところです。

(出典①「近鉄80年のあゆみ」近畿日本鉄道編・発行 1990年10月)
(出典②「カラーブックス637 近鉄線各駅停車1 奈良線・生駒線」徳永慶太郎著・保育社発行 1984年4月)
(出典③「鉄道ピクトリアルNo.313 臨時増刊号  近畿日本鉄道特集」電気車研究会編・発行 1975年11月)
(出典④「ヤマケイ私鉄ハンドブック13 近鉄」廣田尚敬写真・吉川文夫解説 山と渓谷社発行 1984年9月)