百合や子供たちは、日比谷帝国病院や香山医師に対して、金額
や名目はケースによって異なりますが、損害賠償を請求できる
場合が多いと思います。
まず、「日比谷帝国病院の香山医師が十分な検査をしていれば
胃ガンを早期に発見でき、かつ、その段階で手術をすることで
ガンは完治した」ことを立証できるということが前提です。
その上で、健次郎が死亡しなければ得られたであろう収入
(逸失利益)や、死亡に対する慰謝料も請求することができます。
他方、日比谷帝国病院における検査の際には胃ガンは発生して
いなかったり、当時の検査水準では、どのような検査をしても
胃ガンは発見できなかったのであれば、香山医師の過失はないこと
になり、損害賠償は請求できないことになります。
同種の事例では東京地方裁判所は、最初の検査の段階で胃ガンは
すでに発生していたと認定した上で、病院側が切除した胃を
病理組織学的検査に付することが容易にでき、これをしていれば
胃ガンを発見できたのですから、これを怠ったことに過失がある
としました。
しかし、同時に、その段階で胃ガンを発見して手術をしたと
しても、ガンが再発して死亡する蓋然性が高かったとして、死に
対する因果関係を否定して、死亡したことによる損害の賠償を
否定しました。つまり、医師のミスはあったが、ミスをしなかった
としても死亡していたと考えられるから、死亡したことに対する
責任は問えないとしたのです。
ただ、医師がガンを早期に発見していれば、適切な治療を受けて
ガンが治癒し、生存する可能性があったのに、この機会を奪われた
ことについての慰謝料として500万円の支払いを命じています。
なお、平成11年2月25日、最高裁判所は「医師が適切な
治療を行うことで延命できた可能性さえあれば、医師の過失と
死亡との因果関係は認められる」という趣旨の判例を出しました。
この判例に基づけば、本件のケースでも医師の過失と死亡の
因果関係が認められる可能性が高いと考えられます。