きっちり閉まっていなくて、僅かに開いていると非常に気になりません?
なりませんかそうですか…。
私としてはとても気になります、いや別に几帳面な訳では無いんですが。
今から5年半程前、まだ学生で名古屋に一人暮しをしていた頃の事です。弓道の試合の帰りに313系新快速に乗って浜松から名古屋に戻ってきました。
その車内で座れなかったので運転台のすぐ後ろで”マグロ”の話をしていたんです、轢死体の話を…。
その夜、ふと変な感じがして目が覚めました。
当時は6畳1Kのアパート暮しでその部屋が畳部屋だったので、布団を敷いて寝ていました。
俯せで寝ていたのですが、何故か首を大きく傾げて太腿を見るような寝相でした。
視界に入ったのは爪先の先の方に有るキッチンとの間を仕切る襖戸、寝る前にトイレに行った際にきっちり閉めた筈なのに…少し開いてません?
おかしいなぁ…と思い、眼鏡を捜そうとして視線を動かそうとしたら何故か首が動かない、いや身体全体が動かない!?
視線を外すことも出来ず襖を見続けていると、襖の向こうに”何か”が居る気配が。
気配だけならまだしも、襖の向こうからの視線を感じます。
嫌な感じがするので何とか視線だけでも外して、寝てしまおうとあがいてみました。
部屋は街灯の明かりが入り薄明るく、返って暗い部分の闇が目立ちます。
襖も街灯に照らされて青白く、僅かに開いた隙間からは漆黒の闇と嫌な視線がこちらを見ているようで…。
普段は眼鏡が無いとまともに生活出来ない位目が悪いのに、何故かぼやける事無く解りました。
”何か”こちらを見続けている目が…。
俯せで首を曲げた体勢のまま30分位襖とその向こうの”何か”の視線を見続けたでしょうか、フッと身体が動きました。
取り敢えず起き上がり襖を見てみると、確かに10cm程隙間が開いていました。
混乱した頭で私は”列車内で不謹慎な話をしたから引き寄せたのだ”とよく判らない考えを纏め、納得する事にしたのでした。
その後あの部屋には4年近く住んだのですが、それ以降は一度も襖の向こうに居る”目”に逢うことはありませんでした。
金縛りにはその後も何回か遭いましたがあの”目”だけは遭う事が有りませんでした。
そんな訳で今でも襖戸が僅かに開いていたら、きっちり閉めるか開きます。
中途半端は良くないです、その向こうに”何か”が居る事も居ない事も判らないから。