みなさんこんにちは。前回からの続きです。
今年6月に限定で発売された「近鉄全線2日間フリーきっぷ」で巡った、近鉄沿線乗り鉄道中記をお送りしています。
旅の第1日目(2023年6月13日)。
大阪を早朝に発ち、三重・四日市周辺の鉄道をぶらぶら巡るという行程になりました。
ここは「近鉄富田駅(とみだえき、三重県四日市市)」。「近鉄四日市駅」からは急行で名古屋方面にひと駅、5分ほど。
四日市と桑名の中間に当たる交通の要衝です。グーグル地図より。
この近鉄の駅に同居している「三岐鉄道三岐線(さんぎせん)近鉄富田駅」について、あれこれと取り上げています。岐阜県境に近い「西藤原駅(同いなべ市)」へ向かう路線です。
ところで、先ほどホームに入って来た列車。
折り返し「西藤原ゆき」になるものですが、方向幕には「近鉄富田」と表記されています。「近鉄富田駅」に出入りするので、この表記は当たり前と言えば当たり前のこと。
しかし、線路際に立てられている路線案内をよ〜く観察してみますと…
いま居る「近鉄富田」の手前から別れて「JR富田」につながる線路があるではないですか。それも、本社が置かれているという。
全線時刻表を確かめてみるのですが、「JR富田ゆき」という列車の設定はまったくなされておらず。三岐鉄道ホームページより。
実はこの「三岐線」には、以前に乗り鉄したことがありました。そこに大きなヒントが隠されていましたので、当時のショットを拾いながら項を進めて参ります。2010(平成22)年8月、いずれもブログ主撮影。
「関西本線」をオーバークロスした「三岐朝明(さんぎあさけ)信号場」で「JR富田駅」から来る「三岐線」と合流する。
右側からの線路は、上述した「JR富田駅」からの線路。実はこれが「三岐線の本線」です。近鉄駅からここまで進んで来たのは「近鉄連絡線」という、いわば分岐線なのでした。
開業当初から、沿線で豊富に産出される石灰石や、後年にはセメント輸送を担う「三岐線」。国鉄→JRと直通することは、貨物輸送の観点から重要な使命だったあったことが伺えます。
旅客列車も国鉄駅に乗り入れることになったのは、自然な成り行きだったに違いありません。
戦後になり、富田で乗り換えて四日市・桑名・名古屋方面へ向かう旅客の需要は、複線電化で列車本数も多くて速く、さらに運賃の安い近鉄に移って行きました。近鉄四日市にて。
関西本線は大阪・奈良・名古屋間を結ぶ主要幹線でしたが、昭和30年代後半に入ると、全線電化された東海道本線に列車の比重が移り、徐々にローカル線と化していました。
近鉄連絡線建設前は旅客列車も国鉄富田駅発着であったが、近鉄富田駅まで歩いて移動する乗客が多かった。近鉄連絡線建設には富田駅前の商店街が反対したが、完成後も国鉄富田駅への旅客列車を運行することで妥協した。出典①。
近鉄乗り換えの需要が増すことから「近鉄富田〜三岐朝明間(現在は三岐朝明信号場)」に「近鉄連絡線」が開業したのは、1970(昭和45年)6月のこと。
以降、近鉄・国鉄両方の富田駅に「三岐線」の旅客列車が乗り入れる形態が続きましたが、1985(昭和60)年に旅客列車は「近鉄富田駅」発着に統一されてしまいます。
三岐線の起点駅は富田駅であるが、富田駅 - 三岐朝明信号場間の旅客営業は行われておらず、貨物営業のみとなっている、というのが現況です。出典①。
昭和30年代には、富田から関西本線に乗り入れ四日市まで直通旅客列車の設定もあったよう。
開業以来、活況を呈していた「国鉄富田駅」への直通は、もうはるか遠くのことなのでした。
ただし、沿線からのセメント輸送は現在も主力です。JR連絡は貨物輸送、近鉄連絡は旅客輸送に別れているという、大変興味深い現在です。当日に丹生川(にゅうがわ、同いなべ市)にて。ブログ主撮影。
奥の青い鉄橋は「近鉄名古屋線」。
それをくぐって築堤を上がると「近鉄連絡線」が合流する、というところ。
その近鉄ガードの直下には「富田駅西口」という、仮停留所然とした駅もありました。出典②。
さらに、このあたりの地図を観察していますと「近鉄連絡線」を進んで来た列車は「JR関西本線」を二度にわたり跨ぐという、いささか奇妙な配線になっていることもわかります(◯)。
1970年、近鉄駅に乗り入れするに当たり、国鉄駅へ向かう「三岐線本線」から分岐する「近鉄連絡線」を新設したことにより、あらたな配線を建設したことが、その理由なのでした。
JRには特急「南紀」や、伊勢・鳥羽方面への快速「みえ」が走るとは言え、近鉄というものがいかに速く、便利な存在なのかということをふと、この経緯から感じた次第なのでした。
次回に続きます。
今日はこんなところです。
(出典①「フリー百科事典Wikipedia#三岐鉄道三岐線」)
(出典②「むかしのくらし読本4 四日市の昭和の鉄道」四日市市立博物館編・発行 2018年1月)