滋賀・彦根駅で開催される、近江鉄道の「ガチャコンまつり2017」というイベントに向かうべく、JRで米原駅(滋賀県米原市)へとやって来ました。


その東口に、小さな改札がありました。
交通の要衝である米原、そこから県中央部へと向かって路線を延ばしているのがその「近江鉄道」という、ローカルな路線です。

路線はこのように、
①彦根・多賀大社線(米原~高宮~多賀大社前間)
②湖東・近江路線(高宮~八日市間)
③万葉あかね線(八日市~近江八幡間)
④水口・蒲生野線(八日市~貴生川間)と分類されているのですが、
これらはあくまでも「愛称」ということだそうで、もともとは、
①本線(米原~貴生川間)
②多賀線(高宮~多賀大社前間)
③八日市線(八日市~近江八幡間)の三路線で構成されているとのこと。
山岳部がほとんどない、広大な近江平野のただ中を走る鉄道です。
もう10数年ほど前のことなのですが、路線の一部だけは乗車したことがあるので、あわよくば「全線完乗」を果たしてみたいところです。

さて、駅のリーフレット類に気になるきっぷを見つけました。

「びわこ京阪奈線フリーきっぷ」というものが発売されているようです。
しかし、「びわこ京阪奈線」というのは聞いたことがない名称なのですが…

実はこれ、滋賀県が中心になって考えられているもので、びわ湖東岸周辺と大阪とを高速鉄道で結ぶという構想だそうです。
具体的には「近江鉄道」(米原~貴生川間)、「信楽高原鉄道」(貴生川~信楽間)を高速化の上で貴生川で結節させ、信楽から先には高規格の新線を建設、京田辺(きょうたなべ、京都府京田辺市)で「JR学研都市線」に接続、大阪へと向かうという構想だとのこと。
思わぬところで、おらが地元を走る「学研都市線」の名前が出て来たので驚いたのですが、逆に、こちらでは聞いたこともない話なのですが…

それはさておき、このフリー乗車券を活用すると、今回の場合などはかなり安く乗り鉄出来そうです。ということで…

さっそく購入しました。1030円なりでした。

フリー区間は「近江鉄道全線」と、終着の「貴生川(きぶかわ、同甲賀市)で接続している「信楽高原鉄道全線」。今回の乗り鉄には持って来いです。

前置きが長くなりましたが、このフリー乗車券で改札を入ります。
JRの米原駅の東側に、こじんまりと近江鉄道のホームはありました。

さっそく、その「貴生川ゆき」が発車待ちをしていました。
黄色一色、2両編成のワンマン列車です。
表情も、どことなくかわいらしい印象なのですが…

これはその車両と同形式で、正面の顔の窓ガラスが縦長に改造されていないオリジナルに近いものなのですが、実はこの車両…

「Wikipedia #西武411系」(東村山駅)より。
もともとは、東京・埼玉を走る「西武鉄道・402系」という車両でした。
当時の写真を拾って来たのですが、これを見るにつけそのままですね。

この編成は、雰囲気はどことなく残っているような、そうでないような…という感じですが。正面はともかく、側面はほとんど変化はないようです。

ですが、西武線に比べると路線規格が小規格な近江鉄道では、この大型車両の入線に当たってさまざまな制約があったようです。
最たるものが、車両下部のこの「切り欠き」でしょうか。このような工夫ははじめて見ました。



それでは、米原駅を発車します。

では、続いては車内を観察してみます。実車に乗車したことがないので、西武鉄道の車両として活躍していた頃との差異はわからないのですが…

まずは連結部。通路は幅広いスペースが設けられ、その関係か貫通扉が設けられていません。
昭和30年代後半から製造が開始された車両、ということなのですが、時代背景から「機能性が大きく押し出されている」という車内の意匠のように感じられます。

その中でも、その時代ならではの車両群でよく見られる、懐かしさを感じる情景があちこちに点在していました。
座席の下には、大きく穴の開いた「非常用ドアコック」。



プレート類の字体なども、この時代の車両ではよく見られるものがそのまま残っていました。見るに、剥がされたものもあるようですが…

ところで、車内にはこのような中吊りを見つけました。
プロ野球「埼玉西武ライオンズ」の試合日程などの広告なのですが…
先ほども述べたのですが、この車両が「元・西武車」ということにも関係がありまして、実はこの「近江鉄道」は「西武グループ」の鉄道会社です。
地元のびわこ放送(ラジオ)では「ライオンズ戦」が放送されたりと、こちらでのライオンズファンを意識した取り組みがなされているようです。
関西では、プロ野球というとやはり「阪神」や「オリックス」が出て来るので、この光景はなかなか珍しくも感じられます。

車内ががら空きなのをいいことに?さらにいろいろと観察してみます。
今度は運転台なのですが…


左側は「マスコン(マスターコントローラー、主幹制御器)」。重厚な印象を受けます。旧・国電のそれによく似た形状のようにも感じます。

そして、右側なのですが…これは「ブレーキハンドル」ですね。
しかし、ドラム式とはこれもまた珍しいタイプです(右に動かすとブレーキがかかる)。


びわ湖側を走るJRに対し、こちらは山側を走るので、小高い山すそに沿って走って行きます。そして、結構なスピードで走るのでよく揺れます(笑)
いまから向かう「ガチャコンまつり」の「ガチャコン」というのは、この近江鉄道の電車の走行音や、上下左右の揺れなどを愛称として呼んでいるものだとのこと。若い層には「ガチャ」=「近江鉄道」で通じるそうですが…

10分ほどで「彦根駅」(同彦根市)に到着。
主要駅のひとつですが、こちらもこじんまりとした駅です。

ホームの向こうには、幾つもの側線が広がっているのがわかります。

近江鉄道の駅に、車両基地と工場が併設されているのがこの「彦根駅」の大きな特徴です。さまざまな塗装、形式の車両が停まっていますが、ここがくだんの「ガチャコンまつり2017」の会場です。


手前に停車している車両、乗務員室扉の後ろに「SEIBU」のマークが貼られたままになっているところ、西武鉄道から譲受されたのち、まだこちらでは営業運転に入っていないのでしょうか。


黄色一色の電車群の中、朱色塗装の車両も停車しているのが見えました。「赤電(あかでん)」というそうで、もともと、西武鉄道ではこの塗装で運行されていたことがあったとのこと。
そういうことで、「所属会社が変わったあとの復刻塗装」ですね。


それでは、さっそくその「ガチャコンまつり2017」の会場、「近江鉄道ミュージアム」へと向かうことにします。
次回に続きます。
今日はこんなところです。