孫娘たちと過ごす福岡滞在のフィナーレは、花館山温泉一泊旅行でした。車で一時間半の近場です。都会の喧騒を抜けると周りは田んぼや畑ばかり。のどかな田園風景が広がります。山を登るわけでもなく、海へ出るわけでもなく。
そうこうするうちに、およそ温泉など湧き出そうもない小高い丘の上に大きな建物が見えてきました。目を凝らすと花立山温泉という看板が読み取れます。玄関のすぐ前に車をつけても、お出迎えはありません。親子三代六名様御一行の到着です。
玄関を入るとロッカー式の下駄箱があります。まるで銭湯です。戸惑いながら靴を入れロビーへ足を踏み入れると、そこは難民キャンプのような人だかりです。受付には長い行列ができていて、紛れもなく銭湯です。
美しい妻と目を合わせて「銭湯じゃん」とつぶやきます。娘はどこかと探せば、勝手知ったるとばかりに別のカウンターへ向かいます。そこが旅館のフロントのようです。ほどなく受付を済ませた娘が「そっち」とエレベーターホールを指差します。
エレベーターホールまで行けば、先ほどの難民キャンプの雑踏はどこへやら。ようやく旅館へ辿り着いた気分になりました。僕ら夫婦と上の孫娘で一部屋、娘夫婦と下の孫娘でもう一部屋に別れます。まあまあ値段相応の部屋です。
まずはトイレを覗いて、ウオシュレットが付いているのを確かめ一安心。ここは部屋付きの風呂かと扉を開けると、何と掛け流しの露天風呂です。部屋ごとに露天風呂がついているとは、まるで高級旅館に来たようです。
早速、下の孫娘も連れてきて、おじいちゃんと孫娘二人と温泉に浸かりました。さすがに真冬の露天風呂は、湯に浸からない頭が寒いです。眺める景色は畑と田んぼ。「田園」のメロディが浮かびます。ベートーヴェンじゃなくて安全地帯の方です。
うろ覚えの歌詞をつぶやきます。「幸せ一つも守れないで・・」この孫たちのためなら何でもしたいと思いますが、離れて暮らして何ができるか。「生きていくんだ・それでいいんだ・・愛はどこへも行かない・・」まあいいか。