先日の手打ちうどん教室では、うどんの玉を寝かせている時間を利用してお手本を見せました。元蕎麦屋なので、手打ちうどんなど朝飯前です。麺棒に巻き付けて、パタパタと目にも止まらぬ速さで伸ばしていきます。
もっとも、蕎麦屋をやめてから十年以上経つので、腕はかなり落ちています。子供たちの目には(それほどでもない)と映ったかも。それでも、大きな蕎麦切り包丁で切る場面では、「同じ太さで切れてる!」と感嘆の声も。
トントンとリズミカルに動く包丁さばきもさることながら、見慣れない大きな包丁の迫力に気圧されたのかもしれません。何しろ、蕎麦切り包丁は35センチ×20センチ、厚みもかなりあってとても重たいです。
これを持ち歩くと銃刀法違反になりかねません。刃渡り6センチ以上は対象になります。例外は職人が仕事に使う時くらいでしょうか。それにしたって、ケースに入れるか、簡単には出せないよう厳重に仕舞わなくてはいけません。
僕はもう蕎麦屋ではありません。プロではないのです。もちろん、殺しのプロでもありません。主夫が包丁を持ち歩く理由はありません。捕まったら大変です。布と新聞でぐるぐる巻きにして、職務質問にあってもバレないようにします。
子供たちは蕎麦切り包丁に興味をそそられたようです。「ねえ、持ってみる?」と声を掛けると「持ちたい!」という子もいれば、中には怖がる子も。一人ずつ持たせて記念撮影。結局、全員が蕎麦切り包丁を持つ体験ができました。
蕎麦屋をやめるときに、包丁は何本も持ち帰りました。大きな牛刀は刃渡り30センチ以上あります。その包丁は出張うどん屋さんの時に活躍します。多い時は700人前のネギを、何時間もかけて切るからです。
普段は大小三本を台所に置いて使い分けます。砥石も中砥と仕上げ砥を使って砥ぎます。ネギやキャベツを薄く切る時の爽快感はたまりません。切れない包丁はストレスになります。良く切れる包丁は、幸せな主夫生活のこつです。