前回のあらすじ>

翌日早朝、イルーナとイルーゾォは自宅で日課の筋トレをした。

その後イルーナの考えにより決闘のために地味すぎる特訓が始められ、朝食のシリアルを硬いものにされたり、車イスにぬいぐるみを置かれ封印されてしまう。ハタからすれば大した事には見えないがイルーゾォにとってはかなりキツく、自力で歩き続け夕方にはヘトヘトになってしまう。

イルーナはそんな彼の脚と心をケアし、引き続きサポートし共に戦っていく事を改めて決意したのであった。

 

注意超生活感満載。

 学生のノリあり。

 カメラ長廻しシーンあり。

 

ーーーーーーー

翌日。

今日は天気が非常に悪く、空は厚い雲に覆われ、もう昼近くだというのに電気が必要なほどに暗い。

雨も どしゃ降りであり、外出も出来なさそうだ。

 

イ 「なんか気力が起きねぇな…。」

ナ 「食べ物買いにも行けないし、洗濯も出来ないし…。」

 

イ・ナ 「だりぃ……。」

 

2人して気力が立たず、リビングのソファーに寝っころがってグダグダしている。

 

 

そんな中、家の固定電話が鳴った。

 

イ 「うっせーな…。」

ナ 「もー…。」

 

イルーゾォがモゾモゾしているうちに電話が切れると思ったイルーナはさっと立ち上がって電話に出た。

 

ナ 「もしもしィ?」

 

? 「よお、イルーナか?」

 

ナ 「あー、ホルマジオか…。」

ホ 「どーしたんだよぉ?元気ねぇな。」

ナ 「天気悪いから気分ダダ下がりでさ…。で、どうした?」

 

ホ 「オレ今日サッカー見に行く予定だったんだけどよ、この悪天候で中止になっちまってさ。ヒマだからそっち遊びに行っていいか?」

 

ナ 「えっ、いいよ。」

ホ 「よっしゃ!飲みモン持って今から行くぜ!」

ナ 「待ってるね~。じゃ。」

 

イルーナは電話を置いた。

 

イ 「何?」

ナ 「ホルマジオ。ヒマだから遊びに来るって。」

イ 「ふ~ん…。」

 

イルーゾォはソファーに寝っころがったまま答えた。

イルーナは掃除機を持ってきてそんなイルーゾォの足をつついた。

 

ナ 「ほれ、髪ぐらい結び直せよ。」

イ 「めんどくせーなー…。」

 

あまりノリ気じゃないイルーゾォはしぶしぶ起き上がってその場で髪をとかし始め、イルーナは掃除機でリビングを丸掃きしだした。

 

ナ 「ああっ!かけた所に髪の毛落とすなッ!」

イ 「落としてねーよ、抜けただけだっつの。」

 

長髪の抜け毛は数本落ちているだけでも目立ちがちだ。

2人とも髪が長いので、来客の際は必ずサクッと掃除をしてしっかりと取り除いているのだ。

 

 

 

およそ1時間後。

きれいに部屋を掃除し身支度を整えると、ちょうど良くホルマジオがやってきた。

 

ホ 「よぉー、来たぜ!」

ナ 「いらっしゃい。」

 

イルーナがドアを開けに向かった。

 

ナ 「よく来…ひえッ!!」

 

イルーナは縮み上がった。

 

ドアを開けると、フード付きの真っ黒いレインコートを真深にかぶったホルマジオが立っていた。

豪雨と雷を背にし、その姿はあまりにも不気味だった。

 

イ 「し、死神ィッ!?」

ホ 「お迎えじゃねーよ、逆だ!」

 

レインコートを脱ぎ、玄関のハンガーにかけた。

 

ホ 「いやー、すっげえ雨だな。」

ナ 「ずぶ濡れじゃん、風邪ひくぞ。」

 

シュピーゲルに風呂場のバスタオルを持ってきてもらい、ホルマジオの身体をワシワシと拭きだした。

 

ナ 「濡れすぎだろ?

