番組の冒頭で、光一さんが見守る中での羽生君の練習シーンをたっぷりと見せてくれた。
シェアプラでもたっぷりと見れたけど、こちらは最新の練習シーンなので、貴重でありがたい(今年の初夏ぐらいかな?)。
1時間、ほぼ休みなしで、高難度ジャンプを盛り込んだ練習をする。
これは、シェアプラのときにもびっくりしたのだけど、羽生君の練習は、かなり密度が濃い。
氷にのってから、徐々にギアを上げていくのだけど、ギアが上がったあとは、そのままの状態でほとんど間髪いれずにジャンプやスケーティングを続ける。
シェアプラで「SEIME」を滑ったときは、曲が隙間なくリプレイされていて、2回目、3回目に滑るまでに曲を止めたりインターバルを入れていなかったことに驚いた。(過去のインタビューでも何度も通しでプログラムを滑っていると言っていたけど、こんなに間髪入れずに滑っているのを目の当たりにして、驚いた)
もちろん、調子の良しあしがあるので、いつもこのやり方をしているわけではないだろうけど、調子の良いときは、これと同じように間髪入れずに滑りこんでいることがわかる。
今回、インタビュー前に光一さんに練習を見てもらえたのは、とてもよかったなと思う。
そしていよいよ、対談が始まる。
印象に残ったところを。
調子が悪いときに練習すると、脳に悪い記憶が蓄積されてしまうので、調子が悪いときにはこういう追い込んだ練習をしないという話。
いいフォームだと、使う酸素の量が減るという話。
これらの話を聞いて思ったのは、羽生君はスポーツや心理に関する最新の理論を学んでいて、それを自分の中に落とし込んで日々の練習で実践しているのだなということ。
MIKIKO先生出演の「NHKアカデミア」を見た時にも思ったのだけど、一流の仕事をする人というのは、自分のやっていることを論理的によくよく考えていて、そういう深い思考と実践が融合しているのだなということ。
「ただなんとなく」とか「天性」だけでは、決して良い仕事ができないのだということを感じた。
そして、NHK杯「SEIMEI」を羽生君自身の言葉で振り返る。
「今これをやるとなると、もっと目線の位置とか届ける方向みたいなものが全然違うくなるんで」
「このころだからこそできなかったってのもあるし、プロだから出なくなってしまった、この緊張感みたいなものもあるんですよね」
「どれだけ世界観を大事にできるかみたいなものがあるので」
このあたりの話を聞いて思ったのは、プロに転向してからの羽生君は、実は貪欲にすべてを出そうとしているのだということ。
「プロローグ」と「GIFT」での6分間練習+競技プロ披露にはとても緊張させられた。
それを見て「この手があったか」と舌を巻いた。
競技を引退したら、6分間練習もフルの競技プロも見れなくなるし、ヒリヒリした緊張感を味わうこともなくなる。
それが残念だと思っていたので、プロになってからも、それらを実現したアイデアと実行力に驚いた。
そして、プログラムの世界観を大事にするという意味においては、プロになってますます進化している。
「あの夏へ」や「いつか終わる夢」の異世界感はすごい。
私がひそかにプロになってからの羽生君の矜持を強く感じるのは、4回転やトリプルアクセルを変わらず実施していることもさることながら、ショーやAICE STORYのプログラム中で、ジャンプのヌケや転倒がほとんどないこと。
これらがあるとプログラムの世界観を壊してしまうので、ヌケや転倒がないように、徹底的に練習し、プログラムを練りこんでいるのだなと思う。
そう考えると、プロになった羽生君が披露しているのは、「緊張感」と「世界観」の両方を追い求めた究極のスケートということになる。
本当にその進化は留まることを知らず、光一さんの愛とリスペクトある「何目指してんねん」という言葉が響く。
目指しているのは、全てを盛り込んだ究極のスケートなのかもしれない。
次に印象的だったのは、光一さんのこの言葉。
「練習を見せてもらったときに感じたのが、後半は、もしかしたら体力がある時に比べると、きついぞと思ってやってらっしゃるんだろうけど、そのきついなと思われてる時の動きの方が、僕は素敵に感じてしまったんです」
羽生君は競技時代にも、追い込まれたときに爆発的な魅力を放ったことが幾度もある。
(実は3月の「notte stellata」の時も、「GIFT」から間があいてなくて体力的にきつかっただろうし、精神的にもきつかったはず。その中で、ものすごい「美」を見せてくれたと思っている)
追い込まれたときに、研ぎ澄まされた生命力があふれ出し、羽生君の持つ本質がキラキラと輝く。
そういう稀有な人だと思う。
(これは技術が正統で、本質が美しくないと絶対にできないことだと思う)
最後の光一さんの言葉が嬉しかった。
「すべては伝わってないかもしれなけど、それがかっこいい、美しいっていう風に感じてはいると思いますよ。面白いなあ」
確かに私は、羽生君がやっていることのすごさとか、意識していることの100分の1ぐらいしか理解していないのかもしれない。
それでも、「かっこいい、美しい」というのを感じている。
それをこうやって光一さんに言ってもらえて、次の羽生君の言葉を聞くことができた。
「面白ですね。ちょっとずつなんですけどね。でもなんか、これだから表現やめられないなって思うんですけどね」
やっぱり「表現」というのは、やる方と見るほうのキャッチボールなのだと思った。
「スイッチインタビュー」は第1回から盛りだくさんの内容で、とても見ごたえがあった。
次回も楽しみにしている。