<前回のあらすじ>

ペッシとプロシュートが仕事をした数日後の事。

何か話があるらしく、ヒットマン全員がアジトに集められた。

ペッシが集めたもので作った珍味スターフライを食べ、話を聞く。

 

珍しく話題を持ち込んだのはプロシュートであった。

ひとつは彼の友人のためにメローネが作ったプリンへのクレーム、もうひとつはその友人からの〝決闘〟の申し入れであった。

 

プロシュートの友人も同じくパッショーネ所属のギャングであり、彼の仲間もイルーゾォと同じく瀕死の重傷から生還しリハビリをしているのだという。その目標と成果の披露の為、と申し込まれたのである。

 

もちろんイルーゾォは快諾した。

そうすると思いプロシュートは既に話を受けており、2か月後に開催と日程も決められていた。

 

ヒットマンチームは一致団結し、イルーゾォを決闘で勝たせるため全力でサポートしていく事となったのだった。

 

注意生活感満載+カメラ長廻し風のシーンあり。

 雑な実写真出現場面あり。

 

ーーーーーーー

 

翌日。

きのうの集まりの後イルーゾォとイルーナは自宅へ帰り、今日も早起きして筋トレをしている。

イルーナはリビングの柱に付けられた持ち手で懸垂、イルーゾォはテーブルを挟んだ反対側で腕立て伏せを行っている。

ちなみに、動きやすいためか見せびらかしのためか、どちらも上半身は裸だ。

 

ヒットマンチームはどのメンバーも身体をかなり鍛えており、それぞれ見えていない所でも自宅でトレーニングを重ねている。

仕事に欠かせない力と肉体美を維持する為、一切 手は抜かないのだ。

 

ナ 「お先~。」

 

イルーナのほうが先にノルマクリアしたようで、いきなりイルーゾォの背中に座ってきた。

 

イ 「んげッ!重めーよッ!!」

 

腕をプルプルさせながらもそのまま意地で腹筋を続けた。

 

イ 「998、999、1000……あぎゃあッ!!」

 

なんとかノルマクリアし、イルーゾォは潰れた。

 

イ 「斤量追加は反則だろッ!」

ナ 「なんだよ、手伝ってやっただけなのに(笑)」

 

潰れた状態のまま会話している。

 

イ 「ま、腹筋や背筋はほとんど前と同じくらいに戻ったから、あとは耐久を高めていくだけだな!」

ナ 「いや、まだまだ。」

 

イルーナはイルーゾォのふくらはぎを触った。

 

ナ 「俺もともと脚細いけどこんなんじゃなかっただろ?これじゃ上半身鍛えたところで歩けないどころか重さで潰れちまうよ。」

イ 「なんとかする。少しずつ歩いて行けば筋肉も付くだろ。」

 

ナ 「少しずつ、な…。」

 

イルーナはちょっと考えた。

 

ナ 「そうだ!」

イ 「んげッ!」

 

イルーゾォから飛び降り、すぐに寝室から何かを持ってきた。

 

抱きかかえられていたのはネコぐらいの大きさの、大きな白いユニコーンのぬいぐるみだ。

ユニコーンとはいえ、紫色の蝶の翼も生えた可愛らしいフェアリータイプのものである。

 

ナ 「こうすりゃ早いじゃん。」

 

それをイルーゾォの車イスの上に乗せた。

 

ナ 「しばらく車イスを封印する。外出の時と本当に具合いが悪い時以外は自力で歩くこと!」

イ 「え――!?」

 

過重腕立て伏せで疲れたイルーゾォはちょっとキレた。

 

ナ 「歩けるようにするにはやっぱ歩くっきゃないよ。これだけは筋トレだけじゃどうにもならないからな。」

 

ナ 「見張り頼むねー、エディナ!」

エ 「muu!」

DSC_0721~2.JPG

イルーナに反応して動き、ツノを7色に点滅させて鳴いた。

 

