小学校の頃に学校で配られた「肝油ドロップ」。この前、薬局で大きな缶で売っているのを見つけて大人買いした。

 あの、小さくて丸くて甘くて、齧るとすぐに口の中でなくなってしまう、良くわからないけど魅力的な食べ物。

 

 学校で配られていた頃、二粒しかもらえないのが残念で、こんなおいしいお菓子を山ほど食べたいと思ったはずなのに、実際手にするとそれほど魅力的ではなくなっていた。しかも特別美味しくも感じない。

 

 大人と言うのは寂しい生き物だ。むかし抱いていた夢を手に出来るようになって、喜びを感じられずにがっかりして、心が抜け殻になったりする。そもそも肝油ドロップとはお菓子じゃなくて、ビタミン等の栄養補助食品であるらしい。

 

 チョコボールというお菓子のエンゼルマークを集めると、必ずもらえるというおもちゃのカンヅメ「キョロちゃん缶」。これも子どもの頃の憧れで、大人になったら山ほど買って金のエンゼルと銀のエンゼルを集めて、キョロちゃん缶を手にするのが夢だった。

 

 よしやろう。大人になった今やるしかない。

 

 市内のコンビニやスーパーを巡って買いあさることにした。お菓子売り場には必ずちびっ子がいる。キラキラした眼でお菓子を見つめる子どもの前で、大箱入りのチョコボールを持ち去るのはさすがに出来ない。子どもが居ない瞬間を狙ったり、売り場の棚に仕方なく数個を残したりして地道に買い集める。まるで万引きしているような気分。

 

 毎日数箱を目安に頑張って食べ続けたけど、黄色いくちばしにエンゼルマークはなかなか現れなくて、50箱も食べた頃ようやく一個目の「銀のエンゼル」が出た。

 

 3か月食べ続けて銀のエンゼルを5個集めた時は達成感があって、本当に泣きそうになった。とてもつらい3か月で2キロ体重が増えた。

 

 この記事を書くためにインターネットで調べると、同じチャレンジをする人はけっこういるようだ。さらに最近キョロちゃん缶が新しくなったらしい。また欲しくなる気持ちをぐっとこらえてカミさんに約束した。

 

「もう二度とチャレンジしないから」

 

 それでも教訓はあった。子どもの頃の夢はそのままに、そっとしておいた方が良い。