「近鉄全線2日間フリーきっぷ」で巡る近鉄沿線道中記2023〜その13 | 「EXPO2025 大阪・関西万博訪問記」ありのまま生きてこう 自分を磨きながら

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「EXPO2025 大阪・関西万博訪問記」公開中!趣味の鉄道の話題を中心に、旅行記や生まれ育った東大阪、敬愛するロックシンガーソングライター・松阪晶子さんについてなど綴りたいと思います。

みなさまこんにちは。前回からの続きです。


今年6月に限定で発売された「近鉄全線2日間フリーきっぷ」で巡った、近鉄沿線乗り鉄道中記をお送りしています。




「ナローゲージ」という、いまや国内に3社・4路線しか存在しない貴重な、軌道幅が762mmの車両も小規模な規格の鉄道。


これの乗り鉄をしたいと「四日市あすなろう鉄道 西日野駅(三重県四日市市)」にやって来ました。実に20数年振りの訪問です。2000(平成12)年7月、ブログ主撮影と比較。




さて、前回の記事でも触れたのですが、四日市駅から出発する本線筋の「内部線(うつべせん)日永駅」から、わずか一駅だけ分岐している「八王子線」の終着駅がこの駅です。




ただし「八王子線」の駅は日永とこの西日野のみ。路線の実態に名前が合っていないのはなぜにさらに、まだ線路が続きそうな駅の設えのような感を受ける、というところまで話しを進めて来ました。




無人駅の改札を抜けたロータリーに、この案内板を見つけました。「八王子線の歴史」です。


「あすなろう四日市駅」からナローゲージの列車に乗って来た訳ですが、この鉄道の基幹駅となっているのが「日永駅(ひながえき)」。


そこからさらに南方向へ延びているのが「内部線」。「内部駅」には車両基地が併設されているなど重要な役目を持つ終着駅ですが、こちらには後ほど、乗り鉄することにしています。


本題の「八王子線」は、先ほども触れたように別れた「日永駅」からはたった一駅。ですが、案内板によると、かつてはこの間にもうひとつ「東日野」という駅も存在していたとのこと。


「東日野駅」。調べてみますと、正式な廃止は1969(昭和44)年ということですが、それより早い時期に実質的には廃駅となっていたようです。駅に直結するのは、農具製作の工場。


このあたりは明治以降に、近代的な産業振興のいわばモデル地区にもなっていたようです。


…この四郷(よごう)地区は昔の三重郡四郷村。江戸末期から明治にかけて、伊藤小左衛門(いとう・こざえもん。1819-1879、四日市出身の実業家・企業家。幕末から明治初期に四日市周辺でさまざまな近代的産業を興し、現在の工業都市・四日市の土台を築いたという人物)らが産業振興を図り、特に紡績工業に深い関心を示し、積極的に洋式紡績事業を興した。

こうした経済力を背景に、私鉄建設のエネルギーが噴き出したと見られる。(後略、出典①)


幾度も既出の地図ですが、八王子周辺で大規模な紡績事業がはじまり、大規模に生産された紡績製品を、大量かつ安定的に輸送するために敷設された「八王子線」だった、という訳です。

「八王子線」は現在「あすなろう四日市駅」発着ですが、かつては「国鉄(→JR)四日市駅」に隣接する「(伊勢電→近鉄)四日市駅」へ乗り入れていました。国鉄貨物への連絡と、当時は近くに接していた「四日市港」から製品の出荷が容易に出来た筈です。出典①。


そして、この「西日野駅」から西方向へ進路を変え「伊勢八王子駅」までの1.6kmに、かつては「八王子線」は線路を延ばしていました。


なるほど、この駅が不自然な、行き止まりの終着駅になっているように思えたのは、この先に続いていた線路を切り取ってしまったから。

「伊勢八王子駅」へ至っていた、かつての線路跡はというと、簡易な駅舎の建物を抜けて…


近年になって整備されたものだという、駅前ロータリー。この敷地内を通過し…


「天白川(てんぱくがわ)」という川沿いに突き当ります。静かな街中の小川、という印象。

バスが信号待ちしているあたりに、現在の「西日野駅」が終着になる前の「旧西日野駅」があったと言うのですが、この「天白川」に沿って「伊勢八王子駅」へと「八王子線」は至っていました。


しかし、先ほど触れた伊藤小左衛門が手掛けた近代的な紡績工場などが建ち並び、川をはさみ八王子地区の中心だった「八王子線」の肝となっていたこの先の区間。グーグル地図より。


これが廃止に追い込まれたのは、まさにこの静かな佇まいの「天白川」が理由だと言います。

次回に続きます。

今日はこんなところです。出典②。


(出典①「各駅停車全国歴史散歩25 三重県」中日新聞三重総局編 河出書房新社刊 昭和56年10月初版発行 絶版)

(出典②「むかしのくらし読本4 四日市の昭和の鉄道」四日市市立博物館編・発行 2018年1月)