本や映画の感想書くとか言いながら初回から少女漫画の感想書きます。
記念すべき初レビュー作品は!!
『天使たちの進化論』/清水玲子キラキラ

本当は廣瀬智紀くん主演映画「セブンデイズ」の感想を書こうと思ったけど時間が経ちすぎて観た時切実に思ったことほとんど忘れているガハハ。

さて、早速本題に入ろうと思いますが、まず簡単な設定と、物語の冒頭から紹介します。
この漫画の主人公はエレナ、という美青年!
……いや、見目麗しいロボットです。しかも、「美青年」と言いましたが、正確には性別が設定されてない(無性)ロボットです。
「ロボットなら性別が無いのは当然では??」と思われる方もいらっしゃると思いますが、
この作品で男性ロボットが登場(ジャックというイケメン)するので、多分人間と男性型ロボット、(登場してないけど)女性型ロボット、無性型ロボットが共存しているのだと思います。
『天使たちの進化論』では、無性型ロボット・エレナ、男性型ロボット・ジャック、人間の女性・ルイスが登場し、彼らを中心に物語が進んでいきます。

「ジャック!赤ちゃんができてるよどうしよう!」
エレナがジャックにそう告げるところから、物語は始まります。ジャックは最初、エレナに子供ができたのかと蒼くなりますが、よく話を聞くと、ペットのオラウータン(アイコちゃん)の妊娠が発覚した、ということでした。
ホッとするジャックの傍ら、エレナはしくしく泣きます。(イケメンのため許される)
アイコちゃんに恋人がいることなんて知らなかったし、妊娠したことも隠されていたことにショックを隠し切れないのです。しかもエレナは自分が子孫を残せない存在であることにコンプレックスを感じているので、妊娠だとか受粉だとかいう事柄にはとても敏感、かつ傷つきやすいのです。
アイコちゃんに続いて、友人ルイスも妊娠したというニュースが舞い込みます。
「恋人のジャックを裏切って、妊娠した!?この尻軽女がー!!」
エレナはルイスにきつい態度をとり、二人の仲はどんどん険悪になっていく。それを見ているジャックはなんとかエレナをなだめて二人の仲を取り持とうとしますが、上手くいきません。
(ちなみに、ルイスが妊娠している時点では、ジャックとルイスの間に恋人関係は無い。ルイスは別に不義をはたらいたわけではないのですね)
そんな中、ジャックとルイスに、ある惑星に生息する蘭の花を採取する仕事が舞い込みました。(多分、人間にはできないことをやる便利屋的な仕事をしている)
事情があってルイスもその仕事に手を貸すことになり、3人は同じ宇宙船で惑星へ飛び立つのでした……

エレナは、この後も自ら悪者として立ち回ってしまいます。ルイスには当たるし、生まれてきたルイスの子供にも愛情を示さない。多くの女性は、「わがままで子供っぽい!見た目は良いけど、エレナ好きじゃない!」と思うはず。
でも、この後どんどんエレナの感情が掘り下げられていって、「あぁ~、エレナも一生懸命悩んでいるんだな~」と思います。最終的に嫌悪感は無くなりました。ハッピーエンドだし。

というか、エレナが『自分が何年経っても変われない存在』であることに積極的に悩んでいる姿を見ると、「生きるってこういうことなんだろうな」とエレナに感心してしまいました。人間は基本的に日々成長していく生き物だと思いますが、いくら日を追っても成長してない部分というのはあるもので、「あの頃から変わってないなぁ」と思ったり、何度も嫌な思い出がフラッシュバックしたり……。
短期集中で自分と向き合って克服できれば良いんですけど、そう簡単にはいかないもんです。性格を変えるのと心の傷を癒すのは時間がかかります。忙しさに流されていると自分と向き合うことも忘れてしまい、さらに時間がかかるという悪循環……。こうやって目の前の私生活でいっぱいいっぱいになって、「解決したい」「克服したい」と思いながら何もしないのは、エレナとは反対に消極的な悩みの姿勢ですよね。
エレナは(他人に八つ当たりしながらも)一生懸命悩んで、苦しむ。エレナも人間も、それを乗り越えて大きく成長するんですよね。
偉いなぁ、エレナ。八つ当たりは良くないけど。
オトナになると、『成長』って言葉はあまり聞かなくなるんですよね。学校に通っているうちは『自分をもっと成長させよう』という言葉を飽きるほど聞いていたのですが、学校を出れば、成長するもしないも自己責任。
私も仕事と疲れを言い訳にしてないでちゃんと自分と向き合わないと。何もしなかったらきっと後悔するから。
こういう「生きる」ってことを、ロボットがやるとキラキラッと光って見える。

話は逸れますが!!この単行本には表題作と、エレナのシリーズもので「千の夜」「月下美人」という短編が同時収録されています。私、「月下美人」のラストが大好きなんですよ!!この本の中で一番好き!!
「月下美人」に登場するアマンダ(人間の女性)も、「生きる」ってことをキラキラッと輝かせた人物なのですが、対照的にエレナは「月下美人」に登場するアマンダ、警官にことごとくロボット扱いされます(もう完全にモノ扱い)。
エレナはアマンダの「生きる」輝きを美しく思う一方、アマンダに(助けてくれて)「ありがとう」とも言われず、警官たちからもモノ扱いされたことに虚しさを感じます。(※私の勝手な解釈です)
ラストで、帰宅するエレナを温かく迎えるジャックに寄りかかり、ポロポロ涙を流すエレナに、私もポロポロ泣いちゃいました。
ホッとしたんだね!エレナ!
自分を愛してくれるジャックとルイスがいてくれて良かったね!エレナ!
人間だけじゃなくて、ロボットも愛が無いと生きていけないのかもね。そういうのに弱いんだって、私……(しらねーよ)
SFでロボットが中心の話でしたが、愛の温かみ、生きることの尊さを感じられる作品でした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
結構レビューって大変ですね。