前回のあらすじ>

決闘への特訓開始の翌日。

今日の天気は大嵐で、イルーナもイルーゾォもやる気が起こらない。

しかしこんな天気の中ホルマジオが家に遊びに来ることとなり、身支度を整えて部屋の掃除をした。

 

やってきたホルマジオは差し入れとして珍しい飲み物、ラムネサイダーを持ってきた。

開封が難しくコツがいり、イルーゾォは失敗しイルーナの顔面にぶちまけて怒られる。

それを踏まえてイルーナは力をかけるが、やりすぎでテーブルを真っ二つに割る惨事となってしまう。

しかしラムネサイダーはおいしく、3人でそれを飲みながらしばらく談笑したのであった。

 

注意学生のノリあり 

 カメラ長廻し風のシーンあり

 

ーーーーーーー

 

長いこと談笑していた3人だったが、その中でイルーゾォのリハビリの話になった。

 

ホ 「どうなんだよ?もう長く歩けるようになったか?」

ナ 「今日で2日目だからまだまだだよ。あの通り車イスも家では封印して歩かせてる。」

 

エ 「muu♪」

車イスの上のエディナが反応して鳴いて動いた。

 

ホ 「ずいぶん可愛い見張り番だな!

 イルーナにはかなわねぇけど。」

ナ 「こら!ずっと可愛いだろオレより!!」

 

可愛いと言われるのが嫌でイルーナはキレた。

 

イ 「まだ長く歩き続けられるほど体力は無えな…。

沢山鍛錬が必要だ…。」

 

ホ 「なーるほど……。…そうだ!」

 

ホルマジオは何かを思いついた。

 

イ 「何ニヤついてんだよハゲ。」

ホ 「ハゲじゃねーよ!」

ナ 「…ど、どしたの?」

 

ホ 「イルーゾォにトレーニングさせようぜ!

 いっぱい歩かせて。」

 

イ 「はぁ?外 嵐だぞ?」

ナ 「家の中グルグル歩かせるって?」

ホ 「さすがイルーナ!半分アタリ。」

イ 「だいたい想像つくだろ。嫌だ。」

 

イルーゾォはそっぽを向いた。

 

ホ 「まあ話聞けって。何回も同じ所グルグル歩いてたって疲れるしつまんねーだろ?そうじゃあない。」

ナ 「じゃあどうすんだ?」

 

ホルマジオは床にラムネサイダーの瓶を置いて話し始めた。

 

ホ 「カンタンな事さ。イルーゾォを小さくして、ベッドルームからこのリビングまで来させるんだ。題して、〝小人の大冒険〟ッ!」

 

ナ 「なんか面白そうだね。」

 

イルーナはノリ気だ。

 

イ 「ふ~ん、道も分かるしリスクも無いからアリっちゃアリか。」

 

イルーゾォは悪くは無いと思いつつも、反応は微妙だ。

 

ホ 「イルーゾォには仕事用のマイクロマイクとイヤホン、あとワイヤレスヘッドギアカメラを付けて、オレとイルーナはその中継映像を観るんだ。イルーゾォは訓練になるし、オレたちは楽しめるからwin-winだろぉ?」

 

ナ 「いいねそれ!」

イ 「…しょうがねぇなぁ。じゃあ付き合ってやるか。」

ホ 「おーい、人の口癖取んのは許可しないッ!」

 

イ 「お前もそれ言うのかよ。」

ホ 「え、なんか変な事言ったか?」

イ 「あっちのホルマジオもこの手同じ返ししてたんだぜ(笑)」

ホ 「そうなのか?」

イ 「そ。やっぱりどこの世界でもホルマジオはホルマジオだな!」

ホ 「当たり前だろ。オレはオレなんだからなッ!」

 

イルーナはやり取りを見て笑った。

彼も向こうのホルマジオと生前、全く同じやりとりを何度かしていたからだ。

 

ホ 「どうした?」

ナ 「…なんでもないよ。」

 

 

 

ホ 「んなことはさておき、さっそくやろうぜ!

 イルーゾォ、持っていきたい物があるなら支度しといてくれ。」

イ 「おう。」

 

イルーゾォは剣を杖にしてゆっくりベッドルームに歩いて行った。

 

ホ 「イルーナ、マイクロイヤホン類大丈夫か?」

ナ 「大丈夫。丁度こないだメンテしたばっかで感度良好だよ。」

ホ 「さっすが!」

ナ 「ほい。」

 

イルーナはテレビ台の中からそれらを取り出し、ホルマジオに渡した。

ホルマジオは受け取ったそれらの設定を行い、マイクロイヤホンとマイクの端子をテレビ裏にねじ込み、ワイヤレスヘッドギアカメラのシンクも行った。

 

ワイヤレスヘッドギアカメラ(長いので以下ヘッドギアカメラ)は短距離で使うためのアイテムで、真ん中に小さなカメラレンズとメカの付いた黒いハチマキ状のバンドで、端子を付けたものにそれを中継して映像を見せるものである。

