今日は約束の食事の日。
にのが母さんに話してくれたから安心してゆっくりできる。
「学校終わったら、そのまま店に集合だってさ」
まあくんから伝えられて3人で店に入ると智と翔くんが先に来てた。
「早いね、ちゃんと授業受けてんの?」
「雅樹には言われたくねぇよ」
どうやって座ればいいんだろう
智と翔くんは向かい合わせに座ってるし…
「潤とニノミヤ、こっちに座れよ」
智が席を離れて翔くんの隣に座って、まあくんがその隣に座る。
にのと俺は向かい側に並んで座った。
「大野くん、すいません」
「んふふ。それより何食う?」
メニューには色々あって目移りしてしまう
「にのは何にするの?」
「ハンバ-グ!」
「ふふ。迷わないね」
「大好きなんだもん」
「俺もそれにする」
智もにのと同じ物を選んだ
「じゃあ俺はしょうが焼きにしようかな」
「ここ洋食屋だぞ?」
「だって、メニューにあるじゃん」
まあくんらしい…
「翔くんは何にするの?」
「俺ね、ハンバ-グでもチ-ズの乗ってるやつにする」
俺は何にしようかな…
優柔不断だからなかなか決められない
いつもはこんな時、翔くんが決めてくれるんだけど…
「潤くん、何と迷ってるの?」
「ハンバ-グかオムライスかどっちにしようかなって…」
「ここのオムライス美味しいの?」
「うん。すごく美味しいよ」
「じゃあさ、潤くんオムライスにして俺のハンバ-グと半分こにしようよ。」
「にの、オムライス好きなの?」
「うん。そうしよう、ねっ?」
にのってこんな時でも優しいから、みんながいるのを忘れてじっと顔を見ちゃう。
それに気づいたのかテ-ブルの下で俺の手をギュッと握ってきて頬が熱くなる
「どした?潤もニノミヤも赤くなって…」
智がわざとらしく言ってくる。
わかってるくせに!
待っている間に色んな話をした。
「翔ちゃんは春から住むとこ決めたの?」
「まだ決めてないけど何件か物件は見てるんだよね」
「家から通うの大変だからね、一人暮らしか…大ちゃんは準備しなくて大丈夫?」
「う…ん、まだ何も見てない」
「智くん、大丈夫? 早く動かないと住むとこなくなるよ?」
「あ-そうだな…。」
まあくんに視線を移すと寂しそうにしてる
気持ちわかるよ。俺もそうだったから…。
でも、今の俺にはにのがいてくれる。
隣を見ると優しく微笑んでくれてる。
「ニノミヤは進路とか考えてんの?」
「一応…。」
「何したいの?」
「制作かな…。ゲームが好きだからそういうのを作りたいんですよね」
「ニノは賢いから余裕だよね」
「雅樹こそ何したいの?」
「わかんない。まだ…。」
まあくんはやりたい事が見つからないってよく言ってる
まだ、時間はあるからゆっくり考えればいいって話すけど悩んでるみたいで…。
「潤は?」
「えっ?」
「そういえば潤から聞いた事ないな」
「そうだった?」
あまり話したくなかった。
将来なんてわからないし、なんとなく親の決めた通りに生きていくのかと思ってた。
もちろん夢はあるけど…。
「潤くんも何か作りたいでしょ?」
「どうして?」
「一緒にテレビ見てると見方が違うって思った。作る立場で見てるよね?」
図星だった…。
にのって何でもわかっちゃうんだ。
「へぇ~知らなかった。ちゃんと教えてよ潤ちゃん!」
「だって、無理だと思ってたから…。」
それから翔くんは実家の仕事を継ぐ話や智が美術を専攻する話をした。
頼んでた物が運ばれてきて、それぞれ食べ始める。
「美味い。このハンバ-グ!」
智は興奮してパクパク食べて、翔くんも口の中に頬張ってモグモグ食べてる。
何だか今日の翔くんは口数が少ないからちょっと気になってたけど、食欲あるから大丈夫だね。
まあくんは横から智のハンバ-グを横取りして自分のしょうが焼きを横取りされて
ワイワイ食べてる。
「潤くん、半分にしよ?」
「うん。」
お互いの皿に半分ずつ取り分けて食べ始める。
「あっ、オムライス美味しい!」
「でしょ?ハンバ-グも美味しいね」
にのは食が細いって言ってたけど結構食べてるなぁ。
「にの、無理してない?大丈夫?」
「うん。両方とも好物だから平気!」
「にのって子供みたいな物が好きなんだね。」
「なまものとか苦手。あと高い物も食べれない」
「ふふ。可愛いね」
「可愛いって…潤くんに言われたくない」