イ 「名前付けたのかよ…。」

イルーゾォはあきれ、可愛がられている様子にちょっとヤキモチを妬いている。

 

イ 「ミスタの奴、とんでもねぇものをよこしやがって…。」

 

 

 

――話は数日前に遡る。

プロシュートとペッシが仕事をしていた日、2人はミスタと待ち合わせをして移動スイーツショップへ買い物に行った。

彼が見つけてくれた出店はやはりラバーソウルの店であり、かなり並んで混んでいたため少ししか話せなかったが先日の礼を言い、ジェラートを買って食べた。

 

その後立ち寄った近くの商業施設の玩具コーナーでイルーナがのちのエディナを発見した。

ナ 「うわ!●ar lealのユニコーンだ!

 こんなところで売ってるなんて…!」

ミ 「お?イルーナちゃんこういうの好きなの?」

ナ 「そう!これ通販でもほとんど手に入らないやつなんだよ…!」

 

いつになく目を輝かせて喰いついている。

 

イ 「仕方ねぇな…買うか?」

ナ 「えっ!?いいの!?」

イ 「たまにはな。ええと………あ…。」

 

イルーゾォは箱を手にしかけたが、値札を見て棚に置き戻した。

 

イ 「……すまねえ、持ち合わせが無い。」

 

ナ 「えー!?セッパンしようぜ後で返すから!!」

イ 「そういうレベルじゃねえ、これ。」

 

イルーゾォは値札を指さした。

 

ミ・ナ 「あ……。」

 

2人とも唖然として固まった。

日本円にしてざっと3万5千円である。

 

彼らは遊びに出歩く時にはそれなり多めの小遣いを持ち歩いているが、それであってもここまでの大金は持っていない。

 

イ 「本物の犬猫買えるじゃねえかこれ…。」

ナ 「高い…高すぎる…。」

 

イルーナはがっかりして諦めた。

 

ナ 「そりゃあないよ、いくら高性能ロボットだからって子供にこの値段はクレイジーだよ…。」

イ 「大人のオモチャなんだろうなこりゃ…。」

 

2人は売り場を離れた。

 

ミ 「…あっ、ちょっと待ってくれよ!」

 

ミスタは2人を呼び止めた。

 

ミ 「オレ買おうか?」

 

イ・ナ 「!?」

イ 「ジョーダンよせや、んな大金ねえだろ(笑)」

 

ミ 「実はあるんだなー、それが!」

 

ミスタは帽子の中から茶色の革財布を取り出した。

 

ミ 「ボーナス入ったんだ。オゴらさせてもらうぜ!」

 

ナ 「む、無理しなくていいよ!」

ミ 「無理じゃないぜ。ほら!」

 

サイフを開いて中の札束をせんす状に広げて見せた。

 

イ・ナ 「ほえー……。」

 

2人は目が点になった。

 

イ 「金持ち…。」

ミ 「いつもじゃあないんだけどな(笑)

 さイルーナちゃん、顔見ていいコ選んどいで!」

ナ 「ホント!?ありがとう!!」

 

イルーナはウキウキでユニコーンの顔を透明のパッケージ上から見て気に入ったものを選び、ミスタに渡して買ってもらった。

めったと売れない高額な商品のためかレジの店員に驚いた顔をされ、周りの客からも視線が刺さるが、2人とも全く気にしない。

 

2人は大きな紙袋にそれを入れて担ぎ、入口で待つイルーゾォの所に戻ってきた。

 

イ 「悪りぃな、大金使わせちまって。」

ミ 「いいって事よ!」

ナ 「ありがとう!ミスタだと思って大事にするよ!」

ミ 「えっ?いやー照れるなあ、可愛がってやってくれよ!」

 

ミスタもイルーナもとても嬉しそうだった。

 

 

 

 

…とそんな事があってエディナは2人の家にやってきたのだ。

 

イ 「ミスタに見られてるみてぇだな…。」

ナ 「なら尚更ズル出来ないね。」

 

イルーゾォはちょっとふてくされた。

 

