★女性専用車両 日記★

★女性専用車両 日記★

「男がおらぬ女性専用車両といふものに、私も乗ってみむとて乗るなり。」

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今日の椅子取りゲームでは、一瞬だけ、若いお姉さんの上におばちゃんが乗った。
おばちゃん、とっても悔しそう。
お姉さん、よかったね。
でも、おばちゃんに乗られたところを手で払うのはかわいそうだよ、せめておばちゃんがいなくなってからにしてあげて…ここでは、敗者に情けは無用らしい。

最近は、女性専用車両の雰囲気にも慣れ、無事「女性専用車両ユーザー」の一員になることができたように思う。

ただ、まだまだ学ぶことは多く、日々新しい発見がある。
ここ数日で経験した出来事で一番印象的だった出来事をお話ししたい。

その日、私は運良く空いた席に座ることができ、快適に通勤していた。
車内は混み合い、立っている人たちはそれぞれ最小限のスペースを確保している状態。
私の前には推定20代くらいのお姉さんが立っていた。
(顔をジロジロ見る勇気はないので、服装やおヒザのご様子などで判断)

その時、急ブレーキがかかった。

揺れる電車、各所で起きたよろめきのウェーブが私の前に立つお姉さんにも届き、バランスを崩す。


シャリ


・・・ん?

なんだ、この何とも言えない肌触りは・・・

突然足下を襲った奇妙な感触。驚いて目を向けると、私の足の間に、お姉さんの左足がはまっていた。
私の両足で、お姉さんの左足を挟んでいるような状態。
お互い、なんとなくの気まずさはあるものの、まぁこれは仕方がない。
実際、何度か同じシチュエーションになったこともある。
しかし、今日は何かが違う。そう、謎の感触だ!

再び電車が動き出し、その揺れの勢いでお姉さんが足を元に戻す。


シャリ


まただ!

そして今度こそ気づいた。これは、私のタイツとお姉さんのストッキングが擦れる感触だったのだ。
女性専用車両は女性しかいないので、得てしてストッキングやタイツ率が高い。
その日、私も例に違わず、黒のタイツを履き、そしてお姉さんは肌色のストッキングを履いていた。

スーツやジーンズを履いた男性も多い一般車両では今まで経験したことのなかった、この絶妙な「シャリ」触感!まさに世紀の大発見!

決して気持ち良いわけでもなく、かといって不快とも言い難いこの感触がやけに印象的だったとともに、「シャリ」という擬音の大きな可能性を感じた朝であった。

余談だが、この絶妙な感触は、私の目の前にいたのがおヒザが綺麗なのはもちろん、冬でもストッキングに耐えうる脚の状態を保っている素敵なお姉さんであったということと、冬は普段にも増して怠惰な私がたまたま前日に足の毛の処理をしていたという奇跡のコラボレーションによるものであって、もしどちらかの女子力が欠如していた場合、「シャリ」ではなく「ジャリ」もしくは「ジョリ」だったのかなぁ…などと考え、自分の女子力不足を猛省し、次回の奇跡に備え早急にその復活祭を執りおこなうことを誓うのであった。

引越しが終わり、心機一転、初めての経路での出勤。

最寄り駅の改札から一番近いところに女性専用車両がある。
だから、なんとなく、乗ってみた。


それだけ。


おじさんと一緒はイヤ~とか、痴漢がしんぱ~いとか言える歳ではないことは自覚済み。
おっちゃんも、こんなケツには興味がないだろう。


今思えば、初日から衝撃的だった。
むしろその衝撃がなければ、私は翌日には一般車両に乗ってたかもしれないし、少なくとも、激戦の女性専用車両に乗り続けようなんて思わなかっただろう。

そう、女性専用車両は激戦なのだ。


最寄り駅からひとつ先は、いわゆるターミナル駅。

この駅に着き、扉が開いた瞬間、私の頭の中でスタート合図のピストル音が響いた。


よーい、どん(パーン)



