いきなり感想書くのにやる気を出し始めた海野です。風邪ひいちゃったけど。

やっぱり、感想や考えたことをすぐに書かないといくら読書しても忘れちゃいますよね。大人になると特に。「これどんな話だったっけ?」ってなりますもん。

つい先日も私こんな会話をしました。

 

「タラレバ娘読んでて心抉られましたよ~。一つ一つの言葉が心に突き刺さって痛かったです!」

「じゃあ、海野さんがタラレバ娘読んで一番心に突き刺さった言葉は何ですか?」

「…………え??」

確か心に突き刺さった言葉は1巻でタラが喋るシーンで言ってた気がするけどなんて言葉だったか忘れちゃったよぼかぁ……だって1巻読んだの今年の1月TSUTAYAで借りて読んでそれきり読み返してないし。なんだっけ。確かに心を抉られたのに全く思い出せない。仕方ないから別の言葉を頑張って思い出してそれ言おう……

 

で、思いついた言葉を言うと、

「それ、海野さん共感したんですか?それに近い経験があったんですか?」

と返されました。もちろんいくらか共感したからその言葉をあげたんだけど、そんな問い詰められるなんて……とタジタジ(別に変わった質問でもない。でも態度がちょっと怖かった)

 

これ先日のデートでの会話でした。

お察しの通りこのデート上手くいかなくてその人とは多分これっきりでしょう。グッバイ私の結婚チャンス……

 

さて、デートでの失敗はさておき、他人との会話で読書、最近自分が読んだ本の話になった時、「この作品がすっごく良かったのは覚えているけど、どんな話だったか、何に感動したのか思い出せない(または説明できない)」という思いで作品を薦めようとしても、聞いている相手はタイトル以外の情報が仕入れられないので興味が湧きませんよね。興味が湧かないなら絶対その本を手に取らないし、その話を聞いている時間も、ぶっちゃけ楽しいと感じない。

本の紹介を聞いてくれる相手に楽しんでもらいたいなぁと思い、(そして今後のデートで同じ思いをしないように……デートの相手なんて今のところいないけど)また感想ブログ復活!

今度こそ復活するする詐欺にならないように(笑)感想をマメに書いていきたいと思いまーす!!

 

今回取り上げる作品は今映画も話題になっているこの作品!

 

『怒り』上下巻/吉田修一・著

 

映画を観た方がどの部分に注目しているか大変隔たりがある作品(妻夫木聡とか綾野剛とか……)らしいですが、私は映画未鑑賞です。今度妻夫木聡と綾野剛目当ての友人と観に行きます。

 

私だって思いましたよ。吉田修一様BL書いてK談社辺りで作品発表してくださいお願いしますできればハッピーエンドが良いですって……

この作品で出てくるカップルは4組(うち1組がゲイカップル)。それぞれ別々の場所、別々の恋のカタチなのですが、ある事件の指名手配犯が絡み登場人物たちの心を揺らしていく話です。

なんかどうしてもネタバレしそうなので注意です。

まず、それぞれのカップル(両想いになってない人たちもいるけど)の紹介からしていこうと思います。

 

・田代哲也×槙愛子(場所:千葉)

あることが原因で家出し東京へ行った槙愛子は、悪い勧誘に引っかかり風俗店で働くことになった(ここは説明だけ)が、しばらくして警察に保護され千葉へ帰る。父と共に暮らし、地元で働いて立ち直ろうとしていた。

ある日、父・洋平の漁業関係の職場に田代がやってきた。田代はそこでアルバイトとして働くことになる。愛子が父の職場を訪れた時、二人は出会う。田代も訳ありっぽいと洋平は感じたが、人生やり直そうとしている者同士、愛を育んでいる二人を応援していた。だが、田代の謎の多さが、愛子は本当に田代と一緒にいて幸せになれるのだろうか、と洋平に疑問を持たせる。

 

・藤田優馬×大西直人(場所:東京)

特定の恋人がいない優馬は、普段仕事と母の見舞いをしているが、完全なプライベートではゲイパーティーなどに参加しその場限りの楽しさを貪る日々を送っていた。

ある日ハッテン場で出会った直人に、初対面でセックスを強要する。事を済ませた後、優馬は直人に家に来るよう誘う。優馬自身、直人とは一度のセックスだけで終わらせるつもりだったし、普段ならこんな誘いは絶対しないのに……と思いながらも直人を泊めて、そのままダラダラと同居生活は続いていく。優馬は直人の過去をほとんど知らないが、だんだん直人を愛おしく思うようになる。

