糸井さんとの対談・第5回での羽生君の言葉。
「ぼくが目指してたのは、ある意味では、
ジョニーさんが4回転までやれなかった世界、
プルシェンコさんが4回転を3回跳んだりとか、
4回転3回転3回転とか跳んだりとかしながらも
やりきれなかった世界で、そういうことを
ぼくは競技時代にずっと追い求めていて、
いまもそれが続いてるっていう感じはしてます。」
この言葉を読むにつけ、「破滅への使者」が鮮やかに脳裏に浮かぶ。
このプログラムは、競技時代から今もずっと続いている羽生君の挑戦が具現化したものだと、ひしひしと感じる。
6分間練習から「破滅への使者」の本番に至るまで。
そこに流れている時間は、競技時代の本番での時間と全く変わらない。
最高の難度のジャンプを、最高の美しさで決める。
1つのプログラムの中に最高のエレメンツを詰め込んで、プログラムを完成させる。
そのために注ぎこまれる最高の集中。熱量。
挑戦に生きる姿勢。
本当に羽生君は変わらない。
横浜最終日の「破滅への使者」を見る度に、熱い感動を受け取る。
それにしても、羽生君のスケートを見ていると、表現者としての側面とアスリートとしての側面、この2つを同じぐらいの重さで持っているように感じる。
そして、それがある意味での「安定感」の秘訣のように思える。
表現者の面というのは、それだけを持っていて、それだけを突き詰めるとすると苦しいような気がする。
そして、アスリートとしての面も、それだけでは行きつく先に限りがある。
ところが羽生君はこの2つの面を、どちらも大きな熱量で持っている。
だからこそ、どちらかだけに引っ張られずに、安定して燃焼していられるというか。
「破滅への使者」、特に横浜公演での滑りを見てそう思った。
アスリートとしての面が、羽生君を支えている部分もあるのかなと。