日本では「同じ死罪なら、切腹の方がはるかに名誉ある
死である」と受け止められてきた。ある種の美意識が働いて
いたのだろう。
切腹は近世以降、武士階級に科せられる処刑の方法として
用いられるようになったが、世界中でこのような処刑方法
があるのは日本だけである。
切腹は庭で行うのがもっとも礼にかなうものとされていた。
白布の幕を張り巡らし、介錯人、介添人、検死役などが
立ち会う。
そのときになると、切腹人が所定の位置に静かに座る。
白鞘の短刀を抜き身にし、柄を奉書紙で巻く。切っ先
だけ少し出して逆手に取り、左腹に突き立て、そのまま
一気に右腹へ真一文字にかき切り、切っ先を上に向けて
はね上げ、今度は上に向けてかき切る。
そのあと、介錯人が切腹人の首を切り落とすのだが、苦痛
を長引かせないために、切腹した直後に首をはねるのが
礼法にかなうとされていた。
ドラマでは、作法どうりに腹を切るシーンがあるが、実際
には、死の恐怖から常軌を逸し、暴れまわる場合も多々あった
ようだ。
こうした愁嘆場を避けるため、立会人は、切腹人を座らせ
ると着衣の裾を笄(こうがい)で素早く留めて、身動きできない
ようにしてしまう。そして刀を切腹人の手に持たせるやいなや
一瞬にして首を切り落としてしまったようだ。
精神修行を積んだ武士にとっても、自らの腹に刀を突き刺す
のは簡単なことではなかったのである。