みなさんこんにちは。前回からの続きです。
「近鉄特急で令和最初の伊勢志摩を巡る」と題して、先月に伊勢志摩を日帰りひとり旅した際の様子をシリーズでお送りしています。
ただいま「松阪駅(三重県松阪市)」です。
古くからの、歴史と文化都市として著名なこの「松阪」について、あれこれと取り上げています。
それでは、前回の記事に続いて、
「各駅停車全国歴史散歩21 三重県」
(中日新聞三重総局編・河出書房新社刊 昭和56年10月初版 絶版)から、拾ってみます。
同市は、天正一二年(一五八四)戦国武将・蒲生氏郷(がもう・うじさと、1556-1595。織田信長~豊臣秀吉に臣従。キリシタン大名としても知られる)が近江(おうみ、現在の滋賀県)から転封(注釈:てんぽう。領地替え)されてきて開いた町(注釈:氏郷は後年、さらに会津へ転封され、その地を「若松=わかまつ。現在の福島県会津若松市=」と改めて、自領の基礎を構築した)。
同一六年に平野部の丘陵の四五百(よいほ)の森に松阪城を築き、新たに町割りをし、海岸近くを通っていた参宮道を城の近くにつけ替えた。さらに城下に楽市楽座を開いたので諸国から商人が入り込んで繁栄し、商業の街の基礎が築かれた。
江戸時代、松阪木綿の産地として栄えたことから、木綿を元手に江戸で店を構える者が多かった。
三井高利(みつい・たかとし、1622-1694。松坂出身の商人)もその一人。
若くして父親に死別した彼は、母親からもらった木綿を馬の背に載せて江戸へ行き、やがて三井財閥の基礎を培った。
職業別の町名残る
いまは市民人口の三倍余りの商圏を有し、商店街がひしめく商業の街。戦災を免れたので、街のあちこちに往時の面影を見ることができる。家並みや側溝がノコギリ状の魚町通り。下級武士の護城番屋敷(ごじょうばんやしき)である棟割り長屋、緑に囲まれた上士の武家屋敷、豪商の邸宅などだ。松阪城跡は、天守閣こそないが、一帯が松阪公園となって受け継がれ、石垣などは築城当時そのまま。
街には三味線や太鼓、下駄を作る店もある。そして、職人町、大工町、紺屋町など数多くの古い町名を耳にすることが出来る。
氏郷が職種別に町をつくった名残といわれる。
客筋多彩な「和田金」
松阪は、極上肉の代名詞”松阪肉”の本場である。老舗「和田金」は明治二六年の創業。肉料理を食べに年間五、六万人が訪れる。一般観光客から政財界、芸能界と客筋は多彩である。独自の牧場を持ち、特別のエサと飼育方法が肉質を美味にしているのだとか。(後略)
本文の「和田金」さんも有名ですが、さすがというか、駅構内には「松阪肉」を味わえるお店の広告が見受けられます。
これは「牛銀」さんのもの。
かつては、大阪でも「松阪魚町 牛銀本店」…と語りかけるテレビCMを見かけるほどでしたので、名前は知っています。
食べに行ったことはありません(苦笑)
そういえば、「近鉄名古屋駅(名古屋市中村区)」の特急ホームにも、大きな広告があったのを思い出しました。
いつかは味わってみたいものです(^O^)
さて、駅前を見渡してみますと、この大きな「鈴」の模型が鎮座しています。「驛鈴(えきれい)」と呼ばれるものなのですが…
隣組の本居宅と三井宅
本居宣長(もとおり・のりなが、1730-1801。松坂出身。国文学者・医者。日本最古の歴史書「古事記」の研究書「古事記伝」を編纂したことで知られる)が生涯を送った旧宅(鈴屋、すずのや)跡(国の史跡指定)は三井宅跡と目と鼻の先。近くの松阪公園からは市街地をはじめ伊勢湾や台高山系(だいこうさんけい、大台ヶ原山地とも。三重・奈良県境の標高1000m級の山々を指す。別名「近畿の屋根」とも)が遠望できる。
園内には、移築された宣長宅、本居記念館などがあり、四季を通じて見学者でにぎわっている。旧宅は宣長の書斎がそのまま残り、眠くなると鳴らしたという鈴(代品)が懸かっているのも戦前派には懐かしい。
公園の隣が本居神社。シーズンになると、受験の合格祈願札を懸ける人でにぎわう。(中略)
春には山桜で一面がかすむなど、いたるところで宣長の足跡がしのべる。(出典同 P30-31)
江戸時代の中期、「古事記伝」の編纂をはじめ、国文学研究の第一人者として知られる「本居宣長」は、ここ伊勢・松坂を代表する文学人の一人です。
宣長の生家「鈴屋」はいまなお現存しており、周辺には関連する史跡もたくさん残されています。なおのこと、散策したくなります…
ですが、空腹には勝てず…
商店街には、松阪駅弁を販売している「あら竹」さんのお店もあります。
有名なのは、やはり「松阪肉」を使った「牛肉弁当」なのですが、どないしようかな?と、またもふらふらしているうちに、時間だけが経過してしまいました。結局、近くの定食屋さんで日替わりランチを頂くことに。
「牛肉弁当」は、またの機会に味わいたいと楽しみにしておくことにします。
急ぎ駅へ戻り、フリーきっぷの特急券の引き換えをして貰ってホームへ走ります。
慌ただしさの中ではもったいないほどの、魅力を感じる「松阪」でした。
次回に続きます。
今日はこんなところです。