黄砂の予報が出た日の朝。寝ぼけ眼で居間へいくと、テーブルの上に美しい妻のメモがありました。「黄砂が来るから、洗濯物は中に干すよ」黄砂と言われてもピンときません。試しに外へ出てみると、車の上に白く積もっていました。
フロントガラスを指で擦ると、ざらざらとした砂が付きます。目を凝らしても黄色には見えません。これがたくさん積もると黄色くなるのでしょうか。これだけの黄砂が洗濯物の上に降りてくると想像するだけでぞっとします。
鹿児島に住む友人ダイちゃんの話を思い出します。「風向きによっては、洗濯物を干せない日が続きますよ」桜島の火山灰のことです。噴火活動は何十年も続いていますから、その暮らしぶりは大変なことと想像できます。
コロナ前に鹿児島旅行をした時、桜島を車で回りました。ちょうど東側を走っていた時です。にわかに噴煙がひどくなって真っ黒な煙の塊りが後ろから迫って来ます。パニック映画さながら、慌てふためいて逃げまどいました。
黄砂はゴビ砂漠や黄土高原から飛んで来ます。砂漠で台風並みの突風が吹いて、黄土を空高く舞い上げます。砂漠ができたのは遥か昔ですから、日本にも黄砂が積もったはずです。それが、埴輪や埴生の元になった黄土かもしれません。
温暖化現象で砂漠が拡大して、黄砂も増えているような気がします。ところが、最近の研究によると気温の低くて乾燥した方が、黄砂の舞い上がる量も多いとか。何もかも温暖化のせいにするのは間違いかもしれません。
日本では、黄砂を中国のせいにして迷惑がっています。でも、中国西部やモンゴルの人の方が、はるかに困っていることでしょう。砂漠を減らす方法は、木を植えるしかないと思いますが、手を尽くしているんでしょうか。
黄砂は栄養分も運びますから、積もれば土地が肥えるかもしれません。でも、そこまで行くには何万年もかかりそう。僕らが生きている間は、車に付いた黄砂を洗い流したり、洗濯物を中に干したりする暮らしが続きそうです。