車椅子バスケット3X3の会場になった浜名湖競艇場へ着くと、特別室へ案内されました。すでに、選手たちが部屋に入っていました。数人が顔を寄せて何やら相談しています。ゲームの作戦ではなくて、ボートレースの投票を相談していたのです。
部屋の隅にはキャッシュレス投票機も設置してあります。窓口へ舟券を買いに行かなくても、居ながらにして投票できるというわけです。オシャレなノミ屋みたいなものです。便利ですが、のめり込むと歯止めがかからない恐れがあります。
若い頃に何度か競艇場へ足を運びました。実際に舟券を買って賭けの真似事をしました。賭け事への好奇心は競艇にとどまりません。競馬、競輪、麻雀、パチンコなどなど。一通り手を出してみましたが、どれも身につきませんでした。
勝って味を占めるわけでもなく、負けてもムキになって取り返そうとは思いません。どうして、賭け事に手が染まらないのか考えてみました。結論から先にいえば、自分の人生自体が大きな賭け事だと気づいたのです。
飲食店の廃業率は、2年で50パーセントとも、5年で90パーセントともいわれています。開業してもほとんどが5年と持たずに潰れるということです。まさしく、途方もなく大きな賭けに打って出るということになります。
そんな話を知ってか知らずか、28歳で蕎麦屋を開業しました。当時はまだ若気の至りで、根拠のない自信に満ちていました。しかし、同じフロアの食堂街でも周りの飲食街でも、毎年のように開店と廃業が繰り返されます。
次第に、恐ろしい自由競争社会の真っ只中にいるという実感が湧いてきます。一つ間違えば、自分の蕎麦屋も消えることになるという怖れです。新作メニューを出しては、三つに二つは外れて泡と消えます。小さな賭けを繰り返すようなものです。
気がつけば蕎麦屋も30年続きました。世間の評価はさておき、お金以外のものは全て手に入れました。ここまでの賭けは大勝ちです。百歳まで生きると決めたので、もう一勝負できるかもしれません。さあ今度は何をしよう。