 

役割はジェラートのスタンド、スイート・ドリームの能力の一つとよく似ているが、アングルは正面のみで装備者の激しい動きで多少ブレ(一応ブレ軽減機能があるため、歩いても視聴者が酔うほどブレはない)、画質もアナログテレビレベルで中継可能距離も短いので、あまり使われないアイテムの一つである。

 

マイクロイヤホンとマイクは頻繁に使われ、ヒットマンチームメンバーの愛用品である。着けているか否か分からないほどのサイズで、指ではじくだけでオンオフが出来、ハウリングしにくい高性能なアイテムだ。

最近だと舞踏会でのソリッド侯爵捕獲ミッションなどでも使用されている。

 

 

説明しているうちにイルーゾォがリビングに戻ってきた。

 

イ 「ふう、準備出来たぞ!」

ホ 「おうおう、やろうぜ!」

 

イルーナはイルーゾォにマイクロイヤホンとマイク、ヘッドギアカメラをつけてあげた。

 

ナ 「きつくない?」

イ 「大丈夫だ。」

ホ 「よし。」

 

セットが完了すると、3人はベッドルームに移動した。

 

ホ 「イルーゾォのベッドの上がスタート地点だ。」

ナ 「ちゃんと帰って来てくれよ。」

イ 「なんだよ全く、大げさだな。」

 

イルーゾォはベッドに座って笑っている。

 

ホ 「オレたちは後はよっぽどの事が無ければ手出ししないからな。自力で歩いてくるんだぞ。」

イ 「わーったわーった。」

 

イルーゾォは左袖をめくって腕をホルマジオの前に差し出した。

 

ホ 「よし。リトル・フィート!

 

ホルマジオは自分の右親指をスタンドの爪に変え、イルーゾォの腕を長く一筋に切り付けた。

 

イ 「!?」

 

そこそこ傷は深く、若干血がベッドに飛び散った。

 

イ 「痛って!!ちょっと手加減しろよ!!」

ホ 「してるっつの(笑)効いて来たらいつも通り痛みも傷も無くなんだからガマンしろ。」

イ 「ふん。」

 

イルーナは彼の傷を手で押さえ、早くくっつくように力添えした。

 

それから1分ぐらいして、イルーゾォの身体が小さくなり始めた。

 

イ 「おおお?」

ナ 「きた!」

 

ホ 「さーて、どこまで小さくなるかなぁ~?」

 

ホルマジオは自分の意志で切り付けた対象物の縮小サイズを自由に変える事が出来る。

どこで止まるかは外から見ただけでは全く分からない。

かけた本人にしか分からないのだ。

 

イ 「えええ?まだか!?」

 

ドールサイズよりも小さくなっていく。

 

イ 「ちょっww」

ナ 「ありゃー…。」

 

やっと縮小が止まった。

 

ホ 「こんなもんだろ。」

イ 「えー!?」

 

DSC_0880~2.JPG

188cmもある大男が、ボールペンのグリップからペン先ぐらいの大きさまで小さくなってしまった。

 

ナ 「ちっちゃ…カワ…。」

イ 「……。」

 

イルーナの手に乗せられ、困惑した。

 

ホ 「可愛いのはイルーナだろ。」

ナ 「オレじゃあねえ!」

イ 「うわっ!」

 

手に乗せたまま振られ、ちょっと目を回した。

 

ナ 「ごめん!」

イ 「…だ…大丈夫だ…。」

 

イルーナはイルーゾォをベッドの真ん中に置きなおした。

 

イ 「あー、ふかふか…。

 このまま動きたくねーな…。」

ナ 「こら、寝るな。」

イ 「えー…。」

 

イルーナに首根っこをつままれ、座らさせられた。

 

 

ホ 「ほんじゃ、自分のペースでいいから歩いて戻ってこいよ。」

イ 「おう、すぐに戻ってやるぜ!」

ナ 「がんばれ。」

 

イルーナとホルマジオは彼を置いて先にリビングへ戻って行った。

もちろん、ドアは開けっぱなしで閉らないようにストッパを挟んで抑えている。

 

 

 

コースはベッドルームの彼のベッドから降りてドアを出、廊下を通ってリビングにゴール、となっている。

 

ホ 「どんな画が見れるか楽しみだな。」

 

リビングに戻った2人はテレビをつけてみた。

入力を合わせると、イルーゾォのヘッドギアカメラからの映像が映りだした。

会話のやり取りは2人の手元のマイクロマイクで出来、向こうの音声もテレビにつないだマイクロイヤホンでそのスピーカーから聴く事が可能だ。

 

まだあまりイルーゾォは動いていないらしく、あちこちを向いているが上下の揺れは少ない。

 

イ 「足が沈んでうまく歩けねえ…。」

 

