みなさんこんにちは。前回からの続きです。
「ヒロイン三世代がつなぐ100年の物語」。
いち視聴者として、リアルタイムでそれに加われたことに、感謝の半年間でした。
作品の舞台となった「東映太秦映画村(京都市右京区)」。
今年3月、期間限定で開催されていた「カムカムエヴリバディ展・ひなたの映画村へようこそ!」特別展を、半年にわたる劇中のシーンを交えながら回顧するということをしています。
この作品の軸のひとつは「時代劇」。
とりわけ、人気時代劇俳優「モモケン」こと、桃山剣之介(尾上菊之助さん)が活躍する「棗黍之丞(なつめ・きびのじょう)」シリーズが作中では、軸に登場しました。
二代目ヒロイン・雉真(きじま)るい→大月るい(深津絵里さん)、娘の三代目ヒロイン・大月ひなた(川栄李奈さん)に大きな影響を与えた「棗黍之丞 妖術七変化 隠れ里の決闘」(昭和38年、条映が公開)という作品。
これにまつわる経過を、さらに劇中の様子を交えながら、掘り下げたいと思います。
時は、1983(昭和58)年夏の終わり。
大部屋俳優ながら「伝説の殺陣役」として一目置かれる伴虚無蔵(ばん・きょむぞう、松重豊さん)。
当時高校3年生ながら、時代劇を愛するひなたの素質を見抜き、衰退する時代劇を救えると、京都の回転焼「大月」にやって来た際の様子。


このシーンにも、くだんの「隠れ里の決闘」のポスターが。
前回の記事でも触れましたが、京都に移り住んだるいが、大阪でお世話になっていたクリーニング店の竹村夫妻から、持たされたものです。

時代劇の世界からそのまま抜け出したような風貌と言葉遣いに、るいは呆気に取られます。
しかし、ポスターの左下に写る敵役・左近は、まさにその虚無蔵が演じていた役でした。
若かりし頃の、自身の姿に思うものがあったのかと窺えるシーン。第74回(2月15日)放送より。

そして、ひなたの親友・藤井小夜子(新川優愛さん)に失恋した弟・桃太郎(青木柚さん)が五十嵐文四郎(本郷奏多さん)に別れを告げられた直後の、ひなたと喧嘩に至った時のこと。
かつては、プロトランペッターとして嘱望されていたものの、突然トランペットを吹けなくなる病気に、長年苦しんでいた二人の父・錠一郎(オダギリジョーさん)。
そのトランペットをおもむろに持ち出します。

最初の公開(昭和38年)の時、人気ラジオパーソナリティ・磯村吟(浜村淳さん)に「日本映画史上稀に見る駄作」「支離滅裂なストーリー」「妖怪のなんたるちゃちい作り」などと、メタクソに酷評されていた「隠れ里の決闘」。
しかし、クライマックスの殺陣は見たことのない圧巻なもので、時代劇を愛する若い二人にとっては、衝撃的なものだったようでした。
さらにこの「隠れ里の決闘」の初デートをきっかけに、二人は急接近することになります。1983(昭和58)年夏。第81回(2月24日)放送より。
そして、再映画化された「隠れ里の決闘」。
敵役・左近のオーディションには落選したものの、長年の努力が実を結び、五十嵐も「伊織」という、役名付きでこれに出演することになりました。

先ほどのリバイバル上映からはさほど時間経過していないのですが、この頃には互いに「ひなた」「文ちゃん」と呼び合う恋仲になっていました。見ていてすがすがしい、若い二人。


五十嵐とひなたの関係がいちばん良好で、それが互いの仕事にも影響していたように、顧みればそのように感じます。第86回(3月3日)放送より。しかし、その後二人は別れを選びます。
先ほどの錠一郎のトランペットの話しに戻りますが、この喧嘩の時、彼が二人にかけたのは「それでも人生は続いていく」という諌言。
やっていたことをやむなく諦めざるを得なくとも、それで終わりではない。そこから先どうなるのか、どうするのかは自分次第。
そして、人は必ず失敗するもの、誤るもの…ということも、輻輳的に軸が重なるこのドラマの中で、重要な要素だったように感じます。余談でした。
現在線では、ひなたは「ハリウッドキャスティングディレクター」、五十嵐は「アクション監督」、錠一郎は「ジャズプロピアニスト」になっていることが、その証左なのかも知れません。第109・111回(4月5・7日)放送より。

そういったことで、ヒロイン三世代の生き様に多大な影響を与えた「モモケン」と映画「隠れ里の決闘」(とポスター)。
ストーリーの軸、その一貫性と、三世代がそれに出会い運命が動いたのは、ドラマとはいえどもはや、人生というものは奇遇ではないようにも感じられます。第112回、最終回より。
次回に続きます。
今日はこんなところです。