こんばんは。都議の栗下です。

 

 

先般、動画配信などでもお伝えしたのですが、6月6日(日)に開催されるコミティア136に出展申し込みをしました。また追加で、5月4日(火)のCOMIC1BS祭にも。こちらは抽選は無いそうなので無事開催されれば、同人誌発刊後初めての即売会デビューとなります。是非、既に委託でお買い上げた皆さんにもお立ち寄りいただきたいと思っています。

 

さて、前回はアメリカにおけるESRB設立(94年)とレーティングシステム導入の経緯について書きました。

 

 

今日は国内におけるレーティングシステム導入(02年)についてお伝えします。

 

 

■CESA(コンピューターエンターテインメントソフトウェア協会)の設立

アメリカでESRBが設立されたのは94年9月の出来事でした。その頃、日本でもそれまでのゲーム業界の常識を覆す事件が起ころうとしていました。94年12月にソニーから初代プレイステーションが発売されます。それまで家庭用ゲームといえば一部の例外を除いて任天堂が進めてきたカートリッジ方式でしたが大容量のCD方式が初めて大々的に普及した事、ポリゴンによる映像処理技術で立体表現が可能になったことによって、ゲーム表現の幅は劇的に広がることとなりました。

 

 

 

 

また、それ以前のコンシューマーゲーム業界のスタンダードは任天堂によって形作られてきたことは当ブログでも扱ってきましたが、そこにソニーという巨大企業が参入したことによって、ハードウェアとソフトウェアメーカーとの関係性を含め、業界全体の構造が大きく転換するきっかけとなる、まさにビッグバンの様な出来事であったといえます。

 

当時、アーケードゲームについてはアミューズメントマシン協会(JAMMA)、PCゲームについては日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(CSAJ)などの業界団体が既にありましたが、コンシューマーゲームについてもあるべきではないかというところから、当時の主要なソフトウェアメーカが発起人となりCESA(コンピューターエンターテインメントソフトウェア協会)が95年に設立され、96年には社団法人となります。コンシューマーゲームについて団体がそれまで存在しなかったのは、事実上任天堂がその役割を担ってきたからであり、この流れはソニーがソフトウェアメーカーを巻き込んで任天堂を孤立させようとしたのだという見方もあります。

 

 

プレイステーションの発売でゲーム人気も更に勢いづくこととなり、CESAによって96年には「東京ゲームショウ」が初開催され、今日まで続いています。また、CD方式になったことによって複製が容易になり、海賊版が多く作られることとなりました。CESAは海賊版撲滅に向けて、販売店との連携や、当時まだはっきりとしていない部分が多かったゲームの著作権に関する取り組みを進めました。

 

その中で、CESAはゲームにおける表現の自主規制についてもその役割を求められるようになっていきます。

 

 

■CERO(コンピューターエンターテインメントレーティング機構)の設立

CESAが設立された直後の96年当時、コンシューマーゲームにおける表現の自主規制は「倫理規定」とそれを徹底させるための「倫理委員会」によって進められました。具体的には、倫理規定に抵触しかねない表現については倫理委員会が審査し、問題が有れば出荷停止などを求める、それに従わなければペナルティを課すといったやり方でした。この仕組みは有効に機能したものと見られており、02年までの間、団体や公的機関に寄せられたユーザーからの苦情は皆無であったと言います。

 

しかし、00年にプレイステーション2が発売され更にゲーム表現の幅が広がり、全てのゲームが全年齢向けでは、製作側も表現の自由を十分に行使できないこと、また倫理規定自体がそもそも抽象的な表現であったことなどから、倫理規定の改定と独自レーティングシステムの導入が進められることとなります。

 

そして前回ブログで取り上げたアメリカのESRBへ職員を派遣するなどして得た知見をもとに、02年にCERO(コンピューターエンターテインメントレーティング機構)が設立されます。

 

CEROによるレーティングシステムは02年10月から導入されました具体的にはそれまでCESAの倫理委員会が問題部分だけを審査し対応していたのに対して、CEROではソフトウェアを具体的な表現項目に基づいて審査し、年齢区分をパッケージに記載した上で販売するよう変更されました

CERO設立時のレーティング(CERO公式サイト)

 

 

レーティングの対象となる表現項目(CERO公式サイト)

 

区分についてはその後、一部変更されることになりますが(その顛末については改めて書きたいと思います。)、これが今日も続くCEROのレーティングシステムの成り立ちです。

 

 

アメリカのESRBより遅れること8年、日本でもコンシューマーゲームのレーティングシステムが導入されることとなりました。またその背景には任天堂の寡占状態からソニーの参入による業界構造の変化があったことも見逃せない点かと思います。レーティングシステムは一見すると規制のようにも見えますが、導入されたことによって年齢区分ごとの表現の幅は広がり、表現の自由を実現するための重要な要素なのではないかと感じます。ただし、レーティングやゾーニングは正しく運用されなければ、事実上の表現規制に直結してしまうという事も付け加えておきたいと思います。

 

続く。