「だって、口の周りにケチャップついてるし…可愛いよ?」
おしぼりで拭いてあげると恥ずかしそうに目を伏せるから、なんだかおかしくって頭を撫でると急に顔を上げて、俺の口をペロッて 舐めた
「へっ?」
「潤くんもケチャップ付いてたから」
俺もびっくりしたけど3人もびっくりしてる。
特にまあくんは声を出してにのを叱った
「ニノ!場所を選べって言っただろ?」
「ケチャップ取っただけだよ」
「ばか!」
智はニヤニヤ笑いながらまあくんを宥めてる
「何で雅樹が赤くなるんだよ。
羨ましいのか?」
「大ちゃん!!」
「してやろうか?」
「はっ? 何言ってんの!」
にのは悪びれる事なく食事を始めて、まあくんは智とワチャワチャしてて…
なんだかよくわからないけど俺もご飯を食べようとしてフォークを持った時
「何考えてんの、二宮くん」
翔くんがすごく怖い顔をして言ってきた。
「翔くん?」
俺が怯えると、にのがすぐに言葉を返した
「ごめんなさい。場所を選ぶべきでした」
「そういう事じゃないよ。何で潤にそんな事するのかって言ってるんだよ」
「ダメでした?」
「ダメに決まってるだろ?潤も君も男だろ?」
「そうですけど。だから?」
「普通、あり得ないだろ?」
翔くんの普通という言葉
この言葉にずっと苦しんだ
「翔ちゃん、もういいじゃん。ニノだって謝ってるんだし」
「だから、そういう事じゃないんだよ」
「何が気に入らないの?別にいいでしょ」
「雅樹は本気で言ってるのか?」
オロオロしながらまあくんは智を見ると
智は無表情で翔くんを見てる。
「潤くん、翔さんに話していい?」
「えっ?」
「いい?」
少し迷ったけど…コクンと頷いた。
「俺、本気で潤くんが好きなんです」
「何言ってんだよ」
「潤くんに気持ちを伝えて…伝わったんです」
「伝わった?」
「潤くんと付き合ってるんです」
「はぁ? 何だって?」
翔くんは真っ赤になって怒り狂ってる。
「潤、嘘だろ?」
「……嘘じゃない。にのと付き合ってる」
「バカじゃねぇの?頭大丈夫かよ!」
「翔くん…?」
「お前どうかしちゃったんじゃねぇの?
自分の言ってる事わかってる?
まともじゃねぇよ、最低最悪だよ」
「そんな…」
「いい加減にしろよ?
保健室で抱き合ったりキスしたり、男同士で気持ち悪い事してんじゃねぇよ。
誰かに見られたらどうすんの?
付き合ってるって胸張って言えんの?」
何でここまで言われなきゃならないの?
翔くんに迷惑かけてないのに…。
にのまで巻き込んじゃって。
涙が溢れてくる…。
にのがそれに気づいて俺の肩を抱こうとした手を翔くんが払い除ける。
「やめろよ、それが気持ち悪いんだよ」
にのが翔くんを睨み付ける
そして、俺の手を取って立ち上がる
「帰ろ、潤くん。ねっ?」
頷くとニコッと笑って手を引いてくれた。
「待ってよ、まだ話が終わってないし、
何で一緒に帰るんだよ。家、逆方向だろ?」
「いい加減にしなよ、翔ちゃん!」
まあくんが声をあげた。
「翔ちゃんには関係ないだろ?
何だよ、最低とかって。
そんなひどい事よく言えるな!
翔ちゃんこそ、普通、普通ってバカみたいに言って、人の気持ちも考えないで最低だよ!見損なったよ!」
まあくんまで涙目になってるっていうか泣いてるし。
「雅樹、お前まで…」
「俺だって男と付き合ってるよ。
軽蔑していいよ、潤ちゃんに言ったみたいに罵ればいいよ!」
「何言って…雅樹?」
ずっと黙ってた智が口を開いた。
「3人とも帰りな。雅樹、任せていい?」
まあくんが鼻をすすって頷いた。
「なっ! 智くん?」
「翔ちゃんは話あるから残って」
「行こう。」
まあくんの言葉で3人で店から出る。
いきなりにのが笑いだした。
「2人とも泣いてるし…。俺が泣かせたみたいじゃん」
3人で顔を見合わせるとおかしくなってきて、にのにつられるように笑って…。
「ウチに来ない?少し話そうよ。
潤ちゃんも目が赤いからさ、このまま帰れないでしょ?」
「まあくんとこだと…翔くんが来るんじゃないの?」
「そしたら俺んとこにしよ?潤くんのお母さんに信用されてるし大丈夫でしょ?」
確かに、母さんはにのが大好きですごく信用してる。
「じゃあ、そうしよう?」
まあくんが泣き笑いの顔で言ってきて、
その顔が面白くて…にのはその顔を見て肩を震わせながら3人でにのの家に向かった