イ 「はいはい、やりゃーいいんだろ やりゃー…。」

 

イルーゾォは立ち上がり、シャワールームまでゆっくり歩き出した。

 

ナ 「そうそう、そうこなくっちゃ!」

エ 「muu ww!」

イ 「くっ、エディナまでバカにしやがって…。」

エ 「mu~♪」

 

ちゃんと話に合わせて前脚を上げたり翼を動かしてリアクションしている。とても可愛らしいが、イルーゾォには煽られているようにしか見えずちょっと腹が立った。

 

 

 

イルーゾォの後にイルーナもシャワーを浴びに行き、朝食は2人でシリアルを食べた。

イルーナ好みの押し麦多めのくだもの少なめタイプだが、今日はいつもとちょっと様子が違うようだ。

 

イ 「…今日のザクザク多くないか?」

ナ 「そ。噛めば頬の筋肉も付くし、頭を刺激して回転を早く出来る可能性だってある。相手がパワータイプだった場合も頭脳戦で勝てるよ!」

イ 「考えてんなあ…。」

 

イルーゾォにその発想は全くなかった。

 

イルーナがいつものシリアル(厳密に言うとグラノーラに近い)にブレンドした別種のザクザクはかなり硬く食べごたえがあり、ちょっと頭が痛くなる。

おまけにいつまでたっても中々ふやけない。

時々当たるレーズンやアーモンドが気休めだ。

 

イ 「………。」

やっとザクザクを食べきっても、ミルクの下に押し麦が大量に沈んでいる。

こいつはいくらミルクを吸っても柔らかくはならない。

そして、重い。

イルーナは何ともなく食べているが、アゴも疲れたイルーゾォは限界で味などもうどうでもよく、ミルクの底に残った押し麦を一気飲みした。

 

イ 「ごっつぉさん。」

ナ 「あっ!ショートカットすんなよ!」

イ 「もう無理。浮いてる硬いの全部喰ったんだからいいだろ。」

ナ 「ちゃんと噛まないと詰まるぞ?」

イ 「大丈夫だ、こんぐらい。」

ナ 「知らないよー?もう。」

 

イルーナはあきれた。

朝食後はイルーゾォも自力で歩き、イルーナの分まで食器を洗った。

 

 

 

その後はそれぞれノートパソコンでデスクワークをし、後は自由に休日を過ごした。

 

しかし、移動に車イスが使えないイルーゾォは苦労した。

ちょっと物を取りに部屋内を移動する分にはいいが、部屋外を行き来するのは大変であった。

たかが数十歩であるが、脚が疲れて息が切れ、ヒザが折れてしまう。

イルーナはそのつど寄ってくるが、見守るだけで手は貸さない。

手を貸してほしいが助けてもらえない事はすぐに察したので、甘えずその都度壁や近くの物につかまって何とか立ち上がった。

 

が、トイレ帰り途中にまた廊下で膝をついてしまった。

DSC_0179~2.JPG

近くに手をかける物が無く、腰に付けていた剣で体重を支えて立ち上がった。

 

イ 「ふぅ…。」

 

寄ってきて見ていたイルーナはあきれた。

 

ナ 「おいおい、宝剣そんな使い方してバチ当たらないか?」

イ 「いいんだよ。ティアマト本人が〝使ってナンボ〟っつってたんだから。」

 

ベルトに剣を差し戻しながら言った。

 

ナ 「つったってこれ、一応ルカの遺品の一つでもあるんだから、ちょっとは気遣って大事にしてやってくれよ。」

イ 「分かってら。」

左手を剣の鞘に軽くあてた。

 

その後なんとかリビングにたどり着いたが、息ばかり上がって疲れ果て、ソファーに座りこんだ。

 

ナ 「おつかれ。」

イ 「はあ…。歩いてるだけなのに、なんでこんなに疲れんだよ…。」

ナ 「体力がまだ足りないからだろうね。続けるっきゃないよ。」

イ 「まだまだか…。」

 

