☂61 叩いて直らない時代 | 世の中の色々なことについて思うこと・神吉雄吾のブログ

 昔のテレビや子どもは、言うこと聞かないとすぐに叩かれた。

「叩けば直る」ってやつだ。今のテレビは大抵は叩くと壊れる。それぐらい精密なつくりになっているということなのかもしれない。

 

 機械の類は昔のように、何でもかんでも物理的に外したり繋いだりして、自分で直せるものではなくなってしまった。

 車なんかはいい例だ。昔はボンネットを開けるとスカスカで地面が見えたし、エンジンから駆動部から何がどう繋がっているのかよく解った。どこにでも手を突っ込んでいじることも出来たから、自分で替えられる部品は外して替えて、壊れた部品の代わりに針金でつないだりして、けっこう荒っぽい扱いながらも大事に使い続けたものだ。

 自分でいじるから機械的な動きや機能について、自然と理解していた側面もある。

 

「針金で充分だから針金でつなぐ」。

 

 これは機械的な動きや必要な強度を理解しているから出来ることでもある。

 

 今の車はボンネットを開けたとたん、すぐに頭が拒否反応を起こしてしまい、どこかをいじる気にもなれない。実際のところ触れば壊してしまうし手を入れる隙間もないから、もう素人がいじれるものでは無い。

 そのため余計に一般人の機械への理解がどんどん薄れて行っている。どの部分が何の機能をもって働いているのか知らないし、知る必要もなくなったのだ。みんな専門の業者がやってくれるし、法律的にも素人がやると叱られることになる。

 

 たまに海外の途上国で古い日本の車が走っているのを見ると、「直せば乗れる」ものだとつくづく思う。車体に全く別のエンジンを載せて走っているバイクもあったりして、昔の日本を見ているようでたくましい。

 

 今は子どもも同じく繊細だ。叩いて叱るという考え方はもう通じないし、大声で怒鳴ることすら出来なくなった。

 昔育ちの大人には試練だ。怒鳴らずとも叩かなくとも、大人として親として威厳を保ちながら、うまく教え導いてあげる寛容さが求められている。

 

 最近の子どもたちを見ると、総じて昔よりも優しい人間に育っているようだ。やはり優しく育てられているのだろう。今は叩くと壊れる時代なのだと、しょっちゅう叩かれて育った僕は感慨深く思う。