こんばんは。都議の栗下です。

 

 

怒涛の予算議会→年度末も終わり、今後に向けた展望も少しずつ見えてきた今週ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

 

今日は、先般取り上げた国内のPCゲームにおける性表現レーティング導入に引き続き、90年代にアメリカで起こった「残虐ゲーム」論争から、家庭用ゲームへのレーティング導入の経緯についてお伝えしてきます。

 

■90年代初頭の格闘ゲームブーム

ゲームの技術的進歩と家庭用ゲームの普及によってユーザーの裾野が拡大したことで、90年代初頭ゲーム市場は爆発的に拡大していきます。私も小学生低学年くらいだったのでこの時期のことは当事者としてよく覚えていますが、中でも忘れられないのは、ストリートファイターIIをはじめとする格闘ゲームの隆盛です。アーケードデビューは91年3月。発売後には瞬く間に全国の子ども達を虜にし、スーパーファミコンに移植されたのが92年6月、私も御多分にもれず、当時予約して購入しました。

その直後リリースされた餓狼伝説シリーズ等も人気を博し、対戦格闘ゲームはその後約10年間、ゲームセンターなどアーケードにおける主役として活躍することとなります。

 

この爆発的な普及はゲーム規制の歴史にも大きな影響を与えていきます。ブームはアメリカにも波及しますが、これまで以上にリアルな「暴力表現」が社会的議論を巻き起こす一因となりました。特に92年10月にデビューしたアメリカ産の格闘ゲーム「モータルコンバット」では、実写取り込みのリアルさや、「フェイタリティー」という、倒した相手にトドメを刺して殺すというシステムが盛り込まれており、その斬新さで多くのユーザーを獲得する一方で、批判も集めることとなりました。

 

(当時の啓蒙広告より)

 

あまりにも有名な作品なので多くの説明は不要だと思いますが、モータルコンバットシリーズは現在でも続いており、この春には新しい実写映画も公開されます。そしてモータルコンバットの代名詞とも言えるフェイタリティーも随時最新の映像技術を取り込みさらにリアルかつ過激に進化しています。

 

 

■ナイトトラップ

このモータルコンバットと同時期に幾つかのゲームが社会的議論を巻き起こしアメリカのゲームレーティングシステムを形作っていったのですが、今日はその中でも「ナイトトラップ」を挙げたいと思います。

 

「ナイトトラップ」は92年にアメリカで、メガCD(セガのメガドライブの拡張システム)のソフトとして発売されました。当時、CDシステムは最先端の技術で、実写動画をゲームに盛り込み、一軒家でのパーティー中に起こる事件を監視カメラの映像やトラップを駆使して解決に導いていくという非常に斬新な作品です。

 

(ナイトトラップ 93年)

 

その中で盛り込まれた、謎の侵入者がドリルの様な機械で女性から血を抜き取り殺すなど、実写表現を最大限に活かした描写等が物議を醸し、イギリスのダブロイド誌、デイリー・ミラーなどが「殺人・拷問シーン」が残虐などと取り上げたことで世の中に広く知られるようになりました。

 

93年12月、これらのゲームの子ども達への影響を重くみた政治家や活動家によって、米国議会で「ビデオゲームの暴力性について」公聴会が開かれることに。専門家や政治家のやり取りの中で、ゲームのもたらす悪影響についてメディアを通じて広く社会にアピールされることとなりました。

 

 

 

事態の収集に向け、家庭用ゲームにおけるレーティングシステムの整備が進められることとなります。これが今日も続く、ESRB。日本のレーティングであるCEROが参考にした審査団体です。

 

 

■ESRB(Entartainment Software Rating Board)=エンターテイメントソフトウェアレイティング委員会の発足

上記の経緯を経て94年9月からレーティングシステムが導入されました。具体的なレーティング区分は以下の通り、かなり細分化されているように見えますが、重要なポイント について説明すると、T区分(TEEN)においては、13歳未満の子どもには、保護者の同意が得られない限り売っていないということ。これは日本のレーティング運用が比較的いい加減なのとは違い、比較的徹底されている様です。

 

(Wikipediaより抜粋)

 

また、M区分(MATURE)においては、16歳未満は保護者の同意が必須。

AO区分(ADULT ONLY)は、本人が18歳以上でなければ購入できません。また大型チェーン店などにおいてはAO区分は扱わないなどしていることからマーケティング戦略上大幅に不利となります。故に、AO区分のソフトはかなり稀であり、本数としては限られている様です。

 

日本における現行のCEROレーティングとは、評価方法や評価軸が違うので、同じゲームでもレーティング区分に多少のズレがある様です。

 

さて、今日はアメリカにおける「残虐ゲーム」議論とESRBレーティング導入について書きました。文中にも書いた通り、モータルコンバットは今なお勢いを増して展開されていますが、ゲーム中の表現そのものを無くすのではなく、ゾーニングを徹底する(日本と比較して)ことによって、昨今ではゲーム業界で日本に代わり世界を牽引しているアメリカの創作力の源泉を守った。その分水嶺となる出来事であったのではないかと個人的には感じています。

 

次回は90年代後半の国内の動きについて書きたいと思います。