 コート穴開いてるんじゃないか?」

ホ 「うへぇ、サンキュー!」

 

イ 「………。」

 

ホルマジオはすごく嬉しそうだが、イルーゾォはヤキモチを妬いているのか眉をひそめて見ている。

 

イ 「このハゲ、身体ぐらい自分で拭けや。」

ホ 「いいじゃねーかw

 風邪ひかんで済むんだからよぉ。」

 

拭き終わるとバスタオルはイルーナが風呂場の洗濯カゴにシュートし、ホルマジオはレジ袋を携えリビングに入ってきた。

 

ホ 「ほい、差し入れ。

 冷やしてきたから飲もうぜ!」

 

レジ袋をテーブルの真ん中に置き、そのまま上部を開き下げて中を見せた。

 

イ 「ん…?」

ナ 「なんだろうこれ?きれい…。」

清涼感のある水色の、透明なガラス瓶に入った飲み物だ。

帽子のような飲み口に眼のような2つのへこみ、首のようなくびれがあり、人形のようにも見える独特な形状をしている。

 

ホ 「ラムネサイダーって言うんだぜ!」

イ・ナ 「ラムネサイダー…?」

 

ホ 「そ。こないだ酒屋のレアジュースコーナーで久々にめっけたんだ!

綺麗なガラス玉で栓されてるから、フタの中のそれを押しておさえつけて大人しくしてから飲むんだぜ!ギャングらしいだろ?」

 

ナ 「大人しくさせる…?どういう事?」

イ 「暴れるのか?」

ホ 「そう。ま、見りゃ分かる。」

 

ホルマジオは自分の分のラムネサイダーの口をむき、手をかけた。

 

ホ 「あっ、ティッシュか ゾーキンあるか?」

ナ 「えっ?」

イ 「どういう事だ?

 放送事故的な事が起こんのかww」

ホ 「ニヤニヤすんな。半分アタリだけど。」

ナ 「え…。」

 

イルーナはとりあえず台ふきんを1枚持ってきた。

 

ナ 「ほい。」

ホ 「サンキュー。絶対出ちまうんだよコレ。

だから半分袋に入れたままなんだ。

見てろ、どりゃッ!!」

 

ホルマジオはラムネサイダーのフタの突起を口に思い切り押し付け、しばらく力づくで押さえ続けた。

 

イ・ナ 「!?」

 

ガラス玉が落ち炭酸が湧きあがり、中身が少し溢れてしまった。

 

イ 「失敗だな。漏らしてやがる(笑)」

ホ 「だから、絶対ちょっとは出るんだってば。………お、大人しくなった。これで開封完了よぉ!」

 

フタから両手を離して2人に見せた。

手を離すとさっきの暴れようが嘘のように静まり、泡も出なくなっていた。

 

ホ 「カンタンに見えて結構難しいんだぜ。

 やってみ!」

イ 「おう、やってやろうじゃねえか。」

 

さっきまでのダルさはどこへやらで、イルーゾォはやる気満々だ。

 

イ 「お前が出来んなら俺は漏らさずに出来るぜ!」

ホ 「ほー、こりゃ見モンだなww」

 

ホルマジオは無理だとバカにして笑った。

 

ナ 「出来んの俺?」

イ 「出来るっつの!」

 

イルーゾォはラムネサイダーのフタから突起を出し、その上に置いた。

 

ホ 「ちゃんとしっかり押さえろよ!」

イ 「わーったわーったッ!

 

一気にフタを押し、思いきり押さえつけた。

 

イ 「静まれえッ!!」

ホ・ナ 「おーっ!?」

 

2人も瓶を凝視した。

うまく噴出を抑えられているようで、中々に順調だ。

 

イ 「よしよし、大人しくなったぞ!」

 

段々手ごたえが無くなってきた。

 

ホ 「やるじゃん。」

イ 「♪」

 

そしてすっかり大人しくなったので、フタと手を外すことにした。

 

イ 「よーし!」

 

 

しかし…。

 

 

 

ナ 「ぎゃッ!!」

 

まだ圧力は残っており、ちょっと傾けて手を離したがために噴出した中身がイルーナの顔面に直撃してしまった。

 

イ 「わ、悪りぃ!!」

 

ホルマジオはイルーゾォを殴った。

 

ホ 「オメ何やってんだよッ!!ド変態ッ!!」

イ 「わざとじゃねーよ!!