 

 

・知念辰也×小宮山泉(→田中信吾?)(場所:沖縄)

母親の事情で沖縄へ引っ越すことになった女児中学生の泉。ある日、同級生・辰也に誘われて無人島へ行く。辰也は単にごろ寝目的で無人島へ行ったので、泉も泉で好きに無人島を探索した。そこで田中と出会い意気投合する。田中が泉に「僕がここにいること、誰にも言わないで」と言ったので、泉は辰也に田中の存在を隠し、その後何度も周囲に秘密で田中に会いに行った。が、辰也と泉が本島で遊んでいる時に田中にバッタリ会い、辰也も田中の存在を知る。23歳の田中……大人の魅力に負けるもんかと辰也は最初ライバル精神剥き出し。

田中と辰也が出会ったその日、ある事件が起こり泉は心の傷を負う。それをきっかけに辰也と泉は距離が離れていくが、辰也と田中は逆に距離が近くなっていく……

 

ネタバレを抑えようと思ったら3つ目のカップルは誤解を生むような説明になってしまった。辰也と田中のBLではありません。(でも書きながら思ったけどこの2人に注目すると吉田修一先生は憎愛モノのBLも書けrなんでもないです)ちなみに、どう解釈するかは読者次第ですが、個人的には泉は田中に恋愛感情を抱いてなかったと思います。辰也が田中を恋のライバルだと意識していたので、この→は辰也の思い込みということで……

 

さて、主な登場人物達を紹介しましたが、千葉組、東京組、沖縄組のそれぞれに、素性のわからない人物がいます。(田代、直人、田中)そして物語が進むにつれて指名手配犯の特徴がちょっとずつ明かされ「あれ?犯人この人?あ、でもその特徴があるならこの人?」と読者が推測できます。そこもこの作品の魅力のうちの一つ。ですが、この話が重きを置いているのは犯人捜しではなく、過去を打ち明けない人を信じられるか、愛せるかというところです。

3組のカップルを同時並行で眺めている我々読者は勝手な憶測で犯人が誰か考えるが、それぞれのカップルには目の前に一人、疑う隙のある恋人がいるわけですから、「もしかて犯人なのか?そうなのか?もし犯人だとわかったら自分はどうすれば良い?この気持ちの行き場はどうなる?」と疑いと葛藤に苛まれるのです。

「まさか、殺人犯だなんて、そんなはず……」と周囲の人間は思うのですが、一度「まさか」なんて思うと、人間どんどん疑ってしまうもので、そして疑ってしまったら相手の一挙一動、彼と共通する犯人のちょっとした特徴が気になって仕方なくなります。

過去を明かさないのは今に始まったことじゃないのに、少しの疑念が大きく心を揺さぶる。

それでも、あなたは彼を信じられるか?愛せるか?

“信じられるか”“愛せるか”という言葉は、この作品に終始まとわりつく問いかけですが、質問の意図は以下のように考えます。

ここで言う“信じる”は、どんな状況でも「彼は犯人ではない」と断言できるということ。確かに私は彼のことについて知らないことが多いけど、今まで私が見たり聞いたりしたことで充分彼の人柄はわかるし、彼が人を殺せるだなんて思えない。

この様に自分自身で納得し結論づけられるか、ということ。

また、“愛せるか”というのは、彼が過去に人を殺めたことがあったかもしれないけど、それは現在私が彼を愛するかという問題とは関係ないということ。殺人犯かもしれないけど、私は現在の彼を愛しているし、過去がどうであっても知らないままでも良い……

という風に解釈してます。

こういう風に言葉にしてみると、どちらもすごい勇気と決断力が要る行為だよなと思います。「信じます」「愛せます」と言える自分でいたいだろうけど、いや理想の人間になるってこの状況では非常に困難でしょう。

以下、それぞれのカップルについて思ったことを書きます。

ネタバレ必須なので注意です。

 

・田代哲也×槙愛子(場所:千葉)

結論から言うと唯一のハッピーエンドカップルだけど、一番ハッピーになれたのは愛子ではなく洋平。読者が感情移入するのも洋平。

このカップルが一、番人間味がありすぎて逆に好感度ランキング最下位カップル。自分に一番似てるから?

