今春あらたに開業した「北陸新幹線 金沢〜敦賀間」に初乗りかたがた、開業に合わせて限定発売されたチケットレス企画乗車券「乗ってみよう北陸 WEB早特21」なるきっぷで、富山周辺を日帰り乗り鉄した道中記をお送りしています。
ターミナルの「電鉄富山駅」から乗り込んだ各駅停車で、下車したのは「寺田駅(富山県中新川郡立山町)」という駅でした。

電鉄富山駅から各駅停車で20分弱のこの駅。
黒部・宇奈月温泉方面への「本線」と、岩峅寺(いわくらじ)・立山方面への「立山線」が結節するジャンクションです。
上空から眺めると、田畑と住宅とが混交する郊外の様相だとわかります。グーグル地図より。

その最たるものが、不規則に割り振られた番線表記。本線の側から「2→1→3→4」だという。

大変不思議な感を抱くのですが、そのような乗客はわたしだけではないようで、両線が発着する中洲に当たる中央部には、大きな構内案内が掲げられているではないですか。
それではこれを用いながら、ジャンクションとしての役割を果たしているこの駅の構内をあれこれと探索してみることにします。

まず、中央の「1・3のりば(左から)」。扇形になっているために、広々しています。
さらに、中央部分でつながっていることで実質同じ敷地になっているがために、発着する方面も同じ「電鉄富山方面」と揃えたのでしょう。


「本線」「立山線」ともに単線なのですが、この駅は右側通行で行き違うようになっています。
日本の鉄道は左側通行が原則なところを、この「1・3番線」で同じ方面に発着する列車のホームを揃えるための特殊な設定と言えそうです。


その1・3番線の間には木造ベンチが張り付いた、これまた古びた建物が建てられていました。さながら、昭和に戻ったかの錯覚です。

かつて売店や待合室があったそうですが、中には人の気配はありません。降雪地帯ならでは、でしょう。除雪のための道具保管場所のよう。
そういえば、構内をうろうろしている合間でもほかの乗客の姿はいっさい見当たりません。
平成期までは地鉄線内の特急のみならず、シーズンにはJRからの「特急サンダーバード」などが立山、宇奈月温泉両方に乗り入れたほど、立山黒部アルペンルートのメインルートとして活況を呈していた富山地鉄。
終着「宇奈月温泉」に到着した、大阪からの臨時「特急サンダーバード宇奈月」。右端にトロッコ列車が見える。出典①。


かつては、この駅を介して宇奈月温泉〜立山という、アルペンルートを行き来する需要も高かったのでしょう。打ち捨てられた看板が、その栄華を語るようです。

本数は非常に限られるのですが、宇奈月温泉からこの駅でスイッチバック(進行方向を変える)して立山に向かう「特急アルペン号」が運転されています。ヤフー乗り換え案内アプリより。
最大の主要駅で、ターミナルの電鉄富山にいっさい関与しない特急列車だということも、著名な観光地を結ぶゆえですが、極めて特異な性格ともいえるものです。


続いては「1番線」の東隣にある「2番線」。本線、黒部・宇奈月温泉方面に向かう列車が発着するホーム。さらに構内踏切を渡ります。
終着の「宇奈月温泉駅(同黒部市)」では、あのトロッコ列車で有名な「黒部峡谷鉄道」に接続しています。



いかにも昔語り、という印象のホームですが、本当に駅設備自体、あまねく木造のままというのが。いまとなってはそうそう出会えません。

1番線から2番線を、宇奈月温泉方に望む。割と長いホームです。
かつては特急も長い編成だったのでしょうか。


駅名標。二段に分かれているものは珍しくはありませんが、身の回りでよく見かけるのは上部に駅名と、隣駅を表示しているもの。
本来なら広告が入る場所に隣駅を表記しているものは、見たことがありません。字体の優しさも加わり、なおのこと印象的です。

(出典①「フリー百科事典Wikipedia#サンダーバード_列車」)