 カンベンしてくれッ!!」

 

ナ 「…………。」

イルーナは唖然とし、右手をシュピーゲルの手に変えて ひとさし指の爪をイルーゾォの額に突きつけた。

 

イ 「ひっ…!」

イルーナの目つきに血の気が引いた。

 

ナ 「台所からティッシュ取ってこい。」

イ 「……!」

 

イルーゾォはあわてて立ち上がり、キッチンへと歩いてティッシュを持ってきた。

 

イ 「ほ、ほれ…。」

ナ 「ありがと。」

 

もらったティッシュで顔を拭いた。

 

ナ 「…ふぅ、少し歩くの速くなったんじゃないか?」

イ 「急いだんだよもちろん。」

ホ 「ふぉっwwオドシが利いたなッ!」

 

ホルマジオは笑いが止まらない。

 

ナ 「ちょっとした事でもこうやってリハビリになるんだよ。」

イ 「まあ、確かに…。」

 

イルーゾォは開けたラムネサイダーを飲んだ。

 

イ 「……あー、うまいなコレ。」

 

かなり甘めだが、さわやかな香りと強い炭酸で天気の鬱憤を晴らしてくれるような爽快感がある。

 

ホ 「いいだろコレ?開けんの大変だけどよぉ。」

イ 「コルクにしてくれりゃ楽なのにな。」

 

気に入ったのか、一気に半分まで飲んでしまった。

 

イ 「オレも開けてみろよ。

 ブッ飛ばしちまう理由が分かるぞ。」

ナ 「えー、上手くいくかなあ。」

ホ 「大丈夫だって、ほれほれ。」

ナ 「う~ん…。」

 

ホルマジオとイルーゾォにせかされ、イルーナもラムネサイダーを開けてみる事にした。

 

ナ 「こぼれないといいなあ…。」

イ 「出来るって。やれよ。」

ナ 「うん……。」

 

イルーナはフタに手を乗せ、2人はじっと見守った。

 

イ 「行け!」

ナ 「せーのッ!!

 

思い切り力をかけ、ガラス玉を落とし押さえつけた。

 

 

しかし…。

 

 

 

イ・ナ・ホ 「!?」

 

 

イルーナが力をかけると、木製のテーブルが真っ二つに割れてしまった。

 

ホ 「えーー!?」

イ・ナ 「そっちかよ!?」

 

こぼす・こぼさないどころではない惨事となってしまった。

 

尚、ホルマジオとイルーゾォは自分のラムネサイダーをそれぞれ手に持っていたため、こちらは無事であった。

 

ナ 「なんてこった…。」

 

イルーナのラムネサイダーは3分の1をブチまける羽目となり、テーブルは割れただけでなくラムネサイダーを置いていた場所に見事なクレーターまで出来てしまっている。

一応テーブルクロスはかかっていたが、全く効果なしでテーブルは破壊されてしまった。

 

ナ 「どーしよこれ…。」

ホ 「大丈夫、直してやっから。」

 

ホルマジオはリトル・フィートを呼び出し、割れたテーブルの両端をその爪でひっかいて手のひらサイズに小さくした。

それにイルーゾォの家にあった瞬間接着剤を使い、くっつけて少し押さえつけた。

 

イ 「くだらねぇ能力も地味に使えるな。」

ホ 「前半は余計だ。便利なもんだろ?」

ナ 「助かったよ、ありがとう!」

ホ 「なぁに、これしき楽勝よぉ!ただ、天気が天気だから湿気のせいでもうしばらく置かないといけなさそうだな。」

 

テーブルは乾いて完全にくっつくまでテレビ台の上に置く事にした。

 

 

 

現場をぞうきん掛けしたイルーナはようやくラムネサイダーを飲んだ。

 

ナ 「おいしい。いいものを見つけたね。」

ホ 「だろ?珍しいモンはいいよな!」

 

その後、3人はラムネサイダーを手にしばらく談笑したのであった。

 

 

<次回予告>

3人はしばらく談笑していたが、その中でイルーゾォのリハビリの話が出た。

ホルマジオはそれを聞き特訓を思い付きすぐ実行する事となるが、予想外の波乱の幕開けとなってしまう。

 

次回、イルの奇妙なX日間

#149 「ミニチュアホース」

来週もご視聴ください。

 

注意学生のノリあり。

 カメラ長廻し風のナレーションが少ないシーンあり。

 

補足など

・ホルマジオは全天候型で行動が出来、過酷な状況下での長時間の見張りもへっちゃらです。

ちなみに今日は風も強かったので傘はささず、雷も落ちているので感電を恐れ自転車は使わず徒歩で来たようです。

 

・ラムネは海外では非常に珍しい存在で、あのフォルムや色合いがきれいだと置物としても人気があるそうです。

又、本体はリサイクルに廻してもビー玉をとっておく人も多数いるそう。ここは日本と同じですね。

 

・イルーナがこぼしたラムネは大半がレジ袋に入り、大水害は避けられました(汗)