ちょっと文句を言ってしまうんだよね。愛子が子供っぽいのがすごく気になるし、田代が人騒がせ。読者をミスリードするためだから……と頭ではわかっていても、通報のくだりのところで、「帰れないけど俺は犯人じゃない」ってせめて一言言ったらどうなの?恋人が不安になってるんだよ?(ブチ切れ)

愛子は悪い男に騙されたことがあるから田代の過去を聞いても「自分は嘘つかれているんじゃないか」と思うのはすごくわかります。(田代の過去を明かしてもそれを裏付けるものって多分無いし)

田代に関する疑いの心情は洋平をメインに書かれているし、洋平の娘を大切に思うあまり田代を信じるべきか迷うところも切実。これは「=娘が選んだ男が娘を幸せにすると信じること=娘が選んだ男を信じること=娘を信じること」なので(これは洋平が言ってたこと)、娘を信じたいけど信じられないというところで苦しんでいますが、それでこそ親なんでしょうね。

 

・藤田優馬×大西直人(場所:東京)

あの、このカップルシーンだけなぜか木原音瀬先生のこと思い出すんですけど。

そして「箱の中」の喜多川圭(攻めキャラ)と大西直人を重ねてしまうんですけど……幸薄いところとか言葉が少ない場面とか。

この二人は本当に応援したし本当に切なかった。

優馬はカミングアウトせずに生きていて、それを兄嫁に「自分に自信が無いからだ」と言う場面がありますが、これを聞いてだいたいの人は、「兄嫁の言うことは正しいかもしれないけど、カミングアウトした後自分が周囲からどう見られるか、周囲の自分に対する態度がどうなるのか想像するだけでも怖いんだから、できないのはしょうがないよ」と思うはず。私もそう思います。

ですが、この「自信が無い」というのは、文字通り「=自分を信じられない」ということにつながるわけで、洋平の公式に当てはめると、「=自分を信じられない=自分が選んだ男を信じられない」ということになるのでしょうね。

それにプラスして、直人の失踪後、優馬は保身に走る。家族のため、自分のために直人とは関係の無い人間と装う。薄情に思えるかもしれない。

けど、ここで兄夫婦に迷惑かけて関係が悪くなると、直人は天涯孤独の身。兄夫婦には一応今は「家族の一員」として扱ってもらえるけど、直人のことで迷惑がかかったらそのままの関係を続けられないから……確かに臆病者の優馬だけど、責められないよ。

直人の真相を知ってからは優馬は何度も自分を責めて生きてしまうんだろうな……

っていうか「お墓」のくだりは「良かったね!これで家族になれたね!!」と腐女子号泣シーンだったのにそれが伏線でしかも綺麗に回収されててドSでしょ吉田先生。

 

・知念辰也×小宮山泉(→田中信吾?)(場所:沖縄)

この二人だけ、「信じる」ことをしていた。というか、疑おうとするきっかけも無かった。だから、人間が他人を信用するのに無駄なモヤモヤは生まれませんでした。そして、他人を信用するまでのレールを実にシンプルに示してくれた気がします。

・出会ってから経過した時間=信頼の厚さ

そして、それに勝る、

・一緒に過ごした時間=信頼の厚さ

まるでいつも抱っこしてくれる人を母親だと思う赤ん坊のよう……

辰也と泉が田中を信じたのは世間知らずの子供だからということで説明がつきますが、沖縄の県民性(あくまで作品で描かれていることから想像して)も助けて簡単に他人を信用している気がした。余所者に優しいのは良い事だけど、いきなり素性の知れない男を泊まり込みで働かせるってすごいな、沖縄の民宿……

辰也が田中を兄のように慕っていたのに裏切られ、「怒り」が生まれた後の展開は息をのみました。

ただ、田中の「怒り」って一体何だったのか?田中の生い立ちについて少し書かれていたけど、それが、田中が常に世の中に対して怒る理由だったのか?

彼の人格がどう形成され、どう歪んでいったのか、もっと細かく描写して欲しい!!

いや、今回の話の中では不要だったかもしれないけど後日若い警察が山神のファイルを読んで~って感じの流れで説明して欲しかった!!

 

はぁっ、はぁっ、記事書くのってやっぱ大変ですね。

今回はとりあえずここまで。おそまつ様でした(※おそ松君観てません)