相撲は両者が組み合ったり、突いたりして戦う。
すなわち互いに体を触れ合う。
ところが両者がまったく触れあわずに勝負が
決まったことが、かつて大相撲の取り組みにあった。
明治43年夏場所8日目、大関の太刀山と東前頭
8枚目の八嶋山の1戦においてである。
太刀山はのちに第22代横綱になるが、彼の突っ張り
はものすごく、一突きで大抵の相手は土俵外に
飛ばされた。
八嶋山は166cm・83kgの小柄な力士であった。
太刀山の突っ張りを受けたら、それこそ体がどうな
るかわからない。八嶋山は恐れた。
土俵に上がった彼は太刀山にひとにらみされ、ま
すますおじけづいた。
そこで制限時間一杯となって立ち上がると、組みにも
突きにもいかず、じりじりと後退、そのまま土俵を
割ってしまった。
太刀山が勝ち、決まり手は「にらみ出し」。
そうした決まり手は実際にはないのだが、太刀山に
にらまれて土俵を割ったことから、特別に
「にらみ出し」とされた。