みなさんこんにちは。今日の話題です。

10月から放送がはじまった、NHK朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
長崎・五島列島とともに、おらが街・東大阪がその舞台になっている作品です。
このドラマ、気づいたこと、印象的だったことなどを毎週、取り上げて述べてみようという企みを第1週からお送りしています。
リンク↑は前週第6週「スワン号の奇跡」編。

読売大阪朝刊特別版「よみほっと」2022(令和4)年11月13日付け 7面より。
それでは、第7週「パイロットになりたい!」編(11月14日〜18日)を振り返ります。
航空工学を学ぶべく、主人公・岩倉舞(福原遥さん)が通う浪速大学、そこで運命の出会いを果たしたのは「人力飛行機」。
過酷なトレーニングを経て、苦労の上でパイロットとしてびわ湖を飛んだことをきっかけに、舞は「旅客機のパイロットになる」という夢を見つけました。
大学を中退し、航空学校に入学すると決心した舞。それを伝えるのですが、やはり両親にはすぐには認めて貰えず、ということに。
ところでこの第7週は、劇中の主要な登場人物が抱えている深奥な思いや悩みについて、各々がその相克にどのように向き合って行くのか、ということのクローズアップが軸であったように感じます。
舞が、両親への説得に必死になっていた頃。
幼馴染の貴司(赤楚衛二さん)が、仕事に行き詰まり、退職し失踪してしまいます。
そして、看護学校で特待生になるほど努力を重ねる、二人の親友・久留美(乃木坂46・山下美月さん)もでした。
同居する父・佳晴(松尾諭さん)との関係がぎくしゃくしたことがきっかけで、現在は福岡に住んでいるという、別離した母・久子(小牧芽美さん)と再会することを決めます。


舞には、貴司の行き場所に思い当たることがありました。
小学3年生の頃、生活環境を変えるべく、母・めぐみ(永作博美さん)の故郷で、祖母・祥子(高畑淳子さん)と二人で暮らした長崎・五島列島の、夕陽に染まる「大瀬崎灯台」。

久留美とともに、舞は五島列島へ急ぎます。
祥子の尽力もあり、貴司と無事に再会。
そして、めぐみと父・浩太(高橋克典さん)も五島列島へ。
若い頃、駆け落ち同然でめぐみを大阪へ連れ出したことが、浩太にとっては、義母の祥子と向き合い、わだかまりを解かねばならないことでした。
福岡で、母・久子と小学生以来に再会した久留美も、すでにもう限界でした。
しかし、結果的に父について行くことになった
彼女のこの言葉が、いまのいままで行き違いになってしまっていたことが、互いにわかった瞬間でした。

穿った見方ですが、舞ちゃんの「パイロットになる」という夢は、この週でクローズアップされた、それぞれの家族間で長く、深く介在している課題と比べると、ある意味、別世界の如くかけ離れていることの対比が印象に残ります。

ただ、舞ちゃん自身にとっては「なにわバードマン」で受けた衝撃というものが、それは相当なものだったことは、今週や先週の劇中でよく理解出来たこと。
彼女にとっては、これは人生の一大事、だったと感じたのでしょう。第6週のカットより。
本題に戻りますが、がんじがらめにされたり、沼にはまっているという時こそ、問題の解決を急がずとも、時間がかかっても少しずつ、向き合えばよい。そのためには、逃げないと行けない時さえ、人生にはあるはずです。
貴司君は、幸運にもそこから「逃げる力」が残っていたのですから、本当に安堵しました。
そして、いま置かれている状況が不本意でつらいものであっても、それを認めること、そこから向かい合う気持ちを、少しでも持てること。
事実を認めて、受け容れてしまえば、まずは楽になるでしょう。どうするのかは、そこから時間をかけて考えれば良いのですから。
しかし、深刻な悩みを抱えている人に、ここまで諫言出来る人というのは、そうそう居ないものです。それも、回りに合わせることに捕われてバーンアウトした貴司が、いちばん希求していることをずばり、すばりと。
そうなると後は、帰阪して両親とじっくり話すだけです。優しいお父ちゃん、お母ちゃんなのですから。
ところで祥子さんは、小学生だった舞と二人暮らししている時、このようなことを言い聞かせていました。第2週のカットより。

時は遡り、1981(昭和61)年のこと。
長崎の大学で同級生だっためぐみと浩太が、大学を中退して結婚したいと、祥子の元を訪ねた際の様子。
祥子さんは、これが自分の、めぐみに対する大きな「失敗」だったこと、そしてそれを悔いていたことも、第2週では描かれていました。
失敗は、決して悪いものではない。失敗しない人間など居ないのだし、自分自身すら失敗ばかりだった。ただ、大事なのはその失敗を受け容れること、そこからなにを学び、この先どのように考え、行動に移すのか。

それを、孫娘の舞に話す姿というのには、今週の主要な登場人物の、それぞれの過去に向き合おうとすることと、この「失敗は決して悪いことではない」くだりとリンクしているように感じてなりません。

それぞれが抱えていた過去、現在の問題や課題について、軽重という物差しで図れるものでは決してないでしょう。その重さというものは、当事者にしか、決してわからないのですから。

世代も、生活環境もまったく異なるそれぞれ。
ただし、容易には解決しなかった事実、それ以上にそのための道筋さえ見い出せなかったほどの深さや重さを乗り越えて、理解と和解につながったことの意味。

その過程には、誤解や行き違い、若さゆえのこともあったでしょう。舞の選択に慎重にならざるを得ない両親にさえも、向き合わないとならない過去があったのですから。
「話しを聞いてやれば良かった」「話しをすれば良かった」ことの、若い頃の自分たちにあった共通項が、奇しくも舞の強い決心と、意思表示に通じるものがあると、めぐみはきっと、そう気づいたのでしょう。
若いというだけで、やもすれば祥子に一方的に蓋をされてしまった自分自身の意思に対して、めぐみさんはめぐみさんなりに、責任感の強い浩太さんと一緒になったからこそ、きちんと気持ちを受容出来たに違いありません。
実に30年以上経って、祥子さんと本当の和解を果たせた、浩太さんとめぐみさんでした。

さまざまなことがあった結果、二人は舞の、航空学校への進学を認めることになりました。

しかし、この祥子さんという人の、なんたる人格の高潔さたるや。
このような人に出会ったことなどありません。

舞だけではなく、めぐみや浩太にとっても、客人となった貴司や久留美にとっても、その存在の大きさをあらためて感じた、今週でした。
期せずして、大きなメンターになっている祥子さんに、これは本当に感謝の週ですね。

これだけのことが背景としてある、舞ちゃんのあたらしい選択と、夢への挑戦。
いよいよ航空学校へと、舞台は移ります。
来週も、楽しみに拝見したいと思います。
次回に続きます。
今日はこんなところです。