木漏れ日の海 -30ページ目

木漏れ日の海

フィギュアスケートの羽生選手を応援しています。
プログラムの感想を中心に語ります。

ファンタジーオンアイス幕張・舞台裏SPのなかで、羽生君の口から「if...」のことが明らかになった。

 

基本の振付を羽生君がして、MIKIKO先生のアドバイスでブラッシュアップしたとのこと。

 

if...」が今までのフィギュアスケートのプログラムとは一線を画していた理由がわかったような気がする。

 

羽生君自身の振付ということで、エモーショナルかつ斬新。

であると同時に、MIKIKO先生のアドバイスが入っているので、作品として客観的にどう見えるかという視点で、洗練されている。

 

これは豪華かつ最強のタッグではないだろうか。

 

これは想像にすぎないけど、羽生君のほうからMIKIKO先生にアドバイスをブラッシュアップを依頼したのではないかと。

そう考えると、羽生君は、どうすれば良い作品ができるかということを、冷静かつ客観的に見ているのだなと。

 

昔、パトさんのスケーティングをガン見していた、あの貪欲さを思い出す。

成長のために、良い作品にするために、人の力を借りることも含めて、できることは全部やる。

 

そういう貪欲さや執念みたいなものが、必要なのだなと、改めて思った。

2023年7月14日、「GIFT」の世界配信が始まった。

 

世界各地のファンの皆さんに「GIFT」が届くのだと思うと、感慨深い。

 

私は、羽生君と同じ日本人なので、ショーやライビュを見に行けるし、テレビや本でも羽生君の言葉を翻訳せずにそのまま受け取ることができる。

 

そのありがたみを、ついつい忘れているけど、海外のファンの皆さんにとっては、待望だったのだろうなと思う。

 

フィギュアスケートのライトファンだったころ、プルシェンコさんのライトファンだった。

きっかけは、プルシェンコさんが10代のころに出場したNHK杯を見たこと。

 

それまでは、自分のなかでは、「フィギュアスケート=女子」だったけど、それ以来、男子フィギュアも見るようになった。

(そのおかげで、羽生君のフィギュア選手としてのすごさが分かるようになった)

 

当時、プルシェンコさんにはヤグディンさんという、これまた素晴らしい選手がライバルとして君臨していて、2人の息つまる勝負を見ていた。

 

そんな感じで、プルシェンコさんのライトファンではあったけど、男子も女子も、基本的にフラットに見ていた。

日本人選手も外国人選手も、素晴らしい演技を見せてくれる選手に心の中で拍手をしながら。

 

ミシェル・クワン

サーシャ・コーエン

浅田真央

キム・ヨナ

 

エフゲニー・プルシェンコ

アレクセイ・ヤグディン

 

他にも素晴らしい選手がたくさんいたけれど、上にあげた選手たちが、私にとってはフィギュアスケートのスターだった。

 

そして、そこに現れたのが、GOAT・羽生結弦ということになる。

この羽生君が、同じ日本人だった。

 

もし自分が日本人でなかったとしても、羽生君のファンになっていたと思う。

これまでのフィギュアスケートのスターたちを凌駕する存在に、引きつけられただろう。

 

だから、想像のうえだけど、海外の羽生君ファンの方たちの気持ちが、なんとなくわかる。

大好きなフィギュアスケート界に現れたGOATだから、自国の選手じゃなくても好きになるし、応援するだろうと。

 

今回の「GIFT」世界配信は、海外のファンにとっては、待望だっただろう。

日本のテレビ局にゆだねて日本国内だけのものにせずに、ディズニープラスによって世界中に配信した羽生君サイドの采配は素晴らしいと思う。

 

海外のファンの気持ちも、汲み取ってくれている。

それがファンとしては、嬉しい。

ネットで、どなたかが、羽生君は「ガラスの仮面」の亜弓さんとマヤちゃんを足したような存在とコメントしていて、「なるほど」と思った。

 

往年の名作少女漫画「ガラスの仮面」では、2人の少女が演劇への情熱を熱く燃やす。

 

亜弓さんは、美貌で頭脳明晰で、身体能力にも恵まれているけど、ものすごい努力の人。

幼いころから努力を重ねて、自分を磨き上げてきた。

 

一方、マヤちゃんは天性の演技力を持ち、見る人を、自分が演じる世界に一気に引き込む。

ものすごい集中力で役に入り込み、憑依したかのように、役の人物になりきる。

 

そして、亜弓さんとマヤちゃんは、お互いのことを「天才」だと思い、お互いに相手のことを羨望しているし、怖れている。

 

羽生君を見ていると、素質に恵まれているうえに、誰よりも努力するところは、亜弓さんのようだと思う。

また、プログラムによって顔つきまで変わり、プログラム世界に深く入り込んで、人を引きつけるところは、まるでマヤちゃんのよう。

 

2人の「天才」の資質を、その一身にそなえている。

 

それに加えて、2人の少女が持ちえない資質を持っている。

それは、自分で自分をプロデュースできるところ。

 

自分で曲を選び、自分で振付をする。

さらに、プロフェッショナルな方々の力を集結して、ショーを組み立て、自ら演出する。

 

これは表現者として、最強なのではないだろうか。

羽生君のプログラムを初めて見るときは、いつも新鮮な驚きにあふれている。

なかでも、特に初演が印象的だったプログラムたちをあげてみる。

 

