無事に入手出来たのはいいものの、まだしっかりと愛でていなかった手元の人気鉄道模型シリーズ「鉄道コレクション」を細見しようというシリーズ、今日もその続編をお送りしたいと思います。
よろしければどうぞおつきあいください。

さて、今日取り上げるのはこの「阪神7861形・7961形2両セット」です。
形式名を見聞するに、なかなか細分化された区分がなされているのは阪神電車ならではといえる独特のものです。

パッケージ裏には車両の解説。ひと昔前は、阪神電車のこの顔つきの電車というのには数多く目にしたり乗車したりしたものですが、最近は新型車両の導入で、そのような機会がすっかりなくなったなあと感じます。

当形式は「2両固定編成」として昭和41(1966)年に最初の3編成6両が、架線電圧の1500V昇圧(昭和42年)を経て、昭和43(1968)年にはさらに5編成10両が登場したとのこと。2両単位ということもあり、他形式との併結も行われたようで、本線のみならず支線でも幅広く使用されて来たそうです。

解説にもありますが、現在では本線系統の運用からは外れ、支線である「武庫川線(むこがわせん)」での活躍が主になっているとのこと。この路線については後刻触れたいと思います。

では、さっそく実車を入線させてみます。
2両セットのうち、下枠交差型パンタグラフのついているのが「7861形」。
運転台のほか主電動機が搭載されている車両です。

正面の顔には、屋根上へ上がるためのステップが向かって左側に取り付けられているのが特徴でしょうか。この意匠も「いかにも阪神電車」という印象です。

続いて側面です。先日取り上げた南海や、JR線より車長が2mほど短い「19m級車両」ということで、見た目にもこじんまりした印象を受けます。
片開き3枚扉の間に、窓が4枚並ぶ姿は阪神電車ならではのデザインです。

側面の窓の一部には横向きの桟が保護棒として取り付けられています。
「阪神電車」というと、以前からこの「保護棒」のある電車の多さ、というのが気になっていたのですが、これが設けられているのは、そもそもは上下それぞれの窓を全開にした際、万一の場合、旅客が手や顔を出すと危険なためという理由があります。
ですが、冷房化されているのにも関わらず(=夏などに窓を全開にする必要がない)この保護棒が設けられているというのは、何か別の理由があったりするのかな?などと、目にするたびにふと考えてしまいます。

妻面(つまめん、運転台のついていない側)を拝見。やはり、こちらの窓にも保護棒が設けられているのですが、こちらにあったのが阪神電車の社章でした。「日本初のインターアーバン(都市間電車)」として明治38(1905)年に開業した阪神電車、当時としては珍しかった「電車での旅客輸送」が行われるということで、社章の中央のレールの周りには、電気を想起する「稲妻」を模したイラストが施されています。

そして、パンタグラフ・主電動機のないこちらが「7961形」。

この2両を並べてみます。

屋根上には、特徴的な形状のクーラー室外機が整然と並んでいます。
「7861形」(下)の方にはパンタグラフがあるので、室外機のスペース一個分がそれ用に空けられています。阪神電車は、競争の激しい阪神間で、旅客サービスの一環として古くから冷房化率が高いことで知られています。

続いて妻面を拝見。「7861形」(左側)の方は、妻面側にパンタグラフがあるということで、そこから延びる配管類の複雑さが印象的です。

最後に、付属のステッカーです。

本線では急行系統の全種別で運用されていたということで、阪神オリジナルの「特急マーク」もここにはありました。
そんな中「阪神の支線」である「西大阪線(現在の阪神なんば線)」と「武庫川線」の行先表示があるではないですか(画像右の二列)。

では、これらの支線については…
「カラーブックス日本の私鉄12 阪神」
(廣井恂一・井上広和共著 保育社刊 昭和57年初版)から拾ってみます。

久しぶりにこの本を読むということで、巻頭からページを繰っていますと…
時代を感じさせられる、このショットが大写しになっていました!
阪神の大阪方のターミナル、地下の「阪神梅田駅(大阪市北区)」を出た電車が「野田駅(同福島区)」手前で「大阪環状線」をくぐるところです。
現在では見られない4両編成の急行電車、その頭上を走るのは「春日色」と親しまれた、奈良と大阪を結んでいた国鉄113系の「大和路快速」。
路線自体も、現在ではガードをくぐったカーブの向こう側は地下線の開口部になっているのですが、この当時は地上区間が続いていて、福島駅手前には「開かずの踏切」があったりしました。いや、懐かしい風景と思い出です。

さて、本題へと戻りたいと思います。
商品のモデルとなった「7861形・7961形」が停車する「武庫川駅(兵庫県尼崎・西宮市)」駅名になっている「武庫川」の真上に本線のホームはあり、なおかつ尼崎・西宮両市にまたがっているという駅なのですが、この川を西宮側に渡ったところに、ここから南下する「武庫川線」のホームがあります。
「武庫川線」はここから「武庫川団地前駅(同西宮市)」へ至る、3駅・わずか1.7kmほどの短い路線です。本線から分離してワンマン化がなされておりくだんの「7861形・7961形」がいまなお現役でのんびりと走っています。

そして、もうひとつの支線は「西大阪線」。
この時点では、大阪環状線の「西九条駅(大阪市此花区)」から、阪神本線の「尼崎駅(兵庫県尼崎市)」へと至る、都会でもローカルな路線でした。
現在は「西九条駅」から「大阪難波駅」へと延伸し「阪神なんば線」と改称
され、近鉄電車相互乗り入れの最大10両の快速急行が走るなど、大きな変貌を遂げた路線です。
こちらには「西九条⇔尼崎」の行先板を掲げて「西大阪線」線内を走る2種の車両が取り上げられていました。よくよく見ますと、走っている電車は同じ西大阪線内でも「赤色」と「青色」と、車体色が異なっています。
もともと「青色の電車(”青胴車”と呼ぶ)」は高加速・高減速に特化した「各駅停車専用」なのに対し、「赤色(”赤胴車”と呼ぶ)」は「急行系統専用」で、本線ではそれぞれの運用は完全に分けられていたのですが、この「西大阪線」ではそれらの分け隔てない運用がなされていたようです。
本線ではあり得ない車両運用、なかなか興味深いものです。

ということで、駆け足ながらこの2両について取り上げて来ました。
新塗装化が進む現在、もう本線では見られなくなったこの「赤胴車」がいまなお現役で走る「武庫川線」、ひと昔前の阪神電車を想起させられる懐かしい時代を思い出した次第です。また機会を設けて「武庫川線」でこの塗装の、この車両に乗ってみたいなあと思えます。
今日はこんなところです。