大正13年8月21日 | 胡桃澤盛のブログ

胡桃澤盛のブログ

戦間期の農村に生きた一青年の日記。長野県下伊那郡河野村。大正デモクラシーの時代、左傾青年運動にも心を寄せていた胡桃澤盛(くるみざわ もり)は、やがて村長となって戦時下の国策を遂行する。その日記には、近代日本の精神史が刻み込まれていると言えよう。

八月二十一日(木曜) 雨

愈々長雨になった。今日も終日降ったり歇んだりであった。天竜川へは水量は増して来ぬ。静かに降ってるので皆土中へ吸入されて行くのである。秋蚕を掃立てた。

中羽場へ藁仕事に往く。Oが一昨夜来帰って来ぬが、一層断って仕舞うが得策だ。今日も終日独りだったので春日君の処で緩り話せた。

夜、未だ雨は歇まぬ。時間を限ってしっかり読書する積りだ。北羽場の葬儀で又直恵行く。

伴侶を求めてやまない。一切が空虚になる時に唯一つ思うのはS子の事のみ。一切は空。寝淋しい。真実のは愛。彼の愛、人を救うべき物は愛。

『罪と罰』を読む。人生の真の道、普通の人の通った道を偽らず書けるもの。