まず、尚志がどうしてもこのマンションを出て行きたくないと
いうのであれば、賃貸借契約の更新を要求して住み続けることが
できます。
つまり、出ていく必要はありません。
貸主としては、契約の更新を拒絶して、立ち退きを要求するには
「正当事由」がなければなりません(借地借家法28条)。
「正当事由」の有無を判断するに当たっては、貸主側の事情
(たとえば建て替えを必要とする理由など)と、借主側の事情
(たとえばこのマンションに居住する必要性、転居先の有無など)
の他、この賃貸借関係から生じた一切の自由(たとえば契約締
結時の事情など)を総合的に比較検討することになります。
そして、立ち退き料というのは、貸主が借主に立ち退きをして
もらうに当たって払うお金の事で「正当事由」があることを補強
するひとつの大きな要素です。
つまり、立ち退き料を多く払えば払うほど、貸主は立ち退きを
求めやすくなるということです。
では、尚志が、立ち退きを承諾したとして、立ち退き料はいくら
くらいもらえるのでしょうか。
一律に論じることは難しいのですが、本件の場合、「正当事由」
の存在を認めることは相当困難なケースですから、賃料と比較
して相当高額な立ち退き料をもらえると考えてよいでしょう。
さらに踏み込んで言うならば、尚志が、立ち退きを納得できる
だけの金額(1千万円でも2千万円でも構わない。あくまでもこち
らの主張である)を自由に提示して、貸主がこれを承諾しなければ
更新を主張して居住し続ければよいのです。いずれにしても百万円
をくだることはないでしょう。