薬って、飲み忘れたらどうしたらいいの
糖尿病の治療をしている皆さんは、たくさんの薬を服用している方が多いと思います。その中で、「これまで一度も薬の飲み忘れをしたことがない」って方は、どれだけおられるでしょうか
人間ですもの、誰だって忘れることはあります。もし飲み忘れてしまった時に、どう対処するかが重要なのです
薬の用法は、食事を基準に設定されていることが多く、それぞれの用法は、基本的に以下のような時間に服用することを示しています。
では、食事をしないと薬を服用してはいけないのか。
実は、食事を基準に設定されているのは、定期的で分かりやすいからという理由であることが多く、絶対に「食前(食直前)」、絶対に「食後(食直後)」という薬は、実はごく一部なのです。
糖尿病治療薬も同じで、「絶対に食直前じゃないとダメ!」という薬は、たったの2種類。
1つ目は、α-グルコシダーゼ阻害薬という種類の薬で、食物中の糖の消化・吸収を穏やかにして、食後の急激な血糖上昇を抑える薬です。
薬が食物と一緒に小腸に届かないと意味がないため、食直前に服用することが大事です
2つ目は、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)という種類の薬で、食後の血糖上昇に合わせて短時間だけインスリン分泌を促進する薬です。食直前に服用することで速やかに吸収され、タイミングよく効果を現します。
グリニド薬は、食後に服用すると薬の吸収が遅くなり、効果のタイミングがずれてしまうことが報告されています。逆に食前早く服用しすぎても、先に薬が効き始めて低血糖を起こす恐れがあります。遅すぎず早すぎず、食直前に服用することが大事です
薬剤によって、推奨されている服用時間が異なり、「食事前5分以内」であったり、「食事前10分以内」であったりするため、かかりつけ薬剤師に確認しておきましょう。
もし「絶対に食直前じゃないとダメ!」という薬を飲み忘れてしまった場合、どうしたらよいのか
α-グルコシダーゼ阻害薬は、食事中または食直後までであれば間に合いますので、気付いた時点で服用しましょう。もし食後時間が経ってから気付いた場合は、その回は服用せず、次の回から通常通りに服用してください
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)は、先にもお話ししましたが、食後に服用すると薬の効果のタイミングがずれてしまうため、食直前以外には服用しないことが推奨されています。もし食直前に飲み忘れてしまったら、その回は服用せず、次の回から通常通りに服用してください。
では、それ以外の糖尿病治療薬を飲み忘れてしまった場合は、どうしたらよいのか
実は、食事のタイミングに関わらず服用しても大丈夫なのです
ただし、次の服用まで
・1日3回飲む薬の場合 →4時間以上
・1日2回飲む薬の場合 →5~6時間以上
・1日1回飲む薬の場合 →8時間以上
間が空いていれば服用してもよいですが、次の服用が近すぎる場合は1回分とばしましょう。
いずれの薬も、絶対に2回分をまとめて服用してはいけません
糖尿病治療薬は、薬の種類(作用)によって飲み忘れの際の対応が異なります。
かかりつけ薬局で薬をもらう際に、自分が服用している薬はどれに該当するのか、飲み忘れた場合はどうすればいいか、しっかり説明を聞き、正しく対応しましょう
もちろん、お薬カレンダーやお薬ケースなどを使用して、飲み忘れを防ぐ対策を行うことも大切です
また医師は、患者さんが処方された通りに薬を服用していることを前提に、次の処方内容を考えています。もし何らかの理由があって処方通りに服用できていないようでしたら、内緒にせずに、正直に教えてくださいね
薬と上手に付き合って、より良い血糖コントロールを目指しましょう
日本糖尿病療養指導士 認定薬剤師