ドカドカ ドスン ズドン・・・



順位やタイムがかかっている東京マラソンのランナーたちでさえ、もっと冷静にスタートすると思う。

しかし、ここにはコースはない。


開き始めた扉に、我先にと体をねじ込む選手たち。


そしてダッシュ。


とにかくダッシュ。


扉が開くまでの間に電車の外から目星をつけていたであろう空席へ向かって、滑り込む。


これを読んでいる紳士・もしくは女性専用車両ユーザーではない淑女のみなさまは、「そんな大げさな」「女性同士だと譲り合い精神もあるんじゃないの?」などと思っているのではないだろうか。

もしそうだとしたら、是非明日は女性専用車両の隣の乗車列に並び、扉が開く瞬間、女性専用車両の列に注目してほしい。

彼女たちの目が、きっとすべてを教えてくれるはずである。

そしてその様子は、誰にも言わずそっと胸にしまっていてほしい。

さて、車内ではまだまだ戦いの真っ最中。

無事座るまでが勝負である。


ふいに、小学生時代の総合学習で「椅子取りゲーム」をしたことを思い出す。

低学年ごろの決勝戦では、男女・もしくは女子同士の対決となることもよくあったが、高学年になるとほとんどが男子同士の決勝だった。

男子を意識し始めるのと同時に、女子は計算を覚える。


「"椅子取りゲームの強い女" < "一生懸命だけどなかなか勝てない健気な女"」

の方程式を瞬時に弾き出す。


「あ、押したー!ずるーい!」とか言いながら、ハナから座る気なんてない。アクシデントに見せかけて、少しだけでも意中のカレに触れることが、このゲームの最大のミッションなのだ。


でも、ここには女しかいない。

男性ウケ抜群三種の神器、ハイヒール・ハンドバッグの腕掛け(持ち方)・ふわふわスカートは、たちまち女の武器ではなくなる。

むしろ、良いスタートダッシュを妨げるものにもなりかねない。

一見無関係そうなふわふわスカートは、座る際に後ろ部分に手を当て、そろりとお尻を椅子まで誘導する必要がある。その一瞬の間が敗戦につながることだってあるのだ。



そして、ついに決着。
その間、わずか5秒ほど。

敗者から漏れるのは、遠吠え、ならぬ舌打ち。

そう、これは本気の勝負なのだ。

順位やタイム以上に背負っているものがある。

甘く見てはいけない。


初日の戦いに、あろうことか戦意すら装備し忘れて望んだ私は、もちろん敗者となった。

軽いショック状態の中、それでも頭の中では一瞬にして計算をしていた。


「"比較的空いている車両で快適に通勤" < "毎日レースにエントリーし猛者たちと戦う(刺激という名のおまけ付き)"」


いくつになっても「おまけ」にはどうしても心惹かれるものがある。

必死に何かを訴えかける心の声を無視して、次の日も必ずこの車両に乗ろうと決意したのだった。

【女性専用車両】
主に公共交通機関等で設定されている、原則女性以外の乗車を禁止する車両。

女性専用の場所なんて、世の中にはたくさんある。
更衣室や温泉は言うまでもないし、ジムやサロンにも「女性専用」をうたっているところは多い。

それでも、私のNO.1「女性専用」は、間違いなく【女性専用車両(電車)】だ。
そこで巻き起こるドラマには、全米が泣き・笑い・そして感動する。
…それはさすがに言い過ぎたけれど、私にとって女性専用車両は一種のアトラクションのようにわくわくする場所なのだ。

温泉やサロンには、「癒されたい」「キレイになりたい」など、訪れる人は一様に同じような目的を持って集まる。

けれど、女性専用車両は違う。

行き先はバラバラ、目的もバラバラ、その日、その時の目的への通過点として、そこにいる全員の時間が一瞬だけ交わる場所。
いろんな想いが渦巻く中で、それでも、その場の最前の快適を求めて、皆が無意識のうちに動く。
そして、そこにいるのは女性だけ。
何かが起きないわけがない。

そんなわくわくが詰まったアトラクションに毎朝乗車することになったアラサーOLが、女性専用車両で起こった出来事をつらつらと書いていくこのブログ。

そうそう毎日ドラマが生まれるわけじゃないと思うから、まぁゆるりと、ね。