その自動車が放置されたのは、今から6ヶ月前のことであった。
その場所は、清原浩司の自宅の前で、私道として使っていた浩司
の所有する土地だった。
自動車の種類は高級車として名高いベンツだが、相当乱暴に
扱ったのか、ゴミといってもいいくらいのオンボロ車で、塗装は
はげ、ヘッドランプは片方が割れていた。
浩司は、何とか放置した者を見つけ出して早く片付けさせよう
と思い、車のドアに手をかけると、鍵はかかっておらず、すぐに
ドアが開いた。社内のコンソールボックスを開けて中を見ると
車検証が出てきた。
それによると、所有者は千葉顕治といい、有効期間の満了する
平成23年3月8日となっていて、すでに車検が切れていた。
浩司は、早速車検証にあった千葉の住所の記載からその電話
番号を調べ、電話をしてみると本人が出てきた。
「あなた、人の家の前に車を放置したでしょう。すぐに持って
いってください。通行の邪魔になって仕方ないんですよ」
浩司が文句をいったところ、
「あの車は、車検が切れているし、バッテリーも上がってしまって
いるんで、動かせないんだ」
と、千葉はしゃあしゃあとしている。
「それじゃあ、レッカー車を頼んで持っていけばいいじゃないか」
「そんな金はない。あれはもう捨てたんだ。やりたきゃ自分で
やればいいじゃないか」
「なんで、うちのほうでやらなきゃならないんだ。あなたが、後で
その金を払うと確約するなら一時立て替えてやってもいいが、
どうかね」
「冗談じゃないよ。そんな金は払うつもりはないね。今忙しい
から電話を切るよ」
こうして一方的に電話を切られてしまった。もう一度すぐに電話
してみたが、電話の呼び出し音が続くだけで、千葉は電話には
でなかった。
その後も何回か千葉に電話をしたが、今度は「この電話は現在
使われておりません」という案内が流れるだけで、千葉と連絡
をとることは不可能となってしまった。
浩司は、千葉の住所を手掛かりに、その家を探したが、いつ
訪ねても留守であった。この放置車両を撤去するにはどうしたら
良いのか。