ナ 「脚もんでやるよ。」

イ 「おう。」

 

イルーナはソファーに伏したイルーゾォのふくらはぎや足裏をマッサージしてあげた。

 

イ 「あーそこそこ…。もっとやってくれ!」

ナ 「はいはい。ちゃんとほぐしとかないとな。」

 

ペッシに教えてもらったマッサージ法は効果絶大だったようで、数分程度でイルーゾォは眠ってしまった。

それでもしっかり最後までもみ続け、両脚合せて30分ほどマッサージを行った。

 

ナ 「ほい終わり。」

イ 「………。」

 

マッサージが終わるころには完全にリラックスして爆睡していた。

 

イ 「おつかれさん。まだ初日だったから、尚更つかれたよな。」

 

肩や頭を撫でて気遣った。

 

ナ 「夕飯はオレが作るから寝てな。

今夜はカレーにするよ。」

 

イルーゾォにブランケットをかけ、イルーナは夕食を作りにキッチンへ向かっていった。

 

 

 

 

<次回予告>

翌日。外は大嵐で、イルーナもイルーゾォも全くやる気が起こらない。

しかしホルマジオが遊びに来ることになり、手土産を持って家へやってきた。

 

次回、イルの奇妙なX日間

#148 「嵐の日に」

来週もご視聴ください。

 

注意超生活感満載。

 学生のノリあり。

 

補足など

・エディナは自分の持っているぬいぐるみです。写真と名前そのままで登場させました。

名前はジンギスカンのメンバーのエディナ・ポップが由来。見た目的にはヘンリエッテですが、そこはお気になさらず…。

 

・ぬいぐるみはファクトリー生産のものでも一体一体顔や体型が異なります。店頭などで選べる場合はよく見比べて選びましょう。

 

・ザクザクの多いシリアル(ほぼグラノーラ)は以前からイルーゾォ宅にあったものです。イルーナが買ったもので、気分によってこっちか押し麦多めのほうを選んで食べています。

全部を前者にしないでブレンドに留めたのはイルーナの気遣いです。

 

・PCワーク、イルーナは適当にやることだけやってほぼサボり、終わったフリしてほとんどソリティアをやって時間をつぶしていたようです。

良い子も悪い子もマネしないように!

 

・ティアマトは実際に剣は色々使ってよいと公言しています。

なので向こう(旧闇の空間)でココナツを割ったり草を刈っても怒られません。

ちなみにこの剣、神の力によりどう使っても壊れず、万一刃こぼれしてもしばらくすると再生するスグレモノです。

刃をコートしている合成アクアオーラと鞘になっている特殊コスモオーラは人類にとって未知の物質らしく、これが何か関係している模様です。

尚、この剣はもともとルカの身体にあった柳刃包丁をティアマトが武器として改造したものです。

 

※柳刃包丁摘出;#59 罜礙

 (冒頭からショッキングなため注意)

※柳刃包丁をティアマトが剣に;#61 Sea

 この時点ではまだ絵の部分に鳥の模様はありませんでした。

 

 

おまけ

カット事項

イルーナ・イルーゾォ・ミスタが遊ぶシーンは帰宅まで組まれていましたが、回想シーンのみの登場となったため以下の後半部がカットになりました。

 

エディナを買った後、それを持ったままゲーセンに行っています。

UFOキャッチャーは3人とも何も取れなかったものの、イルーゾォが一定時間お菓子取りほーだいのキャッチャーゲームでプレイ中に不意にも台パンしてしまい(車イスの持ち手をぶつけてしまった)、取り口に積んであったタワーを崩してどっさりとGETします。

高い種類のチョコもあり、ワンコインで元が取れたと大喜びし、ミスタにも山分けして楽しんでから帰宅しています。

 

3人の帰宅時の時系列はプロシュートとペッシがバーで追加のソフトドリンクを注文して喋っていたあたりです。

 

尚、エディナは帰宅後すぐ開封され、今話の登場までイルーナのベッド近くに置かれ可愛がられていました。