彼女との出会いは、ある人の紹介の紹介の、そのまた紹介の紹介だ。
つまり、ほぼ 赤の他人と言ってよい。
そのメールは、3月30日、桜とともにやってきた。
「カゲヤマさん知り合いの飲食店で働く女性を募集していませんか?」
その後、送られてきた履歴書には
直筆の手紙が添えられていた。
「初めまして、突然のお手紙で失礼します。
□□さんから紹介して頂いた○○○○と申します。」
って、□□さん、私、知りません。
「私は接客の仕事が好きです。
今までの飲食店での仕事や、美容部員の仕事を通して
人と接することの楽しさと相手に喜んでもらえることの嬉しさを知って
これからもそういった接客の仕事を続けてやっていきたいと思います。
(中略)
読みづらい文章の上、わがままばかり言ってしまってすみません。
やる気だけはしっかりありますのでどうぞよろしくお願いします。
○○ ○○ 」
宛名がはっきりしていないからなのか
どことなく所在なげな文章。
どこに向かって放り投げればいいのか、
力の入れどころを探しているような文章。
それは彼女の実際の印象、そのものだった。
そんな彼女だったが、研修場所として受け入れてくれた
マメヒコのシフトに入ったとたん、見違えるようだった。
愛嬌があり、作業もてきぱきし、体力もある。
「クルミドに渡すのが惜しい。」
2~3日たって、早くもそんな声が聞こえてきた。
そんな彼女が、オープニングに向けての波にうまく乗れず、苦しんでいた。
ひとつひとつは小さなことでも
ちょっとした不安、ちょっとした疑問、ちょっとした自信のなさが
どんどん渦となって、彼女を引き込んでいった。
ココロの疲れから、体調を崩した。
食欲をなくし、どんどんやせていった。
いろいろ話をしようと、2人でゴハンを食べたとき
彼女は、ずっと泣いていた。
BGMは陽気なハワイアンだったのに。
ロコモコをいじりながら泣いていた。
そろそろ限界なのかもと思った。
こうした悩み、ストレスは、
誰しもが多かれ少なかれ、付き合い、
乗り越えていかなければいけないものだけど
背負える荷物の大きさは、人によって違う。
彼女を、もう楽にしてあげた方がいいのではないかと思った。
今日は、そんな話をすることになるかもしれないと、半ば覚悟していた。
彼女のいない、クルミドのチーム。
彼女がいないまま、4時間半。
「それでもがんばっていこう」──男3人で、変な覚悟を決めたりもしていた。
時計は23:00。
彼女が戻ってきた。
さくっと話をしたいと。 ああ、やっぱり。
「これまで、自分が前向きになれないばっかりに
がんばろうっていう、みんなの気持ちに水をさしてばかりいて・・・
うんうん。
彼女はやっぱり泣いてる。
「これから、クルミドでがんばります。」
あれ (・∀・)
おお。おおお。おおおおおー。
男だったら抱きついてると、フルハシが言った。
もうちょっとセンチメンタルなやり取りになるかとも思ったが
みんな、次の瞬間には、仕事の話をしていた。
でも、ありがとう。ほんとに。戻ってきてくれて、ありがとう。
てれれれっててーん♪
レベルアップの音が聞こえた。
彼女の、ではない。チームの、だ。
クルミドに、負けられない理由が、またひとつ増えた。