かまいたちの夜の作者、我孫子武丸が書いたこの推理小説、微妙である。※ネタバレ全開
この小説、警部補とその弟と妹の3人兄弟が屋敷で起こった殺人事件を解決に導く推理小説で、8の字屋敷という
変わった家に住む建設会社の副社長が自宅でボウガンによって殺され目撃証言により使用人の息子の大学生が
疑われ、被害者の父親のボケ老人や被害者の妻の飲んだくれ、結婚は野蛮人がするもの、と主張する被害者の弟、
カラオケで荒城の月を歌う真面目な秘書などが登場し全体的にユーモアのあるテイストで捜査が進んで行くのは
まあまあ面白く、第2の殺人では足場のない空中からボウガンが発射されて殺されたように見えるという不可解な
事件が発生したり探偵役の警部補の弟が論理的に推理をしていくのは良いのだが、最後の推理説明はあらゆる
パターンを潰していくという方法で回りくどくディクスン・カーやエラリー・クイーンの作品がどうだのと
無駄に長く、1番目のトリックは犯行場所を別の部屋のように見せるというものだが分かりやすすぎて途中で
バレやすくしかも共犯者がいたり、2番目はトリックですらなくボウガンで撃たれた衝撃で偶然ドアが閉まって
撃たれた方向が違うように見えただけという内容で、自分に容疑を掛けられるように仕向けて探偵を使って
トリックを暴かせて容疑を晴らす真犯人は意外性があるが探偵役が最初に犯人を外すのはいまいちで妹はほぼ役に
立たず変な推理をするだけで終わるのは必要性が感じられない。
作者はディクスン・カーが好きらしいが、だからと言って回りくどい密室講義を入れる必要はなく、もう少し
凄いトリックを入れて欲しかったところだろう。
というわけで、まあまあ面白いがいまいちな今作。
速水三兄妹シリーズは我孫子武丸作品の中ではましだが、たったの3作で終わっているのは残念である。