イルーゾォ達のベッドは体重を吸って深く沈むタイプの物のため、小さく軽くなっていても足をとられる。

かけ布団が青いため、海に沈んで溺れかけているようにも見えてしまっている。

 

イ 「参ったな…。」

 

脚と体力を取られ、しょっぱなから苦戦してしまっている。

 

ホ 「どうした?もうギブか?」

 

イルーゾォが付けているマイクロイヤホンからホルマジオの声が聞こえてきた。

 

イ 「早えーよ、まだだ。ちょっとコース考えてんだ。」

 

 

立ったまま少し考え込んだ。

 

 

この部屋のドアはイルーナのベッド側にある。

イルーゾォのベッドから降りて歩くと足はとられないが相当遠回りになってしまい、足はとられてもイルーナのベッドへ突っ切ったほうが早くドアまでたどりつける。

このため、後者のプランで行く事にした。

 

イ 「ったく、ベッドがこんなに身体に負荷をかけるとは思わなかったぜ。」

ナ 「寝ごこち最高なのにね。」

 

 

イルーゾォは少しずつ歩き進んで行き、数分かけてようやく彼とイルーナのベッドの境目近くまでやってきた。

 

イ 「ふぅ、ちょっとブレイクっ!」

 

ベッドの上に座り込み、小休憩しだした。

 

ナ 「まずは一区切りだね。」

イ 「ああ。イッキしようと思ったが、意外とそうも行かねえもんだなあ。」

ホ 「ちょっと休んだら動けよ。

 ずっと画が同じじゃこっちもつまんねーからよぉ。」

イ 「わーってるって。とりあえずのひとやすみだ。」

 

イルーゾォは胸ポケットから小さいペットボトルを出し、カメラに映した。

 

イ 「麦茶持ってきた。」

ホ 「ちゃっかりしてんなおい。」

イ 「使わない予定ではあったんだがな。」

 

フタを開けて一気飲みした。

 

イ 「ふう。おやつもある。」

 

もう一個同じ場所から何かを取り出し、またカメラに映した。

 

ナ 「あーッ!それオレの!!」

 

半分食べて銀紙に包まれた、ホワイトの板チョコだ。

 

イ 「なんだよ、いらねーもんかと思って持って来ちまったよ。」

 

しらばっくれて全部食べてしまった。

 

ナ 「なんだよもう!これ結構高いやつだったのに…。」

イ 「ほぉ、どおりでうまいわけだ(笑)」

 

すぐ食べ終わって銀紙を丸めてズボンのポケットに突っ込んだ。

 

ナ 「バチが当たっても知らないぞ!」

イ 「ないない(笑)」

 

ホ 「可愛そうになあ~。

オレがあんなんよりうまいG●DIBAのチョコ買ってやるぜ!」

ナ 「ホント!?今度お願いね!」

 

イルーナは目を輝かせた。

 

イ 「ちっ…。さてと、休憩も終わったし、行くか。」

 

空になったペットボトルを自分のベッドの向こうへ投げ捨て、立ち上がった。

 

イ 「ここを超えればオレのベッドだ。」

 

カメラには2人のベッドのふとんの境目がくっきりと映し出されている。

 

イ 「第二ラウンド突入だな!」

ナ 「がんばれ~。」

イ 「よしと!」

 

イルーゾォは間の穴を超えるため、ギリギリの所に足をかけた。

 

 

その時…。

 

 

 

 

イ 「あわッ!!」

 

 

 

 

<次回予告>

 

次回、イルの奇妙なX日間

#150 「ミニチュアホース その2」

来週もご視聴ください。

 

注意カメラ長廻し、学生のノリあり。

 

 

補足など

・サイズ比のシーンで登場した実写は、ほぼ本編と同じ個所の原稿を書いている時に撮ったものになります(よく見ると分かります)。

この原稿はノート前原稿で、作成の第三段階のものです。

※プロットラフ→つなぎ合わせ→原稿書き→ノート書き→PC(ブログ)入力、といった流れで作成居ています。

 

ちなみに、ノート前原稿は会社のトレー発注書の裏紙を使用しています。横線があんばいいいサイズで走っていて非常に使いやすいんです。

もちろん持ち帰りにあたって使用許諾済みですのでご安心ください。

 

・ホルマジオのスタンド能力を利用し、ヒットマンチームのアジトには様々なものを小さくして収納されています。

ミリサイズまで小さく出来、そうしたものは彼がいくら離れても能力の効果が切れて勝手に元のサイズに戻ったりしないので安心です。イルーゾォが使っていた介護用ベッドもどこかにしまってあります。

尚、幽霊マジオより縮小効果が現れるまでの時間が少しかかるようです。

 

・イルーナのチョコは先日ミスタとイルーゾォの3人で遊びに行った時にゲーセンのお菓子すくいのあれで取ったものです。

ちょっと高い銘柄のものだったらしい…。