「ギレン総帥から出た作戦案“システム”のことについて概略の
説明をする!」
説明をする!」
ダルシア首相は、手短にシステムについての議案の説明をする。
出席する幕僚のうち、ここで初めて知るものが大半である。
密閉型コロニー内に太陽エネルギーを凝縮させて一方から放出す
る。原理はそれだけのことであるが、旧型のコロニーでさえ直径
は6キロ。全長は30キロ余りある。そのコロニー内をアルミ・
コーティングをし、さらに電磁界でエネルギーをためる。そして
直径6キロある一方の外壁を瞬時にして開く。巨大であるが故に
その工事は、たとえ既存のコロニーを使うにしても時間がかかる。
が、予定通りの威力を発揮するとすれば、直径6キロのレーザー
を発する巨大兵器となろう。
うまく照準を得られれば、一戦闘大隊、いや、連邦軍の総兵力の
半分を一瞬にして壊滅させることも夢ではない。このプランは、
国力が疲弊してきたジオンにとって極めて魅力あるプランであっ
た。その作戦コード・ネームが“システム”。
「内閣は国民の損失を最小限に留め、かつ早期戦争終結を望むも
のであります。この観点からシステムの採用を閣議で決定致しま
した」
予算の問題、旧型コロニーに住む300万人の疎開、産業界の協
力を得ることを含め、この作戦は国家的決議のもとに成されねば
ならなかった。
「フン、いまさら決議だと!?笑わせるな」
「それを言うな」
さすがにギレンはドズルを制した。そう、システムのための疎開
はすでに完了しているのだ。
ダルシア首相が一段と声を張り上げた。
「それ故に、右の議案の性格上、この席において各位にご審議願
い、その上で、デギン公王の認可をいただきたく、システムの議
案を上程する次第であります」
ダルシア首相は三段の階段を上り、公王の傍らのテーブルにファ
イルを置き、そのテーブルを公王の前に移動させる。
「あやつは、儂の汚点だ。好きにやってよい」
ダルシアは一瞬間、我が耳を疑った。私室であってもデキン公王
がこう言ったことはなかった。老いたな、とは思いつつも、ダル
シアは探るように眼鏡の奥のデギンの瞳を見返した。が、その時
公王の手はサインのためにペンを取りにゆき、ダルシアにその瞳
の奥を探らせはしなかった。
「ありがとうございます。公王陛下」
ダルシアもまた微笑を返して応ずると、踵(きびす)を返して、
ギレンの席へ歩み寄ってゆく。軍服の上にのるギレンの首はうし
ろからみると、ひどく太く、一刀両断にはできそうもないように
思えた。
ファイルを示して、ギレンにデギン公王のサインを確認してもら
う。
「ン。ご苦労」
やや振り仰いだギレンの瞳は、いつものことなのだが射るように
冷たい。が、この時は唇がかすかにゆるみ上機嫌であることを示
していた。
「はい」
ダルシアは左右のドズル、キシリアにもファイルを示してから末
席の己の席へ戻っていった。
「総合的な作戦会議は、一時間後に統合参謀本部で行う。貴下ら
の賢明なる論議に対して、不肖、ギレン・ザビ、心から感謝の意
を表明する次第である。
地球連邦とて疲弊していることは、わが軍と同じである。が、で
ある。ここでシステムの運用を認可されたことにより我が軍は5
個師団!いや、10個師団の戦力を得たと断言してよい。
今や、彼我の戦力バランスは我が方に大きく傾いたと私は自負す
る。そして、またこれは諸君らの自負、ジオン公国国民一人ひと
りの自負としてよい。すべからく、国民一人ひとりの勤労と汗の
結晶の成せる業であるからだ。
システムを中心とした作戦が以後の基本である。貴下らは、この
事を肝に銘じ、瞬時に地球連邦を叩き、我がジオン公国の名を高
からしめる事を望む。
貴下ら家族、貴下らの栄達を心から望み、いっそうの奮起を期待
する」
デギン公王は、ギレンのこの演説の間に席を立った。