みなさんこんにちは。前回からの続きです。
いよいよ本日、8日に最終回を迎えるNHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。


第111回(4月7日)放送より。
逃げるようにアメリカへ帰国したはずの、アニー・ヒラカワこと初代ヒロイン・安子(森山良子さん)。しかし、積年の思いには抗えず、生まれた頃からの思い出が詰まった岡山へやって来ていました。
三代目ヒロイン・大月ひなた(川栄李奈さん)に背負われて、生き別れた二代目ヒロイン・大月るい(深津絵里さん)が出演する、クリスマスジャズフェスティバル会場へ向かいます。


そして、安子はフェスティバル会場に到着。
母娘二人、そして、ヒロイン三世代を繋ぐ「On The Sunny Side Of The Street(ひなたの道を)」を歌うるいの姿が、その目の前に。
るいが安子に親子断絶を突きつけたのは、1951(昭和26)年の初夏。
それから実に半世紀以上経った、この2003(平成15)年のクリスマスの日、二人はようやく再会、邂逅を果たしました。

昨日に続いて、どれほど泣かせるんか(泣)
激動の三世代の歴史を見守って来たいち視聴者としては、実に清々しい朝でした。
ただし、最終回は明日。
安子が生まれた100年後、2025(令和7)年で物語は、いよいよフィナーレを迎えます。


作品の舞台となった「東映太秦映画村(京都市右京区)」。
今年3月、期間限定で開催されていた「カムカムエヴリバディ展・ひなたの映画村へようこそ!」特別展を、半年にわたる劇中のシーンを交えながら回顧するということをしています。

前回の記事でも触れましたが、この作品の軸のひとつは「時代劇」。
とりわけ、人気時代劇俳優「モモケン」こと、桃山剣之介(尾上菊之助さん)が活躍する「棗黍之丞(なつめ・きびのじょう)」シリーズの展開が、ヒロイン三世代に大きな影響を与えました。それについて時系列的に見て参ります。

作中、最初に登場したのは「棗黍之丞 仁義剣」
という作品でした。1939(昭和14)年公開。

この作品は、初代ヒロイン・安子(上白石萌音さん)が、後に夫となる雉真稔(松村北斗さん)と楽しんだものでした。

両想いながら、家柄の違いから交際、結婚を反対されていた二人。
戦争の影が濃くなり、縁談の話しが上がった安子は家のためそれを受けることにし、最後に稔に会おうと、単身で大阪にやって来てのことでした。第8回(2021年11月10日)放送より。
安子にとっては稔との、忘れられぬ思い出の一幕になった作品と、先日の劇中で示唆されていました。加えて第109回(4月5日)放送より。


そして、次に登場するのは「棗黍之丞 妖術七変化 隠れ里の決闘」。1963(昭和38)年公開。
るい・ひなたと、それを支えるパートナーに、多大な影響を及ぼした、本作の軸と言えます。
安子と離別し、戦没した稔の父、るいにとって祖父に当たる仙吉(段田安則さん)が亡き後、高校を中退し、大阪へやって来た二代目ヒロイン・雉真るい(深津絵里さん)。
とあることから、竹村平助(村田雄浩さん)・和子(濱田マリさん)夫妻が営む、道頓堀のクリーニング店に、住み込みで働くことに。


ある日、顔なじみの映画館支配人・西山(笑福亭笑瓶さん)からるいが貰ったのが、その「隠れ里の決闘」の映画チケットでした。


当時はクリーニング店の常連客で、るいと距離を縮めつつあった、後に夫になる大月錠一郎(オダギリジョーさん)とともに、これを観に行くことに。しかし…

二人が出かけた後、店で流れるラジオ番組で、人気パーソナリティ・磯村吟(浜村淳さん)がこの作品を「日本映画史上稀に見る駄作」とさんざん酷評しているのを、竹村夫妻は耳にしてしまいます。

西山がこの作品のチケットを、やけに気前よく店に山ほど持ち込んだのは、そのせいだったのか…と気づく二人。
しかし錠一郎はというと、関西一のトランペッターを決めるコンテストに出場が決まっていたものの、直前に自信喪失に陥っていました。
気分転換に映画でも見てや、と西山がチケットを渡したという次第だったので、えらいことをしてくれたと、夫妻は心配するのですが…

ところがこれを観た錠一郎は、なにを感じたのか俄然やる気に。るいのために優勝すると、自信を取り戻します。第53回(1月17日)放送より。
おそらくは、黍之丞の決め台詞であるこれが、戦争で両親を喪い、家庭の暖かさを知らず、孤独と暗闇の気持ちが根底にあった自身の出自になにかしら、響くものがあったようです。
この作品をきっかけに錠一郎は時代劇好きになり、それが、娘のひなたにも繋がりました。
ちなみに、特別展で展示されていた「隠れ里の決闘」ポスターの裏面には、なぜか錠一郎のサイン、トランペットのイラストが描かれています。日付けは、1963(昭和38)年8月11日。



「隠れ里の決闘」のおかげか、錠一郎は先ほどのトランペッターコンテストで見事、優勝。


優勝したことで、東京でのプロデビューも決定。支えたるいにとっても朗報になりました。

おもしろいのは、優勝の翌日に竹村クリーニングを訪れた際のこと。
有名になるんやからサイン貰ろとこ→しかし適当なものがあらへん→そや、あのけったいな映画のポスター剥がして裏を使こたらええやん!
という、なんともすごい展開の産物?でした。
しかし、自分と一緒に上京することもあり、るいとの結婚を申し込みに、錠一郎はやって来たのでした。夫妻は、娘を頼みますと語ります。
岡山から来阪するも就職に失敗し、身寄りのないるいを、血が繋がらなくとも実の娘のように暖かく愛し見守った竹村夫妻。
るい編(大阪編)は、このご夫妻でなしでは間違いなく成り立ちませんでした。第55回(1月19日)放送より。

ちなみに後日、目当てだった「若大将シリーズ」を満員で観られなかった竹村夫妻も、止むなくがらがらだった、この「隠れ里の決闘」を観ることに。
しかし、そのクライマックスに圧倒されます。
「日本映画史上稀に見る駄作」と酷評されつつクライマックスの殺陣は「日本映画史上類を見ない圧巻の立ち回り」と、磯村は付け加えていました。なにやらいろんな意味ですごい作品だったようです。第54回(1月18日)放送より。
さらに続きます。
今日はこんなところです。