(ヤフーブログ 2019年4月6日アップ分)
みなさんこんにちは。今日の話題です。
朝日大阪朝刊 平成31(2019)年3月20日付け 34面より。
10年前のこの日、華々しく開業した「阪神なんば線」開業10周年を記念した広告が掲載されていました。
「神戸から奈良へ」…それまで、JRを含めて直通列車の設定がなかった二つの地域を結ぶ路線として、大きな注目を集めた「新線開業」でした。
今日からは、その「阪神なんば線」開業前後の様子を振り返る記事を、シリーズでお送りしたいと思います。よろしければおつきあいください。
ここからは、当時配布されていたリーフレットから。
10年前にあらたに開業した区間は「大阪難波駅(大阪市中央区)~西九条駅(同此花区)」間、3.8kmでした。総延長としては短い区間ではあるものの、その間に「桜川駅(同浪速区)」「ドーム前駅(同西区)」「九条駅(同)」という、3つの駅が設けられるに至りました。
先ほどの新聞広告にもあったように、この新規に開業した区間を介して、阪神と近鉄が相互乗り入れを開始し、神戸三宮と近鉄奈良が「快速急行」で直通運転されるということが最大のセールスポイントでした。
それ以外の列車種別(準急、区間準急、普通)も、拠点駅のひとつ「阪神尼崎駅(兵庫県尼崎市)」を境に、乗り入れ先の「近鉄奈良線」にわたって終日、多数の列車が設定されるなど、両社ともに、それまでの運行形態が大きく変貌するほどのものになりました。
先日来「JRおおさか東線全線開業」の話題を取り上げていましたが、そういったこともあり「阪神なんば線開業」についても、それに比類するほど大きく注目された「新線開業」でした。
鉄道趣味的に見ても「相互乗り入れ」というもの自体が首都圏に比べて非常に事例の少ない関西においては「広域ネットワークの構築」という点でも、大変興味深い開業になりました。
奈良方面からの「近鉄電車」の乗り入れは「神戸三宮」まででしたが、その先では「神戸高速鉄道」を介して「山陽電車」で「姫路」へ。
そして「阪神なんば線」を介して、相互乗り入れしている「近鉄奈良駅」以外でも、乗り換えることで「京都・伊勢・志摩・名古屋方面」へ。
理論上では、西は「山陽姫路駅」から、東は「近鉄名古屋駅」や「賢島駅」まで一本のレールでつながることになり、定期の直通列車は設定されはせずとも、実に壮大な鉄道ネットワークが構築されるということになりました。
当時、この事実には結構な衝撃を受けた記憶があります。
ところで、10年前に開業した「阪神なんば線」はもともと「尼崎~西九条」間で営業していた「西大阪線」という路線でした。
「大阪難波駅」への延伸開業が完成した際、同時に「阪神なんば線」と改称されたのですが、ここからはまずは新線開業直前、平成21(2009)年1月の「西大阪線」を訪問した際の様子からお送りしたいと思います。
やって来たのは、「阪神西九条駅(同此花区)」です。
「JR大阪環状線」と「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)」への主要なアクセスとして知られる「桜島線」との乗換駅なのですが、実に閑散としていました。というのも当時、こちら方面までやって来るには「阪神電車」の大阪側のターミナル駅である「阪神梅田駅(同北区)」でJRに乗り換えて、というのが列車本数も多く、便利だったということや「西大阪線」と「阪神本線」とは直通列車がなかったということなどがあったからでしょうか。
ホームには、阪神タイガース・真弓明信監督(当時)を起用した「阪神なんば線」の広告が。
すでに退任されて結構な年月が経っていますので、なんだか懐かしい気分にもなります。
訪問したのは開業の2カ月前だったのですが、駅名標は従来のもの。
隣駅の表示に「→」が使用されているのは阪神電車独特でしたが、開業に伴い、あたらしいデザインの駅名標に取り替えられるに至りました。
当時、終着駅だった高架式の「西九条駅」は「線路2本、対向式ホーム2面」という形態で、駅の尼崎方には片渡り式のポイントが設けられていて、双方のホームへと入線出来る形態になっていたのですが、すでに「大阪難波駅」までの試運転が開始されていることもあり、この「西九条駅」に到着する列車は「1番線」から「試運転列車」として「大阪難波駅」へと向かっていました。
列車が到着するのみになった「1番線」。がらんどうとしています。
そういったことで「1番線使用中止(西九条止め→大阪難波・近鉄線方面への乗り入れ試運転列車が発着するのみだった)」の告知が掲出されていました。
反対側の「2番線」、そこから「大阪難波駅」方面を振り返ってみます。
開業後は10両編成の「快速急行」も停車することになっていたので、JR線を越えたさらに向こうまで長いホームが延伸されていました。その先には、騒音対策として沿線住民に配慮した、巨大なドーム区間(防音シールド)が延びています。
線路に目を移しますと、停止位置標識の他にも「訓練境界」というものも。
もともと営業している路線をさらに延ばすものでしたので、独特な標識ですね。
しばらくしますと「試運転」の文字を表記した「西九条止まり」の列車が入線して来ました。
「阪神なんば線」開業に先駆けて導入された、近鉄への乗り入れに対応した、最新型の「1000系」という形式の車両です。
しばしの停車の後、新線区間へと「試運転列車」として発車して行きました。
そして、こちらの「2番線」にも列車がやって来ました。
「大阪難波駅」からの試運転列車です。
仮柵の手前でいったん停止。
おそらく、こちらでも「訓練境界」の標識の上で停車していたのだと思います。
この駅からは「普通尼崎ゆき」として、乗客を乗せて発車して行きました。
こちらの車両も、近鉄への乗り入れ対応工事がなされた「9000系」という形式の車両でした。
この後にも、試運転列車は割と頻繁にやって来ました。
当時「西大阪線」は10分間隔の運転で、「西九条駅」止まりの列車は、この時間帯はすべてこの先の区間では、試運転をしていたようです。
先ほどの列車では気づかなかったのですが、係員の方が手旗信号を振っての発車。
これも事前の訓練、試運転期間ならではという印象を受けます。
数列車を見送ったところで、わたしも試運転区間からやって来た「尼崎ゆき」に乗り込むことにします。
「西九条駅」からは10分ほどで「阪神尼崎駅(兵庫県尼崎市)」に到着。
開業記念のラッピングを施した編成に出会いました。
折り返しの「西九条ゆき」となって、乗車して来た列車は発車して行きました。「阪神なんば線」開業後、すなわち「近鉄電車」との相互乗り入れ開始後は主役となるあたらしい車両の、試運転というなかなか珍しい姿を見ることが出来ました。
ところで、この「阪神尼崎駅」の神戸方には引き上げ線が何本も設けられています。そこに留め置かれているたくさんの車両群。
その中に「赤と白」塗装の、見慣れた近鉄車両の姿も見られます。
パンタグラフが降ろされているので運用はされていないようですが、相互乗り入れに当たって、近鉄・阪神双方にそれぞれお互いの車両を事前に陸送して、自社線内で試運転を行っているということが話題になっていました。
ただ、近鉄沿線から遠く離れ、さらに府県境も越えたここ「尼崎」で見た「近鉄電車」…これには大変な衝撃を受けたことをよく覚えていますし、この光景を目にして、開業がますます楽しみになったことも覚えています。
次回以降は、その「阪神なんば線」開業初日、平成21(2009)年3月20日に沿線をあちこち巡った際の様子をお送りしたいと思います。
次回に続きます。
今日はこんなところです。