そんな経緯で、小鳥の餌場を用意することになった。折角なので、DIYで作ってみよう。
東屋風の餌場などというと聞こえはいいが、実のところ材料は百円ショップで揃えた。予算五百円程度のものだ。
鳥たちから見れば高級旅館ではなく、どう贔屓目に見ても駅前の簡易宿泊所である。

ダイソーにいって、餌場の材料になりそうなものを探す。すると、ちょうどいい大きさの簀の子や板材がみつかった。今の百円ショップは一通りのものを安く手に入れることができ、とても重宝する。

また昔のことを思い出した。

小学生のころだったが、クラブ活動で木工工作をすることになったことを覚えている。先生の指示はいい加減で、「自分で考えてなにか作ってきなさい」というだけだった。
僕は本棚を作ろうと思ったが、材料がなにもない。
ホームセンターにいって木材を買おうとすると、千円以上はしただろうか。
当時の僕の毎月のお小遣いは千円程度だった。学校のクラブの宿題のために、ひと月分のお小遣いを費やすわけにはいかない。
僕は同級生だった石井君と相談し、学校のまわりの製材所なんかに要らない端材をもらえるか聞いて回ることにした。

もちろん、木材は商売道具だ。ただで小学生に譲るような気前のいいおじさんなどいるわけがない。何軒かに冷たくあしらわれた挙句、漸くその辺に放置してあった端材をもらってきたことを覚えている。

当時のことを思い出すと、いまの百円ショップというのは、なんとありがたい存在なのかと思う。同時に、当時の小学校の先生は、随分いい加減な指示を出していたものだとも思った。

中学生になると、技術家庭の授業を本格的に始めることになる。T定規をつかって製図をして、設計書通りに組み立てるのだ。
技術の授業では、化粧箱を作ったことを覚えている。製図では、正面・側面・上面からみた図を、寸法と一緒に描いていく。それから、設計図通りに木材を切ったり、カンナで切り口を磨いたり、釘を打ち付けたりして、組み立てていくのだ。
技術の時間では、どの作業も初めての経験だし、間違えると修正が利かない作業も多かったから、最初はみんなおっかなびっくりだ。
一度、卓上ボール盤で穴をあける作業をしたことがある。最初は怖がって誰もやろうとしないので、試しに僕がやってみた。ひとつ穴が開いた途端、みんな安心したらしく、雪崩を打ったように皆がボール盤に群がった。
おかけで僕は、自分の作業を終えるのにクラスの誰よりも時間がかかった。

小鳥の餌場を作るときに、学生のときに技術の時間で学んだことが非常に役に立った。そのときは、ただ面白がってやっていただけだが、巡り巡って、そこで得た経験が役に立つことがあるのだ。

ともあれ、まずはダイソーで材料になりそうなものを買ってきた。屋根は板材(Fig.1)でいいが、野鳥観察が目的なので、壁は内側がみえるような材料であってほしい。
店内をしばらく物色していると、ちょうどいい大きさの簀の子が置いてあった(Fig.2)。これらを適当に切って貼り合わせれば、簡単に餌場ができるだろう。。。

(Fig.1) 板材

(Fig.2) 簀の子


うちに帰ると早速、各部位の寸法を測り、DIYの師匠の言葉も参考にしながら、餌場の構想を練った。そうして描いたのが(Fig.3)の出来上がりイメージだ。

 

(Fig.3) 餌場の出来上がりイメージ(投影図)


そして、この出来上がりイメージになるように、設計図を書き込んでいく(Fig.4)。

(Fig.4) 餌場の設計図



あとは、設計図の通りに部品を切り出して、釘を打ち付けて組み立てれば餌場は完成だ。

ところが、実際に作業を進めると、当初想定していなかった課題が出てきた。
設計図通りに作ると、東屋がフニャフニャになることに気づく。どうやら僕は、壁と屋根だけで、柱のない家を建てようとしていたらしい。
幸い、このミスには比較的初期段階で気づいたし、ダイソーで買ってきた木材は、ある程度端材が残る程度の余裕があったので、問題なく添え木(柱)を切り出すことができた。

家の構造を強くするための柱を忘れるとは、建築に詳しい人からみたら笑われそうな話であるが、経験がないと、このようなミスをいとも簡単に犯してしまうのだ。

(Fig.5) 板材から部品の切り出し(一部)


このほかにも、板の厚さが6mm程度しかなく、釘を打ちつけた先の板が、釘の先が入ってきたことによりミシミシと盛り上がってきた(これは、打ち付ける先の板に、あらかじめ接着剤を塗っておくことで解決した)。
また、切妻屋根が建物に対して少し傾いてしまったりと、餌場は一応の完成はみたものの、細かくみていくと、色々な問題が生じていた。

子どものころ、父親が工場建設の話をしてくれたことがある。
工場の中には色々なパイプを通す必要があるが、施工中、お互いぶつからないようにパイプを通すことが不可能な状況に陥ったことがあったらしい。工場建設のプロが間違えるくらいなのだから、設計図の段階で、建物の3次元構造を考えることは至難の技なのかもしれない。
今回は素人がゼロから餌場を作ったのだから、多少の問題がでるのは仕方ないと割り切って考えるべきなのかもしれない。

組立段階の各ステップの写真をとってみたので、参考までに表示する。
DIY教室のようになってきたが、一緒に作っているような観点でイメージを味わっていただきたい。

(Fig.6)は、組立前の餌場だ。
- 左:切妻屋根で、板材を二つ切り出し、木工ボンドでくっつけた後、釘を打ち付けた。
- 真ん中:壁の部分。一枚の簀の子を2等分した。上に屋根が乗るため、端を斜めにカットしている。
- 右:床の部分。特に加工はせず、一枚の簀の子をそのまま使った。
真ん中の簀の子に渡す板は、もともと3本しかなかったが、これだと強度的に心もとないので、追加で二本添え木を渡している。

(Fig.6) 組立前の餌場

 

これらを仮組みし、中に餌台を置いたものが(Fig.7)だ。白木が初々しくテンションが上がる(笑)。

(Fig.7) 仮組した餌場



餌場は、長期間にわたって屋外に置くことになり、その間に雨風に晒されることになる。木材が雨を吸収し、劣化することを防ぐため、ニスを塗って補強することも必要だ。生憎、ダイソーでは水性ニスしか売っていなかったため、こればかりは近くのホームセンターにいって、油性ニスを調達することにした。餌場が意外にうまくできたため、ニスも一度だけでなく二度塗りすることにした(笑)。

(Fig.8) 一回目の塗装


(Fig.9) 二回目の塗装


一見、綺麗に仕上がったようにも見えるが、細かくみると、地面に対して屋根が傾いていたり、ニスの塗りむらがあったりすることがわかる。

(Fig.10) 完成図


フォルムの美しさはともあれ、丁寧に仕事をすると、物持ちが良くなり、結果として経済的になるのである。
これで、東屋風の餌場の完成だ。

当初、駅前の簡易宿泊所の予定だったが、古民家くらいのクオリティになったのではないかと考えている。

最後に、これを設置すれば完成だが、猫に襲われにくく、うちの中から見やすく、小鳥も安心して入ってくれるところなど、色々と考えた挙句、人間の目線くらいの高さのところで、生垣から吊るすことにした。
一旦は、メジロの好物であるみかんを投入する。


最終形はこんな感じだ。

(Fig.11) 設置後の餌場