まずは「バラード第1番」。

初めて見たのは2014年のGPF。

 

これは初演ではないけど、自分が初めてみたときの衝撃を思い出してみる。

このときに、羽生君のスケートを初めて見た。

初めて見たのが「バラード第1番」というのも、今思うと贅沢な気がする。

 

初見の感想は「理想のフィギュアスケート選手、理想のジャンプ、理想のプログラムを見た」というもの。

今までに見たどの選手、どのジャンプ、どのプログラムよりも素晴らしく、「こんなすごい選手がいるなんて」とびっくりした。

 

ファーストコンタクトの衝撃か、刷り込みか、もともと好きな方向性だったのか、その全てなのかわからないけど、「バラード第1番」は、今でも1番好きなプログラム。

 

またいつか、フルで見てみたい。

 

初見の衝撃というと、次に体験したのは「SEIMEI」。

アイスショーで初披露されたのだけど、羽生君が日本テーマのプログラムを滑ってくれたということが、無性に嬉しかった。

 

今となっては、競技プロでもショーのプログラムでも、日本の曲をたくさん滑る羽生君を知っている。

だけどあの時は、競技プロで日本テーマ、しかも今まで誰も滑ったことがない曲ということで、衝撃的だった。

 

しかも、笛の音などが入っていて、新しい曲ではあるけど、日本の伝統を感じさせる曲。

また、衣装も独創的で素晴らしい。

 

羽生君が日本を大切に思ってくれているのだなと感じられて、同じ日本人として嬉しかった。

しかも「SEIMEI」はその後、世界記録を更新し、平昌の金メダルをもたらしてくれた。

プロになってからも折にふれて披露される、大切なプログラム。

 

次に初見で衝撃を受けたのは、「春よ、来い」。

初演は2018年のファンタジーオンアイス神戸。

 

あふれる想いが乗せられたそのスケートは、時に激しく、時に静謐で、そして、どこまでも優しかった。

そのプログラム世界に魅了された。

 

そして、最新が「if...」。

フルバージョンを初めて見たのは、幕張最終日の現地。

 

曲がわかっていたので、聞きこんでから行ったのだけど、始まってみると曲が耳に入ってこないし、断片がかろうじて思い出せるだけ。

現地では、ジャンプが入ったのかすら、分からなかった。(ちゃんと見ていたはずなのに・・)

 

遠目だったので細部はよくわからなかったけど、遠くでエネルギー体がスパークしているのを注視しているうちに、あっという間に終わった。

 

すぐには感想がでてこなくて、どうとらえたらよいのか分からなかったけど、スタオベで立ったときに足が震えていた。

思考よりも先に体が反応した感じで、不思議な体験だった。

 

家に帰ってから録画した放送を見て、「すごいプログラム」だと確認した。

スケートの技にそんなに詳しくないのでよくわからない部分もあるけど、おそらく、「if...」はすごい技が詰め込まれているプログラムなのだろう。

それがダイレクトに「すごさ」として響いてくるのだと思う。

 

あと、羽生君のセルフコレオが刺さっているのかもしれない。

if...」は頭でわかるというよりは、直観的にそのすごさを訴えてくるようなプログラムなのだ。

 

こうして振り返ってみると、初演の衝撃というのは、大切な思い出として心に残っている。

これからも、そんな出会いが待っていると思うと、本当に羽生君のファンは幸せだと思う。

if...」は、羽生君の今までのプログラムの中でも一線を画す。

 

なぜ今までのプログラムと違うのかを考えてみると、「if...」は 競技プロとエキシプロの良さを合わせ持つからだと思う。

 

羽生君の競技プロ、とりわけショートプログラムは、とにかく技の密度がすごい。

ジャンプの入りと出が複雑なだけでなく、つなぎやステップもみっしりと詰め込まれていて、一瞬たりとも目が離せない。

 

if...」について、羽生君はインタビューで、「詰め込んで、どんどん色んなことが進んでいくプログラム」と語っている。

if...」は今までのエキシプロにはない、技の密度の高さがある。

 

そして、エキシプロの良さも持つ。

それは、感情表現の豊かさ。

プログラム世界に入り込んだ感情表現は、今までエキシやショーで羽生君が見せてきた真骨頂。

それが「if...」にもいかんなく発揮されている。

 

そして、最後に付け加えたいのは、このプログラムの独創性。

 

正式に発表されていないけど、このプログラムは羽生君のセルフコレオだと思われる。

羽生君セルフコレオの「阿修羅ちゃん」との共通点があるし、今まで振り付けてもらっていたプログラムとは明らかに別物だから。

 

振付としてはダンサブルなところに目が行きがちだけど、足元のステップワークや音の取り方も独創的。

クロスなしでありつつもリンク上を移動していくところ(これは「阿修羅ちゃん」もすごかった)も。

 

さらに、プログラム全体のメリハリがきいている。

 

冒頭などでゆっくりめの移動で音ハメの動きをしているかと思えば、「もしも」のところで一気に加速する。

さらにラップパートでは激しいダンス。

プログラム全体を見てみると、めまぐるしくシーンが移り変わり、「一本調子」というのとは対極にある。

 

こうして見てくると「if...」は、プロになったからこそ生まれたプログラムだということがわかる。